何が起きた?
目の前で爆音がした。でも、衝撃はない。
身体に当たるのは、雨のように降る水だけ。
「はえ?」
「優維ッ!!!」
「ぬおっ!?」
凜さんが勢いよく飛び込んできた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!!」
「えーっと・・・・?」
「あたしの魔力がここまで強くなってるなんて!加減が効かなかった!だからっ、こんなことに!本当にごめんなさい!」
凜さんは泣きながら、見てるこっちが痛々しいほどに謝ってきた。
なんで助かったかは分からないけど、今の私は生きている。
凜さんの体温を感じる。ぎゅっと抱きしめると、ビクッと大きく震えた。
「凜さん」
「・・・っ・・・グスッ・・・」
「大丈夫です、私は生きてます。怪我もしてません。ずぶ濡れですけど、それはいつものことなので」
「でもッ!」
「大丈夫です」
もう一度凜さんをぎゅっとすると、おとなしくなった。
「・・・ごめんなさい、ありがとう」
「魔力コントロール、練習しないとですね」
「うん、頑張る」
私がニッと笑うと、凜さんも泣いたままニッと笑ってくれた。
バンッ!
「怪我はないか!?」
演習場の出入り口から焦りつつ、自警団の鷲獣人さんが入ってきた。
後ろからセージ君とヒミちゃんも走ってきた。
「はい、なんともないです」
「ぼくも大丈夫」
「ん」
「おう、まずはよかった!が、人に向けて魔法を撃つのは、魔力コントロールがちゃんとできるようになってからやれよ?危ないからな」
「「ごめんなさい」」
「今度から気をつけろよ」
演習場が水浸しになってしまったので、片付けは自警団でするから今日は帰るように言われた。
私たちのせいなので手伝うと言ったら、暗くなる前に帰った方がいいと断られてしまった。
「ヒミがいるから大丈夫だと思うが、気をつけて帰れよ」
「ん」
「演習場、水浸しにしてごめんなさい」
「ハッハッハッ!なーに、備品燃やしたり、切り刻んだりされるよりはよっぽどいいさ!気にすんな!」
あ、その人達に心当たりがある。しかもすっごい身近に。
「またな」
「「ありがとうございました!」」
「ん!」
「ガウ!」
今日はみんな疲れていたので、いつもよりゆっくりめで帰った。
その間、凜さんは私の頭の上に顎をのっけていて、端から見ると黒い帽子をかぶっているみたいだよってセージ君に言われた。
「ご飯のあと、話、ある」
「何か分かったの?」
「ん。クロさん、も、一緒に」
「わかった」
――――――――――――
「ごめんなさい」
帰ってからの凜さんの第一声がこれ。
クロさんも帰ってきていたので、二人に今日あったことを全部話した。最後らへんはまた涙ぐんでしまい聞き取りにくくなっていたが、それでも二人は相づちを打ちながら話を聞いていた。
「本当に、ごべんなさい」
「まずは鼻水かみな」
「あい」
ロジーさんからもらったちり紙で、ぶーっと大きな音をならして鼻をかむ凜さん。
「話はわかった。大変だったな」
「何はともあれ、二人とも怪我がなくてよかったさね」
クロさんは私と凜さんの頭をガシガシと撫でつつ、よかったよかったと言ってくれた。
「凜さんは今一度、自分の魔力量を把握した方がいいですね」
「あい、すびばせん」
「いいですって。明日、オレと一緒に長のところに来てくれませんか?」
「あい」
「優維、明日の鬼ごっこはお休みだ」
「ちょっとだけ魔法の練習はしても?」
「家でできる範囲ならいいぞ」
明日は急遽お休みになった。凜さんのメンタル的にもその方がいいだろう。
あと、私のメンタルと体力的にも。
身体が冷えていたので、先にお風呂に入らせてもらった。
お風呂に入って、気持ち的にも落ち着いたらどっと疲れを感じた。
ふお~、お腹すいてるけど眠い~。
「ユイ、まだ、寝ないで」
「ん~、大丈夫」
「よし、飯だな」
「はいはい、今日はお肉屋さんから生のソーセージが届いたからね」
「「でっか!」」
「ウッハッハ!この前の魔猪の肉だから上手いぞ~?」
見たことない大きさのソーセージ。ジョンソンヴィルも目じゃないくらいの大きさだ。
スープはトマトシチュー、いろんな野菜のグリル、野菜が練り込まれたパン。因みにパンの野菜は、野菜くずを粉々にして混ぜ込んだんだそうだ。
「すごい」
「さあ、たんと食べな」
「「「「「いただきます!」」」」」
ソーセージは肉感がすごく、噛んだところから肉汁があふれてくる。そこにすかさず、パンを放り込む。さいっこうにあう!
トマトシチューはトマトの旨味だけでは無く、キノコの旨味も合わさって最強に思える。
ヒミちゃんも目をキラキラさせて夢中で食べていた。特にトマトシチューがお気に入りだったらしく、おかわりしていた。
「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」
「はい、お粗末様」
「おいしかった~」
「ん、ん!」
「ヒミちゃんもテンション上がってるね~」
今日もおいしかったな~。
お腹もいっぱいになって、眠気がヤバイ。
「まだ、寝ちゃ、駄目」
「ん~」
「そうか、何か話があるんだってな」
「ん、大事。だから、少し、聞いて」
「わかった~」
眠いけど、ヒミちゃんが大事だと言うのなら頑張って起きよう。
「あの時、起こったこと」
「ウォーターガンがはじけた時?」
「そう。あの時、結界、から、ウォーターガン、出た」
「「「「へ(は)?」」」」」
眠気が一気に吹っ飛んだ。
ジョンソンヴィル食べてみたいです。
あと、野菜くずのパンは思いつきです。佃煮にすると食べられるから、細かくしてパンに混ぜ込んでしまってもいけるかなと。実際にあるかは分かりません。