対戦中にたくわえる、はきだすって使いどころがわからない
「ちょっと待ってくれ、結界から魔法がでた?」
「ん」
「いやいや、なんだそりゃ。そんなの聞いたことないぞ?」
「わたし、も、知らない」
「跳ね返すって言うのならあたしも分かるけど、そうじゃないんだよね?」
「違う。結界、当たる、前。相殺」
跳ね返したわけではなく、相殺した。
私がそんな相殺できるような魔法を使えるわけがない。ましてや無属性ならまだしも、五大属性の魔法は未だにからっきしだ。あ、なんか言ってて悲しくなってきた。
とにかく、そんなことは無理だ。
「さすがに無理あるんじゃ・・・」
「のー、この目、信じる」
「う~ん・・・」
「・・・まあ、ヒミが嘘を言うわけないしな。その前に変わったことはなかったか?」
「ん。ウォーターガン、だけ、結界、当たって、消えた」
「・・・あ」
「心当たりがあるんだな?」
「うん。他の水の玉は当たった後に、水が残ってたけど、水鉄砲の時だけは残ってなかったなーって」
「ほう?」
クロさんが少し面白いものを見たかのように相づちを打ってきた。
なぜか水鉄砲の時だけ、結界に当たるとバシュンって音がして水溜まりができていなかった。でも、それとこれとは何の関係が?
「・・・魔法を吸収した」
「・・・?」
「結界の中にはそういうものもあるんだ。なんで、とかは全然分からない。その吸収した魔法がどうなるのかも分かってない。でも、現象としては確認されている」
そういえば、無属性の本にそんなことが書いてきた気がする。ただ、それには吸収できるとだけしか書いていなかったはずだ。
「魔法吸収、それを、放出」
「そんなことが?」
「できた、と、しか、言えない」
「えーと、つまり?」
「結界で吸収した魔法が、なんらかのトリガーで放出されたってこと」
なんだその某ポケットに入るモンスターのたくわえるとはきだすみたいな効果。いや、たくわえるは相手の攻撃を蓄える訳ではないけどさ。
「それ、自分の意思でやることはできない?」
「・・・あの時は、なんか感情がブワーッてなっちゃってあんまり覚えてないんです」
「そっか・・・」
凜さんがそれから黙り込んでしまった。
でも、本当に覚えてないんだ。色々イヤだーってなって、気がついたらびしょ濡れになってたんだ。
「多分、称号、関係、ある」
「どうしてだ?」
「ん。強い魔法、だけ、吸収。危険、高い、時、称号、発動。ただ、放出、分からない」
つまり、私が当たったら危ない、危険だって思った魔法が迫ってきたときは逃げ姫が発動して、結界で吸収してしまうと。
放出に関しては、ヒメちゃんも分からないと。でも、なんとなくこっちは分かるかも。
拒絶だ。
あの時は、あの魔法に当たるのがイヤだって、死ぬのがイヤだって思ったら出た。
「つまり、優維自身が危険と感じたときに称号の力が強く働くんじゃないかと、そういうことか?」
「ん」
「あまりそういう状況にはなってほしくないがな」
「・・・ん」
この場にいた皆が心配そうな顔で、私を見てくる。
私だってそうだ。
でも、これからやることはこの鬼ごっこよりもっと危険なこと。
「・・・・・・逆に考えれば、どんな危険な状況になったとしてもなんとかなるってことだよね」
「まあ、恐らくは・・・」
「だったら、皆は私を待ってて。そしたら、私は何があってもここに帰ってくるから」
今回のことは自分で決めたこと。危険だからと言って、やめるわけがない。
それにこれが終わっても、まだまだやりたいことがあるんだ。こんな所で死んでたまるかってんだ。
今度こそ、天寿を全うするんだ!
「・・・ウッハッハ!こんなこと言われちゃあ何も言えねえな!」
「ボク、ちゃんと待ってる!」
「ん!」
「まあ、今度こそあたしが死なせないよ」
「凜さんはまず魔力コントロールですね?」
「うん、やるよー!」
うおーっと凜さんがかなり気合いを入れていた。
よかった、持ち直したみたいだ。
結局、なんで結界で魔法を吸収、放出できるのかはっきりと分からなかったけどなんとかなる。
いや、なんとかするさ!
このセリフはフラグじゃないです。あったとしても逃げ姫は、そんなフラグをへし折る程度の力があります。