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娘からの手紙

 優維の母親と凜視点で分かれてます。


――優維の母親視点―――



 娘が急に亡くなってから、2週間が過ぎた。

 本当に急だったから、まだ気持ちが追いついていない。それに葬儀やら通夜やらが忙しく、初七日が終わり四十九日の手配もつき、今ようやく落ち着いたところだ。


 今までの疲れがどっと来たのか、その日は9時に寝た。

 お父さんにも「母さん、顔色悪いぞ。今日は俺が線香と蝋燭みとくから寝ろ」といわれてしまった。

 そういうお父さんも疲れた顔をしていたが、その後すぐにライオン丸と戯れているのを見て、お言葉に甘えることにした。





 ――――――――――――――――――――――



「ここ、どこ?」



 白い空間に私の声が響いた。

 それは、夢の中だとはっきりわかった。明晰夢というやつだ。



「うお、まぶし!」



 急に目の前がパアッと光った。

 まぶしさから閉じた目を開けてみると、目の前にファ~って感じの白いワンピース着て、空に浮かんでる少女がいた。



 サッ



「なんで目逸らすの~!?」

「いや、変な人がいたら目を合わせてはいけないと」

「変な人!?(ガガントスッ)あとそれ野生動物の対処法!!」

「あと、関わると長くなりそう。人の睡眠時間を削る人は、万死に値する」

「怖ッ!親子で言うこと一緒すぎる!!」



 今日は疲れてて早く寝たから、なおさらちょっとイラッとした。

 ってちょっと待て?今この変人はなんて言った?親子で?



「そこの変人、優維を知っているの?」

「変人(orz)……………はい、優維を知ってます。あと私の名前は凜です」

「話を聞こうじゃないか、凜とやら」

「あ、はい」



 凜と名乗る少女は、なぜか正座して話そうとしたので普通に座るよう促した。

 このままでと断られてしまったので、私もそのまま腰を下ろした。



「あんまり時間は取らせませんので、落ち着いて聞いてください」

「そこまで畏まらなくてもいいんだけど?」

「いや」

「さっき威圧したのは、半分は優維のことだったから。もう半分はイラッとしてたから」

「半分私情!」



 だって本当のことだし。



「えっと、じゃあ普通に話すね。

 単刀直入にいうよ。娘さんは今、異世界にいます」

「…………………は?」


 

 本当に変な人だった。頭沸いてんのか?



「あのすみません本当です。だからその可哀想な人を見る目やめてください」

「いや、いきなり娘が異世界にいるって言われて、さらっと信じられるわけないでしょ?」

「で、ですよね~(汗)で、でも本当なんです!」



 信じられない話だが、この人は嘘をついていない。私の直感がそう告げている。

 じゃあ、本当に異世界にいるのだろう。まるで、娘が読んでいた本の話のようだ。

 そのせいで、娘は死んだのか?



「いいえ、異世界転移のせいで亡くなったんじゃありません。本当に不慮の事故でした」

「そう…………」



 それを聞いて、私は少しほっとした。もしそのせいで死んだのであれば、私はこの人をぶん殴っていただろう。



「で、なんで私の夢に出てきたの?」

「手紙を届けるためです」



 そういって手渡してきたのは、ライオンのような猫のイラストがついた手紙だった。

 宛名がお父さんとお母さん、差出人は————優維だ。

 それにこの字は、紛れもなく娘の字だ。



「見ても?」

「どうぞ」




――――――――――――――――――――




 お父さんとお母さんへ


 まずは急にいなくなってごめんなさい。私もこの年で死ぬとは思ってませんでした。まだまだ、恩返しも何もできてない。親不孝者でごめんなさい。


 そして私を育ててくれてありがとう。色々と大変だったと思うけど、私が元気に何事もなく大きくなれたのは二人のおかげです。感謝しても仕切れません。


 お父さん、私がいなくなってからわんわん泣いてばっかりいないですか?あまりお母さんを困らせないでね。でも、きめるときはきめるお父さん、かっこいいと思ってたよ。これからも、お母さんと仲良くね。


 お母さん、いつも私のことを考えて優しいことも厳しいこともざっくばらんに話してくれるところ、大好きだよ。お母さんから教えてもらったことは、もう私の一部で、そう思うとこれからも頑張ろうってなるんだ。お父さんとライオン丸のお世話、頑張ってね。


 あと、私の現状を書きます。信じられないかも知れないけど、私は異世界にいます。魔法も獣人も結構何でもありの世界です。今は家族のような存在の人達と一緒に暮らしています。いろいろ大変なこともあったけど、私は元気です。


 最後に今まで育ててくれてありがとう、大好きだよ。

 行ってきます。二人とも、長生きしてね。



 追伸 ライオン丸にも一緒にいてくれてありがとうって伝えておいてね。





――――――――――――――――――――



 ――凜視点―――



「………、…………バカ娘」


 

 手紙を読んでいた優維の母親は、静かに泣いていた。大泣きするような感じではなく、自然とぽろぽろと落ちてくるような。

 ぽつりとつぶやいた言葉は、愛情のこもった"バカ"だった。

 


「あの子は、今楽しいって?」

「ええ、とっても」

「ならいいわ。でもこれ、目が覚めたら消えちゃうんじゃない?」

「大丈夫!特別仕様なんです!目が覚めたら枕元を見てください!(ムフー)」



 何を隠そうこの手紙は現実世界に持ち込めて、劣化もしない特別仕様なのだ!因みに防水加工もバッチリ!

 ただ、質量制限があるから便箋1枚と封筒だけなんだけどね。



「こっちからも手紙って出せるの?」

「はい、多分この1回きりになるけど」

「それでもいいわ」

「ほいよ、便箋とペン」



 優維の母親に便箋を渡すと、すぐに書き始めた。

 地べたのままだと書きにくいだろうから、机と椅子も出してあげた。

 できるなら早く出せよってツッコまれたあと、お礼を言われた。素直なんだかそうじゃないんだか。


 優維はきっと父親似なんだろうな。

 あ、でもたまにこの人っぽいかも。怒ったり、機嫌悪いときとか。




「書けたよ」

「お、ありがとうございます」

「…………なあ、あんたは、あの子のなんなんだい?」



 優維の?・・・なんだろうね。

 あたしのせいでこっちに連れてきちゃったから関わってたけど、それが全部終わったらどうしたいんだろう?考えてなかった。

 でも、その後もできれば――――――



「とも、だち…………(ボソッ)」

「ん?」

「見守ってるただの精霊かな!」

「………そういうことにしておくよ」



 なんか含みがある返しだな~。



「手紙、必ず優維に届けますね」

「お願いね」

「では、お元気で」

「凜もね。あっ」

「おっ」



 急に何か思い出したかのように、優維の母親は私の腕をつかんだ。



「優維は、もうあんたのこと友達だと思ってるよ」

「———っ!」

「あの子は言わないだろうから、私が代わりに言っとくよ」

「……ははっなんですか、それ」

「親の感。優維のこと、よろしくね」

「任された!」



 優維、貴方のお母さん、凄い人だね。



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