絶賛成長中です!
「そこまで!」
「だは~」
「だんだんタイムが伸びてきたね」
「ん。ブレ、前より、少ない」
「本当!?」
「ん!(グッ)」
鬼ごっこを始めて4日目、だんだんと感覚がつかめてきた気がする。
凜さんとヒミちゃんにも褒められるようになった。
「でも、結界、遅い」
「やっぱりか~」
「先に障壁作ってから張ってる?」
「はい。そう本に書いてあったし・・・」
「あ~、そっか~。イメージしやすいもんな~」
「何か違うんですか?」
凜さんはうーんと唸ってから、あれは分かりやすいように変えたものなんだと言った。
本を作るに当たって、最初から結界というものを説明することが難しかったらしく、既存の魔法に絡めた方がイメージしやすいというアドバイスの元書いてもらったのだと。
「あとは、その方が魔法も物理も両方防げるからいいんだよね」
「結界だけだと物理攻撃は防げないんですか?」
「ある程度は大丈夫。ただ、強い衝撃とかは貫通してくることがあるんだ」
「え゛、それってもし大砲みたいな魔法が飛んできたら、火とか水事態は防げるけど、そのぶつかった衝撃は受ける可能性があるってこと?」
「察しがいいね、その通りだよ」
「うえー。じゃあ、結果的にどっちも張らないと意味ないじゃないですか~」
「使用用途によっては、必ずしもそうじゃないよ」
人や動物の侵入不可とか、認識阻害のように隠すときはその限りではないらしい。TPOによって使い分けができるんだと、ちょっと得意げだった。
そういえば、結界の発明者だったよ。
「優維は守るためだから、障壁も一緒に作った方がいいね。慣れれば自ずと張る速度も早くなってくるからダイジョーブ!」
「じゃあ、頑張ってみます」
「お、その意気その意気!」
できるようになったらその分生存率は上がるしね。
この世界では天寿を全うする!
「それじゃあ、明日の午後からはセージ君も鬼ごっこに参加してくれる?」
「ぼくもユイ姉に水鉄砲?」
「当初からその予定だったしね」
「わかった。でも、ぼく水魔法苦手なんだ」
「水をボールみたいに固めることはできる?」
「え、やってみる」
そういうとセージ君は手のひらに水を出しす、それが徐々に丸くなっていく。
そうしてピンポン球ほどの水の玉が出来上がった。
「できた!・・・けど、ちっちゃい」
「初めてでそれだけできれば上出来。それをそのままボールを投げるみたいに投げてみて」
「わかった」
ぶんっと投げるとなかなかのスピードで飛んでいって、そのまま壁にぶつかり水風船のようにはじけた。
「おーなかなかの強肩だね」
「これでいいの?」
「うん、優維の妨害をしてくれればいいからそれで十分」
「わかった」
どうしよう、どんどん難易度が上がっている。
ぽんっと不意に頭に手が置かれる。
「ヒミちゃん・・・」
「応援、する(グッ)」
「ヒミちゃ~~ん!」
とりあえず、夕ご飯食べに帰ろう。腹が減っては戦はできぬ、だ。
今日の夕ご飯は卵がとろとろのオムライスでした。ヒミちゃんも目がキラキラしながら食べてました、可愛かったです。
因みにヒミちゃんが鬼ごっこに付き合ってくれている間は、夕ご飯も一緒に食べることが交換条件になっていたみたいです。おいしいもんね、ロジーさんのご飯。
――――――――――
5日目の午後です。
今の気分は、いきなりエクストラモードをプレイする前の気分と一緒です。
ですが、一周回ってテンション上がってます。
「じゃあ、セージ君もよろしくね」
「うん。ユイ姉、手加減はしないよ」
「こいやぁ!」
「じゃあ、始め」
セージ君も鬼ごっこに参加するので、タイムキーパーはヒミちゃんに交代だ。因みにヒミちゃんは、鬼ごっこ中ずっと鑑定を使っている。
「いくよ、セージ君」
「うん、凜ちゃん!」
凜さんはいつも通り数発、水の玉を撃ってくる。今回はそれに追加で、セージ君の小さい水の玉が進行方向を塞ぐように飛んでくる。それに当たる前に急ブレーキ、当たりはしなかったが少しよろける。
その隙を凜さんは見逃してくれなかった。すぐに放射型が来る。
「ぐっ!」
「おお、言い反応だね!」
なんとか結界で防いだものの、尻餅をついてしまいなかなか立ち上がれない。まずは体勢を立て直さないと。
放射型を防ぎつつ、すでに結界を張っているところを起点に自分を覆うように広げる。自分の背後まで結界が広がったのを感じたので、結界を張ることに集中しつつ立ち上がる。
立ち上がったところで真横を見ると、セージ君が移動してきていた。二人が一度に視界に入らないのはまずい。まずは二人が視界に入る位置まで移動しないと。
放射型の攻撃がようやく終わった。一度結界を解いて、二人から距離を取る。
距離を取っている間も水の玉は飛んでくるが、特に問題なく避ける。
「よし」
「へー、良い判断だね。じゃあ、ちょっと本気だそうか。セージ君はそこから牽制して」
「わかった!」
ありゃ、なんか凜さんのやる気スイッチ押しちゃった?
「行くよ!”水鉄砲”!」
「―っ!」
前と同じ感覚、これなら防げる!
障壁を張り、その上に結界を張る。
ドンッ!
「うお゛っ!」
障壁を張っていても、多生腕に衝撃が伝わる。これ、結界だけなら吹っ飛ばされてない?
バシュンッ!
この前のように大玉が消える。でも、油断はしない。結界は張ったまま、その場から地面を蹴って離脱。
バシャンッ
案の定上から水の玉が、さっきまで私がいた場所に落ちた。
「いいね、学習してる」
「成長期ですから」
ニッと少し挑発的に笑う。攻略方法が分かりそれが上手くいくと、だんだん楽しくなってきた。
それからも撃っては避け、撃っては防ぎの繰り返し。
セージ君はまだ慣れない水魔法に悪戦苦闘しているようだが、的確に進路妨害をしてくるので厄介だ。
「あっ」
「隙あり!」
バシャア
「終了」
「あと30秒だったのにね」
「あーぐや゛じい゛ー!」
集中が一瞬切れてしまって、身体がよろけてしまった。その隙をつかれ、緩い水の玉を食らってしまった。
あ゛ーマジで悔しい!!
「かなり良くなってきたね」
「ん、魔力、コントロール、ぐっど。結界、早く、なった」
「そ、そうかな~」
「凄いよ、ユイ姉!」
でへへ~三人同時に褒められるとさすがに照れるな~。
「本当にすごいよ。あたしも途中で楽しくなってきちゃったもん」
若いもんの成長ほど嬉しいものはないね~、と感慨深そうに言う凜さん。
お婆ちゃんみたいだと思ったけど、年齢的にはリアルお婆ちゃんだったわ。話し方も人間時の姿も若いから忘れてた。
そういえば、何で大往生したのに姿は少女なのかと聞いたら、精霊時は大体が全盛期の姿で顕現するからだそうだ。
因みに少女と思っていたら、あれで30代の時の姿だそうだ。童顔すぎる。