鳥婆、襲来
「えぇ~………………姿見ありますか?」
「お、おう?そこにあるぞ」
クロさんは?を浮かべながら、すぐそこにあった姿見を指さした。
・・・うん、やっぱり縮んでるね。10歳くらいなのかな?その頃だと140cmなかったくらいだったな。セージ君140cm以上はあるもんね。
「………なんでじゃああああ!!!」
「優維ちゃん!?」
「お姉ちゃんどうしたの!?」
「あんたぁ、何したの!!!」
「オレは何もしてねえよ!?」
私が叫んだことで、ちょっとしたパニックになってしまった。クロさんまた頭叩かれてた、なんかすいません。とりあえず、元々の年齢はもっと上だったが今は10歳くらいまで縮んでいると説明した。皆よくわからないという顔をしていた。うん、そんな反応になるよね!自分でもわかってないもん!
「とりあえず、中身は大人だけど外見は子供になってしまったと」
「よくわからないけど、そういうことですね~」
「は~不思議なこともあるもんだね~」
これが見た目は子供、頭脳は大人状態か。異世界に来た時点で何が来ても不思議じゃないと思ってたけど、これに関しては記録が残っていないらしい。とりあえず、年齢に関しては言わなくてもいいだろうとこの家だけの秘密となった。説明ができないし、面倒だからとクロさんは言っていた。
「ふう~、ロジーお茶くれ」
「はいはい。」
「お姉ちゃん、大丈夫だった?」
「うん、とりあえずは……」
「そっか~」
ちょっとまったりしていたら、ロジーさんがお茶を出してくれた。
「はいよ」
「ありがとうございます」
「ね、心配なかったろう?」
「はい」
小声だったため、クロさんには聞こえていないのかまったりとお茶を飲んでいた。しばらくそうしていると、クロさんが立ち上がって外に行く準備を始めた。
「ちょっと優維ちゃんのことを長に報告してくる」
「だったら私も一緒に……」
「いや、まだ怪我が完全に治ったわけじゃないだろ?今日は家でゆっくりしててくれ、雪も降っているしな」
「……わかりました」
「お姉ちゃん一緒に遊ぼう!」
「うん」
「じゃあ、行ってきます」
「「「いってらっしゃい」」」
「お姉ちゃん、何して遊ぶ?」
「うーん、セージ君は何やりたい?」
「お絵かき!」
「じゃあ、お絵かきしよっか!」
絵は得意じゃないけど書くのは好きだ。セージ君とお題を出し合いながら書いていたが、名前はちょっと違うけど大体形と特徴は似ていたのでそれほど難しくはなかった。おしゃべりしながら絵を描いていたので、時間があっという間に過ぎていった。思った以上に楽しかった。あと、意外とセージ君が博識で驚いた。
トントンットントンッ
玄関のノックの音がしたので、ロジーさんがはーいと出迎えに行った。
「今日は誰か来る予定だったの?」
「ん~ん、何も聞いてないよ。誰だろう?」
誰だろうな。ロジーさんがなかなか戻ってこないことをみるに、少なくとも知らない人ではないのだろう。柔らかい雰囲気と話し声が聞こえるしね。と、聞き耳を立てていると突然、トットットっとロジーさんではない軽快な足音が聞こえてきた。それもこっちに向かってきているような・・・
バーンッ
「イッヒッヒ!」
「うおおぅ!?」
「ガウゥ!?」
なんだこの怪しいおばあちゃん!黒いローブにじゃらじゃらと装飾品がついていて、如何にも黒魔術とかやってます的な典型的な人!?あ、人じゃない!嘴がある!そして顔が派手!これ、インコだ!
「とっ鳥バア!?」
「イッヒッヒ、お前さんが例の遭難者かい?」
「はいイ!?た、たぶんそうです?」
「ちょっと手見せてみな」
「は、はい」
勢いに押されて手を見せた。うわ!いきなりぐいってせんといて!そして、さっきの勢いとは打って変わって包帯を優しく解いてくれた。初めて手の怪我を見たけど、皮膚の色は元に戻りつつあったがまだ完全には戻っていない感じだった。皮もめくれてた痕がある、ちょっとグロイな。
「ふんふん、これくらいならすぐ治るわい」
ポウと光淡い光が手から出たと思ったら、おばあちゃんの手に撫でられたところは何事もなかったかのように綺麗に治っていた。驚いておばあちゃんの顔を見ると優しく微笑んでいた。
「イッヒッヒ、これでもう大丈夫じゃ」
「あ、ありがとうございます」
「足も同じようになっているじゃろ?見せてみんしゃい」
「あ、ぼくお茶の用意してくる!」
セージ君が部屋を出て行ってしまった。2人きりになってしまったが、とりあえず治療してもらうため足をまくった。そういえば包帯が膝上まで巻かれていたから、ズボンも脱がなくちゃいけないな。セージ君はそれを知っていたから、席を外したのか、意外と紳士だ。
「さすが、クロ坊の息子だねぇ。よくできた子だよ」
「はい、とてもいい子ですね」
「……お前さんも年齢的には変わらんじゃろうに」
「えっと、治療お願いします」
「イッヒッヒ、そうじゃったな」
―鳥婆が子供部屋に突入する前、玄関にて―
「はいはーい!あら、リーンヴォックさん何か用かい?」
「……人に買い物を頼んでおいて、それを忘れるとはな」
「アッハッハ、全く冗談が通じないんだから。お使いありがとさん」
「ああ。クロはいないのか?」
「長のところに行ってるよ」
「例の子の報告か?」
「そんなところよ。そういえば、鳥婆は一緒に来たの?」
「ああ、また王都の下町で職質受けて捕まってた。もう、そこの自警団とは顔見知りだよ。あっちも一応仕事だからな」
「お役所仕事も大変だね」
「毎回迎えに行く身にもなってほしい」
「はいはい、あんたもお疲れさん。それで鳥婆は今どこに?」
「ああ、その例の子を見たいというので一緒に来たはずだが—―」
「ん?どこにいるんだい?」
「………あのババア!!!」
―戻って、子供部屋―
「ありがとうございました」
「イッヒッヒ、大したことじゃないよ」
あれから足も治してもらったが、見た目ほどではなかったらしい。どっちにしろちょいグロだったけどね。治療も終わったので、ズボンを履こうとしていると、誰かの大声とドッドッドっと荒々しい足音が聞こえてきた。
バンッ
「おい、ババア!!!勝手に動くなって言った、だ、ろ……ッ!?」
「あ」
「レディの部屋に入るときはノックしな!!」
「す、すまん!!」
バンッ
うああああああ、初対面の黒豹っぽい人にパンツ見られた!穴があったら入りたいとか、そういうレベルじゃない!そういう展開はラブコメでやってくれ!
「全くデリカシーってもんがないね~。ほら、早くズボン履いちまいな」
「アッハイ」