魔力測定
今回も凜視点です。
5/17 矛盾点を修正しました。魔王と友達だったのすっかり忘れてました。申し訳ない。
「さあ、ここです」
「・・・ここ、何もないように見えるけど魔力を感じるね」
「さすがですね」
目の前には何もないように見えるが、魔法でそう見せかけているだけ。結界に幻惑の効果をつけている。しかも、一流の魔法使いでなければ見破れないレベルで掛けてある。
あたしはそこに何かがあるって言うのだけが分かる程度。
「この結界は誰が?」
「カロさんと数人の獣人と魔族に手伝ってもらいました。維持はカロさんが主に行っています」
「・・・凄いね」
「はい。声を掛けたら、魔族もすぐに集まってくれました。楔梛様は魔族とも親しかったので」
あたしの頃はまだ魔族と人間が戦争していたときだったから、交流することも難しかった。何とか同盟は結んだけど上辺だけのものだったし、魔王以外とは交流がほとんどなかった。
とういかあの魔王が自由過ぎた。晩年はよくお茶会してたから、ただのお茶友として接してた。それでも、あたしが死ぬまで他の魔族との交流は希薄だった。
だから、こうやって孫を気に掛けてくれる魔族がいることが嬉しい。
陽翠、あなたの願いは叶ってたみたい。
「昔話は後にしようかの」
「そうですね」
「・・・じゃあ、行きますか!」
結界に触れるとバチッと言う音はしたが、痛くはなかった。
そのまま歩を進め、結界の中に入る。
薄いヴェールをくぐったような優しい感覚。拒まれているわけではないようなので、少しほっとした。
「ここだね」
「はい、この中に楔梛様がいます」
何もなかった空間に現われた、周りとは不釣り合いな石造りの小さい砦。
あたしがまだ生きていた頃は、ここら当たりには何もなかった。後々作られたもの。
作られた経緯も知っていた。遠くから見ていたから。
「・・・・・・・・・・」
「凜ちゃんや、考えるのは後じゃ。今は魔力の測定に来たんじゃろう?」
「・・・そうですね」
そうだ、まずは自分の魔力を把握しないと。物思いにふけるのはその後でいい。
「腕輪の制御を外すから、あたしから離れてて」
「ホウ」
「・・・お気をつけて」
二人が十分に離れたことを確認してから、魔石を取り出し地面に置く。
一呼吸置いてから、腕輪を外す。
一気に魔力があふれる。まだ、触れていないのに魔石が反応している。
なるほど、全盛期よりもかなり上がっているみたいだ。
魔石に手をつけて魔力を流し込む。
みるみるうちに青から赤に変わっていく。さらに赤から色が濃くなり、最終的には真っ黒になってしまったので、これ以上の変化は分からなかった。
「・・・ふう」
ここらが限界というところで止めてみたが、なかなか色が戻らない。
とりあえず腕輪をつけよう。
「ココ爺、クロ、もう大丈夫だよ」
「・・・・・・・なんつー魔力量してるんすか!?」
「ヴォッヴォッヴォッ、凄いのう、凄いのう、生前よりも上がってらったのう!」
「あたしも予想外☆」
こりゃあ、かなりコントロール頑張らないとな~。
魔力測定の魔石について:基本的に精霊教会が管理。例外として学校、学校のない地域の領主の家(許可制)、王城が管理。
色変化:無色→青→赤→黒のように徐々に変わっていく。赤が混じってくると、一般的に魔力量が多いと言われる。