この世界について
5/20 誤字修正しました。報告してくれた方、ありがとうございます。
「落ち着いたかい?」
「ズビッ…はい……ありがとうございます」
「お姉ちゃん、はい、ちり紙」
う、鼻水も垂らしてた。セージ君にお礼を言いながら、ズビーと女の子らしくない音をさせて鼻をかんだ。
そしてようやく落ち着いたので、少し冷めてしまっていたが野菜スープをいただいた。ちょっと手が動かしにくかったけど、なんとか自分で食べることはできた。さすがに、あ~んは恥ずかしい。あ~五臓六腑に染み渡るとはまさにこのことか、暖かい。
「ごちそうさまでした。とってもおいしかったです!」
「口に合ったようで何よりだよ。さあ、今日はもう寝ちまいな。たくさん泣いて疲れたろ?」
「え、いや、起きたばっかり……」
「でも、お姉ちゃん眠そうだよ?」
あれ?言われてみれば、あんなに寝たのになんかまぶたが重い。
あー布団掛けないで~
「「おやすみ(、お姉ちゃん)」」
「おやすみ…なさい……」
三日も寝たのに、あの後朝までぐっすりだったよ。思った以上に体力がなくなっていたらしい。相変わらず、手は動かしにくいけどね。よっこいしょっとベットから降りて、歩いてみた。うん、ちょっと違和感あるけどゆっくり行けば問題ないな。
「あら、おはよう。歩いても大丈夫かい?」
「おはようございます、ロジーさん。ゆっくりなら大丈夫そうです。」
まだロジーおばさんしか起きていないようだ。それもそうか、まだ朝日が上ってすぐくらいの時間帯だった。
「あの、何か手伝えることありますか?」
「うーん、支度はもうだいたい終わっちゃってるからね。じゃあ、セージを起こしてきてくれないかい?」
「はーい」
場所を教えてもらい、ゆっくりゆっくり歩いていた。意図はしていないが、寝起きドッキリをしにいくような忍び足になってしまっている。いや、しないけど。
セージ君のお部屋の前についたので、まずは控えめにノックしてみた。
トントン
……応答なし。これは突入か?いや、呼びかけてみよう。
「セージくーん、朝だよ~」
……これにも応答なし。ふむ、これは突入だな。お邪魔しま~す。
子供部屋らしい感じ、布団は一部がこんもりとしていた。これじゃあ何も聞こえないわな。少し揺さぶってみるか。
「セージくーん?」
「…むーん……」
もぞもぞと山が動いたが、起きる気配なし。あんまりやりたくないけど、布団をめくるしかないかな?それでは、3、2、1、どーん
「セージくん!朝だよ!」
「ガウッ!?」
ガバッと布団を剥いだら、熊らしい声とかなりびっくりした様子のセージ君。
テッテレー、ねおきドッキリだいせ~こ~。
「お、お姉ちゃん!?おはよう!?」
「おはようございます」
びっくりしながらもちゃんと挨拶するあたりいい子だよね。ちょっとセージ君に怒られはしたけど、しょうがないなという感じで許してくれた。それから二人で並んで食卓まで行ったけど、意外とセージ君でかいな。私より少し背が高い、大体8歳くらいだと思ってたんだけど、もう少し上なのかな?
「おはよう、セージ」
「おはよう、お父さん、お母さん」
「おう、おはよう。寝坊助が今日はちゃんと起きたな」
「お父さん、それしー!」
ニカッと笑った褐色の肌に、白髪のガタイがいい男の人がいた。セージ君にお父さんといわれてたので、あの人がクロさんか。
「ハハッすまんすまん。それと、もう一人の寝坊助も起きたみたいだな。歩いても大丈夫か?どこか痛いとこないか?」
「あ、はい、ゆっくりなら。痛いところも特には…あの、」
「なら、よかった!まずは飯を食おう。せっかくの料理が冷めてしまう」
「たんと食べてね」
確かに、ほかほかと湯気を立てている食事はとてもおいしそうだ。これは、白いスープ?とろみがあって、シチューのようだった。え、うま!これは絶対パンに合うやつ。うん、やっぱり、パンがスープをすってめちゃくちゃうまい。
「ごちそうさまでした。」
「はい、お粗末様でした。そんなにおいしかったかい?」
「はい!とっても!」
ふう~満足、満足。かなりがっついてしまったが、これはしょうがない。3日ぶりの炭水化物、堪能しました。
「それだけ、元気なら大丈夫そうだな」
「あ、はい。それで…まずは看病していただきありがとうございました」
「おう!さすがに見つけたときは驚いたがな!」
「あれ、クロさんが見つけてくれた?助けてくれたのは白熊さんだと……」
「あ~見ても驚かないでくれよ?」
というとクロさんの顔が見る見るもふもふに、白熊になっていった!?え、何、これは俗に言う獣人というものか!すごい、すごい!
「やっぱり怖いかな?もう少し話してからにしようと「すごいです!」へ?」
「私初めて見ました!触ってもいいですか?」
「お、おう」
「お姉ちゃん怖くないの?」
「なんで?驚きはしたけど、私を助けてくれた人だし、悪い感じはしないから。改めて、助けていただきありがとうございました。」
ともふもふしながら答えた。ロジーさんはニヤニヤしながら見てたけど、セージ君はほっとした後ちょっとむくれてた。はあ~、堪能した、いいもふもふでした。
「とっ、とりあえずここがどこかだったよな。ここはリホク地方のウパシというところだ。」
「リホク?ウパシ?」
「……ふむ、優維ちゃん、君はこの世界を知っているか?」
「え…ッ!?」
隣でセージ君がどういうことという顔をしていたが、私はそれどころではなかった。聞き慣れない地名、獣人、大方予想はしていた。だが、その世界の人からでたこの言葉。違う世界の人だと、疑われている。こういう話では異世界人ということは、あまりばれてはいけないのがセオリーだと思っている。まあ、例外はあるが大体面倒なことになるし、異端扱いされるからだ。それが、最初からある程度確信している感じとなると誤魔化すことが難しい。
なぜなら、私は嘘がつけない!友人や家族からも、顔見ればわかると、すぐにばれてしまっていた。
「ああ~、そんな顔をさせるつもりはなかったんだが。とりあえず、一旦落ち着いてくれないか?」
「バカッこんな小さい子が、いきなり言われたらこうなるよ!」
「イテッ」
バチーンっと小気味よい音で少し我に返った。混乱はまだ溶けないが、クロさんの次の言葉を促した。
「その質問はどういう意味ですか?」
「言葉通りだよ」
「セージ、ちょっと皿洗い手伝っとくれ」
「え、う、うん」
セージ君は心配そうに振り返ってから、ロジーさんは心配ないよと、私の頭をなでてから奥に行ってしまった。
「さて、まずどこから話そうか。優維ちゃんのような、つまりほかの世界から来た存在は初めてじゃないんだ。それこそ、何十年かに一度だったり、百年に一度だったり周期はないけど迷い込んでくる人がいるんだ」
「へ?じゃ、じゃあ他に異世界から来た人がいるんですか?」
「おう、正確にはいた、だけどな。それに、初代王妃は異世界人だったしな」
「ヴェェ!!」
「ウッハッハ!斬新な驚き方だな。そういえば、初代王妃も最初からオレたちを怖がらなかったな~。それどころか触らせてって、優維ちゃんみたいな反応してたな」
初代王妃ももふもふ好きであったか。いたと言うことは、もうこの世にはいないのだろう。生きていたらもふもふについて是非とも語り合いたかったな。
「だから、たまにあることなんだ。でも、あんまり他でバレてはいけないよ。異世界人はオレたちにはない知識があるから、悪用されたりするからね」
「はい」
皆が皆、いい人とは限らないからね。それはどんな世界でも同じだ。でも、そこまで迫害などはされていないことが知れただけでもよかった。
それから、クロさんはこの世界について教えてくれた。簡潔に言うと、この世界は人間族、獣人族、魔族の3種類が存在していて、それぞれ国があるということ。昔は全部バラバラだったが、獣人と人間の国が誕生したことでどんどん種族が混じっていき、今は多種族との結婚も多くはなってきているらしい。それでも、差別が色濃く残っている町や国もあり中央は苦労しているらしい。まあ、それは現世でも同じだよね。今でも差別は残っているし、全員が全員受け入れられるものはないからね。だれかの正義は、だれかの悪ってね。
話がそれた。この世界は東西南北に分かれていて、その中心に一番大きな国、ゼニスがある。そのゼニスにはすべての種族が集まって、定期的に会議という名の交流会をするらしい。そして、ここは北にあるリホク地方のウパシという小さい村なのだと。少し雪崩が多い地域ではあるが、村は結界によって守られているから、そういう日は村から出なければ問題ないらしい。また、時期や期間は違うもののすべての地方に四季があるので、春には雪が溶け、冬までの間に十分な作物は採れるらしい。もし不作でも冬に採れる果物や、動物や魔物の肉でなんとかなるらしい。
「とまあ、こんな感じだ。何か質問はあるか?」
「えーっと、結界があるってことは魔法もあるんですか?」
「おう、あるぞ。ちなみにオレは火魔法が得意だ」
「意外です」
白熊だからてっきり氷とかだと思ってた。現世の某ポケットに入るモンスター基準で。
「魔法は皆使えるが、得意なものには個人差がある。大体は生活に必要なくらいで、それ以上のやつは魔術師や騎士とかにならないと鍛えないかな」
「へえ~。ちなみに、私にも使えますか?」
「ん?使えると思うぞ、今度セージと一緒に勉強してみよう」
「そういえば、セージ君って何歳ですか?」
「今8歳だ。優維ちゃんと近いと思うぞ?」
「え~と、私そんなに小さくはないのですが……えぇ~」
と何気なく窓に映った自分を見ると、10歳かそこらの女の子の顔がえぇ~という顔をしていた。なんで、縮んでんの!?
やっと色んな設定出せました。
ちなみに白熊獣人のクロが、人間時褐色のなのは白熊の地肌が黒いからです。