ワタシダケユウレイ?
考えれば考えるほど、気分が沈んでくる。
凜さんと話をしてから、何をしててもずっと上の空だ。
セージ君とクロさんと魔法の練習をしていても、ロジーさんのご飯を食べていても、リコちゃんと買い物しててもぼーっとするときがある。
しまいには、リコちゃんに「あんた頭大丈夫?」って言われる始末。リコちゃん辛辣!
それくらい上の空の時が多い。
「お姉ちゃん、最近元気ないね。大丈夫?」
「そうよ。あんたがそんなんだと、こっちまで調子狂うんだけど?」
「あ、うん。大したことじゃないから、大丈夫」
セージ君とリコちゃんが困った顔を見合わせた。
「………はあ、今日はうち帰ってゆっくりしようかしら?」
「うん、そうしよっか。お姉ちゃんもそうしよ?」
「ごめんね」
「別に。じゃあ、またね」
2人に滅茶苦茶気を遣われてしまった。
家に帰ってからも、「ボク、お母さんのお手伝いしてくるから、お姉ちゃんはゆっくりしてて」と言われてしまった。
うう~、なんてできた子達なんだ!後でお礼をしないと。
1人になって考えてみた。
まず、自分がなぜここに来たのかはわかった。そして、自分がもう元の世界には戻れないことも。
理解はしても、納得はできなかった。まあ、転生ものではよくあるし、かくいう私も好きでよく読んでいた。なんであんなにすぐに死んだことを受け入れられるのか、そこはお話だからってことで納得していた。
実際に同じ立場になって、そう思えるかは別だった。
だって、もう家族にも友達にも会えないんだよ?すぐに納得できるわけないじゃん。お別れもちゃんと済ませられないなんて。
本当に生きているのか、死んでいるのかもわからない。
自分が元の世界で死んだことは一旦おいておこう。またドツボにはまって抜け出せなくなってしまう。
凜さんは、楔梛様を助けてほしいからここに呼んだといっていた。
私にそんなたいそうなことができるのか?
この称号があればできるみたいなことを言ってたけど、本当に?
逃げるだけに特価していそうな、こんな称号が役に立つとは思えなかった。
だけど、誘拐犯から逃げることができたのはこの称号があったから。
でなければきっと、また………。
そう思ったら、なんかできる気はしてきた。うん、なんかできそうな気がしてきた。根拠はないけど、ただの勘だ。
すこしだけ気持ちは軽くなったが、まだ気分は晴れない。
コンコンッ
「お姉ちゃん、ご飯だよ?」
「うん、今行くね」
控えめなノックと共に、セージ君が控えめに顔をのぞかせた。
相変わらず、熊耳がキュートですね。最近はお顔もふもふの状態が通常化しているので、大変癒やされます。
因みにリコちゃんはあんまりもふもふ状態になってくれない。ちくしょうめ。
え、見る目が変質者っぽいからだって?失礼な、ただ可愛いものを愛でたいだけだ。
「おう、きたな。じゃあ、食べるか。いただきます」
「「「いただきます」」」
今日の晩ご飯は、野菜たっぷりのスープに魔ウサギの甘辛煮、ホウレンソウのパン、デザートにリンゴだった。
そういえば、ここに来て皆で最初の晩ご飯のメニューに似てるな。
ここに来て、もう2ヶ月くらいにはなるのか。毎日色んなことがあって、長いような短いような。
「「「ごちそうさまでした」」」
「お粗末様。今日は優維もよく食べたね」
「え?」
「最近、食べる量が少なかったから心配してたんだよ。だから、今日は優維と一緒に、初めて食べた晩の献立と同じものにしたんだよ」
「そう、だったんですね………」
「ちょっとは元気になったかい?」
「はい」
まだ気持ちの整理はついてないけど、話さなきゃ、だよね。
理解はできても、納得できないことってありますよね。