夜の密会(やましいことはありません)
凜さん視点で短めです。
「いや~、急なお願いなのにすまないね」
「いえいえ。むしろ夜中に連れ出すことになって申し訳ないです」
「土竜の獣人さんは夜行性だから仕方ないよ。それにあたしが無理言ったんだし」
夕ご飯を食べたあとクロに相談したのは、鑑定ができてなおかつ魔力探知に優れている人はいないかということだ。
優維の言っていた魔力コントロールがおかしい所をきちんと把握できれば、称号の発動条件が分かるはずだ。
「にしても、やっぱり土竜獣人は凄いね。あたしの時も、偵察と調査に関してエキスパートだったよ」
「はい、それだけはずっと変わっていません。まあ、優秀なんですがその分クセが強いやつが多くて・・・」
「あははっ、そこも変わってないんだね」
「ええ。でも情報に関しては妥協も嘘もない、信頼できるやつらです」
土竜さん達はいつの時代も、活躍しているようだ。
これには初代の爺さんも鼻高々だろう。
コンコンッ
「こんばんは、クロさん。どうしたんすか?」
「ばんは」
「こんばんは。すまないな、休みの日に」
「いえ、暇してたからいいよ。それで、そのヒグマは・・・っ!!」
出てきたのは土竜獣人の青年、後ろから女の子の声が聞こえた。
青年はあたしの姿を見て、すぐに後ずさった。
「あ~、長から聞いてないか?」
「・・・一応は・・・」
「このヒグマがそうだ」
「凜ちゃんです!」
あたし悪い精霊じゃないよ~、害はないよ~。
「えっと、凜、様?」
「凜でいいよ」
「いえ、そういうわけには・・・」
「あなた、今、なに?」
「ヒミ!?」
青年の後ろから、出てきた女の子は静かに問いかける。
目は開いてるけど、土竜なのでほとんど見えていないはず。それなのに、全て見透かされているような、そんな目をしていた。
今のあたし、か・・・今のあたし。
「あたしは、ただの凜だよ」
「・・・そう。凜、わたし、ヒミ」
「ヒミちゃんね、よろしく」
「ん、よろしく」
いつの間にか目は閉じられていた。
「はあ~、そういうことにしておこう。ただの凜な。オレはディグ、よろしく!」
「ディグ君ね、よろしく」
「・・・お前らすごいな」
「ん~、クロさんが気にしすぎなんじゃね?」
「考えすぎ、ハゲる」
「まだハゲねぇよ!?ヒミ、お前な~」
「きゃー、ディー兄」
「おーおー、大丈夫だぞー」
二人とも棒読みが過ぎる!んで、クロがぐぬぬしてる。
仲がよくて、微笑ましい。
「用事」
「ああ、何か用事あったんだろ?」
「お、おう、そうだった」
「あのね、お願いがあって来たの」
「オレたちができることなら」
「ううん、あなたたちにしか頼めないの」
優維のことも知っていて、魔力探知、鑑定ができるあなたたちに。