ほっぺ引っ張ったまま学級文庫って言ったこと、皆1回はあるよね?
「およ、さっきのお姉さん」
「お、さっきの子だ。なんか買ってくかい?」
「あ、はい」
さっきかまくらを作っていたお姉さんが、今は屋台をやっていた。何でもかまくら作りは違う人の仕事だったけど、その人が寝坊してお姉さんがその代わりをしていたらしい。その埋め合わせとして、今日はその人にご飯を奢らせるんだと言っていた。
お姉さん、強い。
さて、紅茶は買うとして私は何にしようかな?
・・・お、ジュースがある。種類は、リンゴ、ブルーベリー、ユズの3種類か。うーんここはユズにしてみようかな。温かいのがあるし。
「紅茶とユズのあったかいのを1つずつ」
「ん?二つでいいの?3人いたみたいだけど」
「あ、もう一人はまだ飲み物あるから大丈夫だって」
「そっか。あ、おやつも一緒に買ってく?」
そうすれば、その子もうちの屋台のものを味わえるよねって。
なるほど、それは考えてなかったな。うん、お金には余裕があるから何か買っていこう。
それにしてもお姉さんは商売上手だ。
「クッキーとかありますか?」
「あるよー。今日は栗が入ったクッキーだよ」
「じゃあ、それも一つ」
「まいど!飲み物は熱いから気をつけてね」
「はい、ありがとうございます」
さて、セージ君へのお土産もできたし戻るか。
あ、リコちゃんの紅茶にミルクと砂糖つけてもらうの忘れてた。
戻ると紅茶冷めちゃうし、ま、いっか。
「ただいまーって何してんの?」
「おかえり。見りゃわかんでしょ?セージ君のほっぺ伸ばしてんのよ」
「あ、ふいねえおはえりー」
「そ、そうなんだ」
戻ってみると、何故かセージ君のほっぺたを引っ張っているリコちゃんがいた。
セージ君もユイ姉おかえりって言ってたと思う。
どうしてそうなった?でも、聞いたら聞いたで私もほっぺを伸ばされそうなのでやめておいた。
「リコちゃん、紅茶ストレートでよかった?」
「ええ、甘ったるいのは苦手なの。ありがとう」
おお、大人だ。
まあ、私もお茶系はストレートがいいかな。気分でミルクとか豆乳入れるけど、基本は何も入ってない方が好きだ。
リコちゃんはセージ君のほっぺを伸ばすことをやめて、紅茶を受け取った。
「ついでにおやつも買ってきたから、皆で一緒に食べよ」
「あら、気が利くわね」
「ぼくもいいの?」
「一緒に食べよ」
「ありがとう!」
パアッとセージ君の顔が明るくなった。買ってきて良かった。商売上手なお姉さん、ありがとう。
ちょっとしたティータイムを楽しんだ後は、さっきとは違い特に内容がないような話をした。駄洒落じゃないよ?
友達との何でもない会話って、無駄だと思う人もいるけど話してる本人達は楽しいんだよね。
「あ、もうお日様が赤いね」
「あらもうそんな時間?」
言われて外を見ると日がかなり傾いていて、夕日になっていた。火鉢の火もいつの間にか消えていた。
結構な時間話していたらしい。久々なのもあって話が弾んでしまった。
「んじゃ、そろそろ帰りますか?」
「そうね」
「帰るときはこのままでいいの?」
「うん。一応受付の人に挨拶してから行けば大丈夫」
皆で帰り支度をして、受付のお姉さんのところまで向かう。
「お、お帰りかい?」
「はい。ありがとうございました」
「お菓子、おいしかったです!」
「お、ありがとね。期間中はまたいつでも来な」
再度お礼を言って、手を振った。お姉さんもまいど!と振り替えしてくれた。
帰り道、久々に三人の陰が並んでるのがちょっと嬉しくて、ゆっくりめに歩いてしまった。二人も私に合わせてくれたのか、陰が横一列に並ぶように歩いてくれた。
道中は無言だったけど、不思議とイヤじゃなかった。
「じゃあ、ここで」
「あ、そうだね」
「・・・ちょっと待って」
日時計がある広場で別れようとしたら、リコちゃんが待ったを掛けた。
なんだろう?いつもはサラッと別れるのに珍しいな。
「あんた、今度怪我したらホントにぶん殴るから」
「うっ頑張る」
「はあ、あと無理はしないこと」
「それはお互い様」
私がスッと拳を握って前に出すと、リコちゃんは一瞬キョトンとした後自分の拳をコツンと合わせてくれた。
合わせてくれたことが嬉しくてニッと笑うと、リコちゃんは少し呆れた感じだったけど笑って返してくれた。
「じゃあ、またね」
「ええ、またね」
「またね!」
今度こそバイバイをして、自分たちの家に帰った。
「さっきのユイ姉達、なんかかっこよかった」
「そう?勢いでやったから、今になってちょっと恥ずかしくなってきた」
「ううん、かっこよかったよ!」
そんなに褒められると、さっきとは違う意味で恥ずかしい。ていうか照れる。
拳同士をコツンってやるの、なんか憧れがあります。




