鑑定、仮説、証明
午後です。やってきました、演習場!
セージ君をモフモフして、二人分のモフモフ予約もできたのでもう元気100倍!
「ん、来た」
「忙しいのにありがとね、ヒミちゃん」
「凜さん、助っ人って・・・?」
「ん。(グッ)」
演習場に来るとヒミちゃんが待っていた。
今、ヒミちゃんはどや顔でサムズアップしてる。
「ヒミちゃんには、鑑定で魔力の流れを見てもらうために来てもらったんだ」
「そうなんだ。よろしくね、ヒミちゃん」
「ん、頑張る」
そういえば、鑑定は魔力の乱れだったり状態異常が分かるんだった。
魔力の流れを見ても、称号が発動しているかどうかって分かるんだろうか?
「魔力の流れを見て何が分かるのかって顔だね。もしも、称号が発動していたらその時に魔力が乱れるかもしれない。そうじゃなくても、ある種の状態異常として現われるかもしれない。もしくはそれ以外でも、何か変化があるはずなんだ」
「ん、わたし、それ、感知、できる」
「なるほど」
「さて!理解できたところで準備しようか!」
セージ君が用具室から時計を出してきて、ヒミちゃんもその隣に立って目を開く。やっぱり綺麗な灰色だ。
「じゃあ、始めようか!」
「イエッサー!」
「はじめ!」
ボッボッボッ
初手の水の玉は一直線に数発、これは余裕でよけられる。
昨日より少し身体が軽い気がする。
ブシャーッ
今度は放射型、これは結界で防ぐ。
ザーバチバチバチ
結界に放水が当たって音がなる。はじかれた水が周りに飛び散って、雨みたいな音がする。
防ぎながらちらっと凜さんを見ると、二足歩行になって片方の手に魔力をためていた。あれは、強いやつが来る。
「"水鉄砲"」
「いっ!?」
放射型は止めずに、そのままもう片方の魔法を撃ってくる。
いやいや、昨日そんなの使ってこなかったじゃん!放射型の方で精一杯なんですが!?
でも、放たれた魔法は待ってくれない。
こうなりゃやけだ、両方防いでやらあ!
「ぬうううう!!!」
「お?」
「どおりゃあ!!」
バシュンッ!
大砲みたいな水の玉は、結界に当たって消えた。
防げた、どんなもんじゃい!
「っしゃ!」
「油断大敵。」
「へ?」
バシャアンッ!
「・・・つっめた」
「そこまで!」
「あたしの水鉄砲を防いだところまでは、よかったんだけどね~」
「うへ~」
「ユイ姉、はい、タオル」
「ありがとう」
水鉄砲を防いだあと結界が消えてしまったところに、頭の上から水が落ちてきた。
私が放射型を防いでいるときに、こっそり頭上に水の塊を配置していたらしい。用意周到過ぎる。
ずっと自分の周りに結界を張っていなきゃいけないのか。うーん、なかなかに難しい。
「ヒミちゃん、どうだった?」
「始め、軽い、身体強化、かかってた」
「あー、だから身体が軽く感じたのか」
「意識、した?」
「無意識、かな?そもそも、どうやってかけるのか分からないし」
「え゛、優維知らずに使ってたの?」
「うん」
だって、つい1ヶ月前に来たばかりだよ?
魔法のまの字も知らないペーペーだよ。無属性の本読んだけど、身体強化のところは曖昧すぎて覚えてない。最終的にただの筋トレの話になってたし。筋肉は裏切らない!って。
リコちゃん助けたときに使ったのは、必死だったから全然分からなかったし、そもそもちゃんと魔法を使ったのかすら分からない。
「つっても、身体強化魔法が使える人の大半がそんな感じだしな~。なんか異常に力強いなーって、鑑定してもらったら魔法でしたって分かったものだしね」
「ん、でも、発動、簡単」
「そうなの?」
「魔力、強化したいとこ、集めて、固める、だけ」
「魔力を集めて固める?」
強化したいところに魔力を集めるは分かる。固めるってなんだ?
「そう、魔力を集めてその部位に留めるって感じかな。通常の魔法は魔力を集めて放出するイメージ、強化魔法は留めるイメージって覚えておけばいいよ」
「へ~、分かりました」
「ん、結果、続ける」
「あ、脱線したね。結界張ってるときはどうだった?」
「少し、揺らぎ、あった」
「魔力の揺らぎ?」
魔力の揺らぎ?揺らぎってなんだ?
私は結界を張るとき、最初は蜂の巣の六角形をイメージしてたけど最近は亀の甲羅をイメージしている。その方がなんか硬そうだし、攻撃を受け流せそうだから。
それこそ、魔力を固めているはずなんだけどな。
「今、結界、張って」
「え、うん」
亀の甲羅をイメージして、結界を張る。
私の周りに何十かに六角形が並んだ膜ができた。
「やっぱり・・・」
「何か分かった?」
「うん、今、揺らぎ、ない」
「ということは・・・」
「称号の力。仮説、当たり」
ヒミちゃんの表情は変わってないけど、嬉しそうな感じがした。