目を開けたらもふもふパラダイス
暖かい、とうとう本当に死んだか。最後にあんな幻覚を見るなんて、相当限界だったんだな。
今もこのお布団の中で・・・オフトゥン?あれ、寝かされてる?
てか、腕とかに包帯巻いてある。手当されてる。あれ、じゃあ生きてる?アイムアライブ?
「あ、目が覚めた?痛くない?今、お母さん呼んでくるね!おかーさーん、お姉ちゃん起きたー!」
そう言って、とてとてと歩く後ろ姿を見送った。てか、熊耳とちょこんと熊特有の尻尾がついてたな、あの子。
うん、まだ寝ぼけてるのかもしれない。もう1度寝ようか。
「あんた、生死の境さまよってやっと起きたってのに、二度寝するのかい?意外と図太い子だね」
「おはようございます!!」
寝起きで声を出したからか、すごくむせた。おばちゃんがやれやれといった感じで、水を持ってきてくれた。
「急に大きい声出すから、ほらお水、飲めるかい?」
「ゲホッ……あ゛じがどうござい゛ま゛ず……」
ふう、ちょっと落ち着いた。改めてお礼を言おうと顔を上げ、おばちゃんをみた。
あ、普通の人だ、そして子供にはやっぱり白い熊耳がついてる。あれか、今はやりの異世界転生ってやつか。うーん、でも現世で死んだ感じはしないんだよな~。
「おーい、お姉ちゃんまだ眠い?」
「頭がぼーっとするのも無理ないよ。もう3日も寝てたんだから」
「はい!?3日!?」
「そうだよ。うちの旦那が慌てて帰ってきたと思ったら、あんた抱えてるし、凍傷一歩手前だし。ほんとあの時はびっくりしたよ」
「……とりあえず、助けていただきありがとうございます」
「ほんと生きててよかったよ。あたしはロジー、でこの子はセージ、あんたを助けたのがうちの旦那のクロだよ」
「あ、私は神無呂優維です」
「優維ね、よろしく」
「よろしくー、ユイお姉ちゃん!」
その後、私が寝ていたときの話を聞いた。見つかったときはもうすでに低体温症になっていて、そうとうやばい状態だったようです。よく生きてたな~私。んで、ぬるいお湯に入れられて、手当てされて今に至ると。
「あ、そうそう。今手は痛み止めが効いてると思うけど、水ぶくれになってるから、しばらくは痛みが出るよ。鳥婆がいればすぐ治してあげられるんだけど、あいにく留守でね」
「そうなんですか……それでここは(グウ~)…………」
「……そうね!ずっと寝てたからお腹すいてたよね、あらやだうっかりしてたわ」
うふふと言う感じでロジーおばさんが奥に行ってしまった。
恥ずかしい!いくら生理現象でも会話中になるのはすごく恥ずかしい。
ほら、セージ君が生温かい目で見てくる。何も言わないけど、絶対あきれてるよ、これ!でも、お腹すいたのは事実だしね!しょうがないね!
ポロッ
「っ!?お姉ちゃん、どうしたの!?どっか痛いの!?」
「え、いや、痛くはないよ?」
「じゃあ、なんで泣いてるの?」
え、じゃあこれ涙?なんでだろ、なんで泣いてるんだろう?気がついて止めようとするけど、全然止まらない。なんで、なんでと頭も混乱している。セージ君もすごくオロオロしてる。大丈夫だよって言ってあげたいけど、何でか嗚咽しか出ない。
「怖かったよね、あんたは生きてるよ。大丈夫、心配しなくていいよ。全部吐き出しちゃいな」
「ひっ…ぐっ…グズッ……うわあああぁぁぁぁぁぁぁん!」
いつの間にか戻ってきていたロジーおばさんに抱きしめられ、やっと実感した。そっか、怖かったんだ、そりゃそうだ、怖くないわけがなかった。知らないところに来て、最初から死にかけて、でも生きてて。お腹が鳴ったことで生きてる実感が強くなった。死にかけたことが一番怖かった、あのまま死んでいたかと思うと怖かった。
そのまま久々に声を上げて泣いた。抱きしめられたままポンポンと背中をたたくので、さらに泣けてきた。いつの間にかセージ君も手を握ってくれていた。その温かさで、また泣いた。
二人とも私が落ち着くまで、ずっとそのままいてくれた。
理解はしてても、実感するのって時間かかりますよね。