りんさんといっしょ!
凜さんの不安しかない提案のあと、あれこれ話し合ったがいい案は出なかった。
「あいわかった!わしの方でもう少し調べてみることにしよう。1週間ほど時間をくれんか?」
「いいよ。なるべく準備は万全にしておきたいしね」
「じゃあ、今日はこれくらいでお暇します」
「クロは少し残ってくれんか?頼みたいことがあるんじゃ」
「分かりました。優維は凜さんと先に帰っててくれないか?」
「分かった。それでは、ココ爺、失礼します」
「まったね~」
「ホウホウ、またの」
ココ爺に手を振って、家の外に出た。
雪は少しだけ溶けていたがそれなりに深かったので、帰りは行きのクロさんの足跡に重ねて歩いた方が良さそうだ。
「そういえばさココ爺の家の木、なんだと思う?」
「う~ん、モンキーポッド?」
「この木なんの木!?ブッブーです!(×)」
「………その姿でやられると馬鹿にしてる感が薄れますね」
「元の姿だと?」
「ちょっとイラッとします」
「なんで!?(ガーン)」
相変わらず面白いな~。からかいたくなるよね。
因みに除雪されている道に出るまでは、凜さんが埋まってしまいそうなので抱っこして歩いてます。ちょっと重い。
「も~、なんかあたしに対してちょいと辛辣じゃないかい?」
「あはは、すいません。ちょっと面白くて。あとナイスツッコミです!」
「ありがとう!っとそれは別として、初めて見たときはそんな感じしなかったのにな~。(ムスー)」
「すいませんって。なんか凜さんと話してると、友達と話してるみたいで楽しくて。でも、嫌だったらやめますね」
「………は~、いいよ許す!あと、普段も敬語なしでいいよ」
「許された!敬語は善処します」
なかなか敬語を外すのは難しいかな?
親しくても年上だとどうしても敬語になってしまうのは、もはや癖だからね。
「それで何の木なんですか?」
「話逸らしたね。まあいいや。
この木はね、サクラの木なんだ。しかも寒い地域の固有種で、あたしたちがよく見ていた桜よりも花の色が濃いピンク色なんだ」
「へえ~。春に咲くのは変わらないんですか?」
「そ、春になるとそれはもう綺麗に咲くよ」
この世界にも桜があるんだ。
社会人になってからは忙しくて、お花見なんて行ったことなかった。桜並木を歩くだけで満足させてたけど、やっぱりゆっくりお茶でも飲みながら見たかったな。
そうだ!
「春になったら、皆でお花見しませんか?」
「いんじゃない?」
「まずクロさん達でしょ、リコちゃんとこも呼ぼう!あ、ココ爺に許可もらわないと」
「そうだね~」
「もちろん凜さんと楔梛様もだよ!」
「………へ?」
「あ、もしかしてイヤでした?」
「………ううん、私も優維達とお花見したい。」
うんうん、お花見は一人もいいけど皆と一緒もいいよね。
クロさんとセージ君はすぐ乗ってくれそう。ロジーさんに頼んで料理も作ってもらおう。リコちゃんは……………うん、なんだかんだ来てくれそう。
ん~凜さん、あんまり乗り気じゃないな~。まだ気にしてるのかな?
気にしなくてもいいのにな。ここは少し強引にいったほうがいっか!
お、いいところに切り株発見。ちょっとそこに凜さんを降ろそう。
「よっこいっしょっと」
「どうしたの?」
「指切りしましょう」
「指切り?」
「そう!春になったらお花見をするって。あ、楔梛様と今はできないから、凜さんと代わりに両手で指切りしましょう」
「………ふはっ何それ?」
「約束です!」
「………ゆーびきりげんまん」
「「うーそついたら、はーりせんぼんのーます、ゆびきった!」」
ヒグマと指切りって、元の世界では一生ないだろう経験を今してるよ。しかも両手、レアすぎる。ただ、熊は爪を出し入れできないから、私が小指からめてるだけだけどね。
無理矢理じゃないよ!凜さんも前足を出してくれたし、一緒に歌ってくれたし!これは同意ってことでいいよね?
それからは他愛ない話をしながら、家に帰った。
雪が少ない道に着いてからは凜さんを降ろして、一緒に歩いた。まだ慣れてないのか、ポテポテと歩く凜さんが可愛かったです。
ガチャッ
「「ただいま」」
「お帰り、ユイ姉、凜ちゃん!」
「お帰り、クロは?」
「あ、ココ爺が頼みがあるからちょっと残ってくれって。私たちは先に帰ってきま、きた」
「そうかい。まず手を洗ってきな、凜もね」
「「はーい」」
危ない危ない、また敬語使うところだった。
ん~、なかなか癖って抜けないもんだね。
ココ爺の家の木はエゾヤマザクラのイメージです。
あと、タイトルは意味があるときとないときがあります。大半は意味なくて、ノリでつけてます。