夢の中は四次元ポケット?
「いきなり出て行ってすまんかった………なんじゃ、この空気」
「気にしないでください」
「う、うむ」
「それで、何か思いついたんですか?」
「そうだったの。魔力の問題はこれで解決できると思っての」
テッテレレッテテーテーテー
「まりょくせいぎょそーちー」
「………何ですかその言い方」
「お?ニッポンジンは便利道具を出すときは、このような感じで出すと聞いたが?」
「は~、誰に聞いたんですか?」
「神」
「あのヤロウ」
神様、知識偏ってません?
てか日本のアニメ見てるんだ。
どこぞの猫型ロボットよろしく、精霊王が取り出したのは銀色の腕輪。
なにやら文字が彫られているようだが、私が知らない言語だったので読めなかった。
「ウォッホンッ!これをつければ、使える魔力量が制限されるのだ。称号の効果が出ても、そうそう大きな効果はでないだろう。とりあえず、今は最小にしておる」
「最初はってことは、自分で変えられるってことですか?」
「そうだ。ここにダイヤルがついておってな—————」
「ほうほう」
あー、説明長そう。
とりあえず解決策があって一安心。何とかなって、よかったよかった。
え?お前は何もしてないだろうって?
む、無策だったことは認めるよ?でも、まずは話をしなきゃって思ったんだもん。善は急げってことで。
「——ということだ。だが、魔力制御の訓練は怠るなよ?いつまでも、これに頼るわけにはいかんからの」
「わかっています」
っと、考え事をしていたら説明が終わってた。
「腕輪でずっと制御するわけではないんですね」
「ん、おお。使える魔力を制限しているだけであって、本来の魔力量はそのままだからな。適度に出さんと、魔力酔いを起こす」
「魔力酔い?」
「ようはお酒に酔っ払ったみたいな状態のことよ」
「簡単に言うと腕輪なしで制御できることが、身体にも心にもいいってことじゃよ」
「へえ~」
魔力はたまりすぎるのもよくないらしい。う~ん、魔力量が多いというのも考えものなんだな。
魔力制御に関しては、凜さんならやっちゃうんだろうな。なんだかんだ器用だし。
「あ、それつける前に優維、何か願い事ある?」
「え?」
「いや、さすがにこっちばっかりお願いしてるのは悪いからね。世の中、ギブアンドテイクってね」
「う~ん…………」
いきなり願い事と言われてもな~。
……………あ、あった。けど、できるかな?
「私の元の世界の家族に会いたいです」
「っ………それは、できないんだ。ごめん」
「そう、ですよね…………」
「でっでも、手紙とか言葉なら伝えることはできるよ!」
やっぱり会うことは無理か。
手紙だけでも、お別れができるならちゃんとしたい。色々急だったし。
「じゃあ、手紙書くので便箋と書けるものありますか?」
「ほいほい。あ、でも便箋はこの1枚までね」
すご、すぐ出てきた。やっぱり夢の中だから?
む、しかしこの1枚だけか。かなり搾って書かないと。
え~と、まずは急にいなくなっちゃったからそのことと、後は現状かな。
最後に、うん、これだけは伝えておこう。
――――――――――――――
「書けました!」
「お、じゃあ誰に渡せばいいの?」
「え~と、お母さんで。お父さんは泣いて、話できなさそうだし」
「あはは(汗)じゃあ、届けてくるね」
「どうやって届けるんですか?」
「夢の中を移動して届けるのよ。夢の中でなら、あたし達精霊はどんな人でも姿を見て話すことができるんだ」
「例外はあるがな」
そっか、精霊は本来見えないもの。自然そのものだった。
今普通に話せてるし、見えてるけどこれは夢の中だからか。
「じゃあ、行ってくるね」
「お願いします」
「あ、あとね、この便箋特別仕様なんだ~(ムフー)」
「え、特別仕様?」
「ふっふっふ~、それはね――」
「その話は後じゃ、そろそろ行かんと夜が明けるぞ」
「え、マジ!?じゃあ、行ってきます!」
ガチャッ!バタン!
凜さんは慌ただしく出て行ってしまった。
特別仕様って何なんだろう?帰ってきたら凜さんに聞かねば。