さすがに威力はセーブしてるよ!
バシャアッ!
「うへー」
「そこまで!」
「う~ん、集中力切れてきたかな?ちょっと休憩しよう」
あれから何回か鬼ごっこ(仮)をやっていたけど、なかなか目標の5分を達成できていない。おかげで全身びしょ濡れだ。
小学生が投げるボールくらいの速度ならよけられるけど、それより速かったり、持続的なものは結界で防ぐようにしている。でも、その前に当たってしまうことが多い。ようは結界を張る前に当たってしまっているんだ。
凜さんも凜さんで、単発の玉だったり、ホースで水を出しているみたいなのを変則的に使ってくる。1回1回パターンやリズムが違うから、瞬時に判断するのが難しい。
「”ドライ”」
「ありがとう、セージ君」
「どういたしまして。はい、タオルと飲み物」
セージ君は今は、タイムキーパー兼マネージャーのような役割だ。
最初から2人がかりでは厳しいだろうという凜さんの判断だ。いずれは鬼が二人になるのか、うへー。
今は魔法で服を乾かしてもらっている。あとは身体や髪を拭く用のタオルと、飲み物もくれた。できるマネージャーだ。
「もうちょっと休んでて。今日は、あと1回やったら終わりにしよう」
「はーい」
休んだあとに、また鬼ごっこ(仮)開始。
水の玉よけて、放射型は結界で防ぐ。玉は速くなったり遅くなったりで、かなり必死だ。
え、結果?完敗だよ。
――――――――――――――――
「「「ただいま」」」
「おかえり、夕飯できてるから手を洗ってきな」
「「「はーい」」」
家に帰ったら手洗い、うがいは必須!
一番簡単なことだけど、風邪予防には効果的なので皆さんもやりましょう!
誰に向けて言ってるんだろうね?まあ、いいや。
「おう、おかえり」
「「「ただいま」」」
「今日は演習場に行ったんだって?」
「うん、凜さんと魔法の特訓しにいったんだ」
「特訓?」
「魔法使用可の鬼ごっこだよ」
「ああ~、オレも昔やったな~」
「え、クロさんもやってたんですか?」
「おう、魔法の訓練と同時に体力もつくからな。まあ、オレたちは遊び感覚でやってたがな。最終的にリーさんとオレが本気になるから、王とカロさんが大変そうだったな!」
ウッハッハっと豪快に笑いながら話すクロさん。
クロさんは純粋に楽しいからって感じだけど、リーンヴォックさんは遊びでもずっと本気でやってそう。うん、容易に想像できる。
あれ?鬼ごっこってこんなド派手なものだったっけ?
「ちょっと~、楔梛をいじめてたんじゃないでしょうね~?」
「そ、そんなことは断じてしてません!」
「ほんと~?」
「精霊に誓って!」
「ならいいや。楔梛と仲良くしてくれてありがとうね」
「いいえ、こちらこそありがとうございます。王には、よくしてもらいましたから」
凜さんは親のような優しい顔で、クロさんは悪戯っ子のようにニカッと笑った。
「さあ、ご飯だよ」
「おう」
「ありがとう」
「やった、今日はお肉のシチューだ!」
「大きい魔猪が捕れたからな」
「「「いただきます!」」」
シチューなのにお肉がでかい!ゴロゴロだ!
ブラウンシチューの中にお肉が浮かんでいる感じではなく、お肉にシチューがかかってる感じだ。それくらいお肉がでかい。
これはパンが止まらないやつ!
「シチューばかりじゃなく、野菜もちゃんと食べな」
「「「はーい」」」
シチューの中にも野菜が入っているが、他に生野菜のサラダも用意されている。内容はキャベツとマメ、タマネギ、ニンジンだ。ドレッシングは塩とハーブとごま油、シンプルながら野菜の味が引き立ちおいしい。
「「「「ごちそうさまでした」」」」
「お粗末様でした」
「ロジーさんの作るご飯はどれもおいしいね。お城のシェフにも匹敵するくらいだよ」
「そりゃ~褒めすぎさね。でも、ありがとね」
あ、珍しくロジーさんが照れてる。
それくらいおいしいから仕方ないね!
「明日も演習場か?」
「う、そう、です」
「ん?なんか行き詰まってんのか?」
「よくわかんないけど、魔力のコントロールが上手くいってない気がして」
「まだ1日目だから、しょうがないよ」
「うーん・・・」
「・・・ふむ、優維は称号のこともあるしな~。あ、クロちょっと相談」
「なんですか?」
なんか鬼ごっこしてるときに魔法使ったときと、普段魔法を使うときの感覚が違うっていうか、ムラがあるっていうか。
うーん、わからん!
因みに、小学校低学年の平均球速が40~60キロくらいだそうです。それくらいのイメージですが、目の前に迫ってくる玉ってそれ以上の速度に見えますよね。