凜さんとこにカチコミじゃあ!(気持ち的には)
「失礼します」
ガチャッ
「やあ、意外と早かったね」
「私ももうちょっとかかると思ってました。まあ、家族と友達が許してくれませんでしたけどね」
「………そう、いい人達に会えたね。さあ、座って」
凜さんは今回、静かに椅子に座っているだけだった。
前回のあれは、張り切った結果らしい。恥ずかしいならやらなきゃよかったのに。
「それで、考えはまとまった?」
「はい。でも、その前に質問があります」
「あたしに答えられることなら」
「単刀直入に聞きます。凜さんは、楔梛様と話すつもりはないんですか?」
「―ッ!………答えはノーだよ。あの子とは話すつもりも、姿を見せるつもりもないよ」
「どうして?」
「あたしはあの子と話す資格がないから。質問はそれだけ?」
一瞬だけ辛そうな表情をした後、真顔でそう言い放った。
見た目は無表情だけど、動揺している雰囲気がする。気持ちが揺れている。
「本当に?」
「え?そうだよ。さあ、「本当に?」…………何を言わせたいの?」
「楔梛様に話したいこと、本当はあるんじゃないですか?」
「……………あるよ。でも今更話したところで何も変わらないよ。
それに、あたしにそんな資格はない」
今度は本当に無表情、感情も全部押し込めてる。
「資格があるとかないとかじゃなくて、本当は話したいんですよね?」
「――ッ!!だから、話す気はないっていってんの!!!」
それは、明らかな苛立ちと少しの困惑を含んだ叫び。
「凜さん、」
「うるさいうるさい!!何も知らないくせに!」
「うん、知らないよ。だって凜さん、何も話してくれないもん」
「だからッ!貴方には関係ない!」
「関係あるよ!!!」
「――ッ!(ビクッ)」
私が怒鳴ると思っていなかったのか、凜さんが少し怯んだ。
関係あるよ。だって私は――――
「私は、楔梛様も凜さんも助けたいから」
「は、はぁッ!?なんで、あたしも!?」
ほら、わかってない。
凜さん、楔梛様の話するときすごく優しい目をしてるけど、それと同時にすごく泣きそうになってるんだよ?
そんな顔されたら、気にするよ。
「凜さん、言ったよね?私の称号なら、楔梛様を助けられるって。それは嘘じゃないよね?」
「……うん、嘘じゃない。今までは結界に入れなかったから、何もできなかった。でも、中に入ることができるなら、後は結界の媒介になっている剣を壊せば、封印が解けるようになってるはず」
あ、やっぱりちゃんと打開策あるんだ。ノープランではないと思っていたけど、ちょっと心配だったんだ。
「だから、楔梛様も助けて、凜さんも助ける」
「……全然関連がないんだけど?」
「うん、そうだね。自分でも脈絡ないなって思ってるよ?」
「…………もうッ意味わかんない」
そう言って、頭を抱えてしまった。
助けたいとは言ったものの、私はノープランだ。
う~ん、まずは話を聞かないことには、始まらないかな!
「凜さん、そこまで楔梛様と話すのを嫌がる理由を教えてくれませんか?」
「………はあー、いいよ、話したげる」
渋々といった感じで話してくれた。
「建国時のことはクロから聞いた?」
「はい、一応。でも、あれ凜さん悪くなくないですか?」
「いいえ、きっかけを作ったのは変わらないよ。
あの時の国王、ウェンカ王を傷つけたのはあたしだから。でも、彼はやり過ぎた。国民が反旗を翻すのは、必然だった。国を制圧したことには、後悔はないよ。
まあ、ここまで怨まれるとは思ってなかったけどね」
こんなに何百年も怨まれるのは予想外だったようだ。
でもやるなら、凜さんや初代王が生きているときにやればよかったのに。
いや、起こらないのが一番いいんだけど、なんで今だったんだろう?
「そんな元凶のあたしが、今更どの面して話せって言うのよ………」
「凜さん………」
「これでも、まだちゃんと話せって言うの?」
最後は拗ねた感じだったけど、さっきより表情はすっきりしていた。
「はい」
「優維も頑固だね~。じゃあ、もう一個の理由も話すね」
あれ?楔梛様の一つだけじゃなかったんだ。
「ここから出たら、あたしの我が儘姫の能力が制御できないから」
「ふえ?」
どゆこと?