私は何者?
今年最後の投稿になります。
皆様、よいお年を!
話さなきゃ。
話さなきゃ。
話さなきゃ。
ボフッ
話せなかった―――ッ!!!
今?なかなか切り出せなくて、布団にダイブしております!
どうせ会話のタイミングが計れない人見知りですよ!!
ヘタレ?ふははは、なんとでも言うがいい!!
「はあ……………う~~~」
でも、このまま眠れる気がしない。どうしたもんか。
だれか、1人だけなら話せるかな。
ちょっとリビングまで行ってみよう。
あ、明かりが漏れている。
誰かまだ起きてるみたいだ。
クロさんだ。
すー、はー。
覚悟を決めろ、神無呂優維。
「……クロさん」
「おう、どうした?眠れないのか?」
「まあ、そんなところです」
「…………どれ、眠れるようにハーブティーでも入れてやろう」
「あ、ありがとうございます」
クロさんは、暇なときにはよく本を読んでいる。普段はガテン系な感じだが、意外と知的だ。
セージ君も「お父さんの部屋には、難しい本がたくさんあるんだよ!」って、自慢していた。
確かに今読んでいる本も、植物事典のようなものだった。
「ほれ、ミルクティーにしてみたぞ」
「わあ~、ありがとうございます」
「おう」
ほあ~、おいしい。
本当気配り上手だな。ちょっと緊張しすぎていた気がする。
「クロさん、相談したいことがあるんですが、いいですか?」
「おう」
「突拍子もない話なんですけど、最後まで聞いてもらえますか?」
「いいぞ」
クロさんが、少し前のめりになって話を聞く体勢になった。
「私、異世界から来たって言いましたよね」
「おう、異世界人はそこまで珍しいものじゃないしな」
「はい。そしてこの前、私をこの世界に呼んだ張本人から話を聞きました」
「………迷い込んだわけではなかったのか」
「それで……元の世界の、私は………」
どうしてもためらってしまう。でも、言わないといけない気がした。
「元の世界の私は、死んでいます」
「————ッ!」
「元の世界には帰れないんです。もう家族に会えない。友達にも会えない。あっちでは死んでるから。
この体はこっちの神様や精霊が作ったものだと言ってました。神無呂優維は魂だけの存在なんです。でも記憶はあっても本当に自分だって言う確証がない。
不安なんです。今も本当に生きているのか死んでいるのかわからない!
私は何者なんですかッ!?」
こんなことまで言うつもりはなかったのに。しゃべり出したら止まらなかった。
最後なんて悲鳴みたいだった。完全な八つ当たりだ。
クロさんの顔を見ることができない。
「どうしてそう思うんだ?」
「………え?」
「オレたちは、元の世界の神無呂優維を知らない。優維ちゃんが優維ちゃんじゃないということは、誰も証明できない」
それはもっともだ。なんでこんなことまで言っちゃったんだろう。
「でも、ここにいるのは悩んで、泣いて、笑って、自分で行動している一人の人間だ。神無呂優維かどうかは、すまないがわからない。だが、今を生きているということは事実だろう?」
「ッでも!!」
「優維が自分を否定するなら、オレが肯定しよう。
君は今、ここで生きている」
なんでそこまで言ってくれるの?
たまたま助けただけの人に。
ポカッ
「いって。ロジー、なんで今叩くんだ?」
「そこは、オレ"たち"でしょ?
ごめんね、優維。盗み聞きするつもりはなかったんだけど、セージがおしっこ行きたいって「ちょっと待って!」何さ」
「ボク一人でおしっこ行けるよ!そこはお水飲みたいってことにしようって言ってたじゃん!」
「セージ?」
「あ!だって、夜に二人の声が聞こえたら何話してるのか気になるじゃん!お姉ちゃん元気なかったから心配だったんだもん!」
「ありゃま、全部言っちゃったね」
「ああ!ガウ~」
ロジーさんとセージ君が絶妙なタイミングで入ってきた。
二人の話しぶりから、ほとんど聞かれてたんだ。
それなのに通常運転だ。
「っぷ、はは!」
「やっとちゃんと笑ったね。最近、ずっと無理して笑ってたろ?」
「あ………」
「やっぱり。リコちゃんもそれに気づいてて、あんなこといったんだよ」
「あんたが神無呂優維だろうがなんだろうが関係ないさ。今、ここにいるのはただの優維、それでいいんじゃないかい?」
「うん。だれがなんと言おうと、ユイ姉はユイ姉だよ」
「ありがとう、ございます」
こんなに、誰かに自分を肯定されたことは初めてだ。
そっか。私は私、でいいんだ、いていいんだ。
「ウハハ!優維の居場所はここにあるからな。この機会にオレのこと、お父さんって呼んでもいいんだぞ?」
「うえ!?それはまだちょっと……」
「そうだよ。まずは、敬語をなくすことからさね」
「えっと………?」
「そうだな。これからオレ達に敬語使ったら、ペナルティーな」
「えええええ!?セージ君!!」
「ガンバレ、ユイ姉!」
セージ君も助けてくれない!
でも、こういうの家族、みたいでいいな。