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称号って結局よくわからない。


 いや、いやいや、死んでるの?私。

 確かにここに来る前の記憶、コンビニ帰りの記憶しかないけど!どうやって死んだん?!てか、本当に死んだん?!



「えっと~、大丈夫?」

「だいじょばないです」

「だよね。順を追って説明するね」


 凜さん、冷静!

 とりあえず、話を聞こうじゃないか。



「まず、私が貴方を呼んだのは私の孫、楔梛を助けてもらいたかったからなの」

「孫?」

「うん。貴方の称号”逃げ姫”ならそれができると思ったの」

「自分の称号、初めて知った………」

「そっか、称号って自分じゃわからないもんね。これについては後で説明するね」



 称号についてはクロさんからちょっとだけ聞いていた。簡単に言うと、その人の職業や得意なこと、性格でその人の称号、スキルみたいなものになるんだと。

 でも、逃げ姫って………かっこ悪い。



「それで、楔梛を助けることができそうな人を探した。ようやっと見つけたと思ったら、貴方の頭に植木鉢が落ちてきた。当たり所が悪かったのか、即死だったわ」

「そんな間抜けな最後……………ナンテコッタイ!」

「人間、何で死ぬかなんてわからないよ。歴史上にはリクガメを頭に落とされたり、笑いすぎで亡くなった人もいるからね」

「エ~」



 そんなんで元の世界の私死んだの?

 死んでも死にきれねえよ!マジで!

 あれ?じゃあ、これって異世界転生ってこと?

 でも、姿は元の世界の私だし、ありゃ?どういうことだ。



「これはまずいって思ってたら、すぐに魂がほわ~って出てきてね。慌てて捕まえてとりあえずこの空間にもってきた」

「魂だけですか?」

「うん、まだ一体になっていたら持ってこれたんだけどね。制約があって、体は持ってくることができなかったんだ。ごめんなさい」

「そう、ですか…………」



 凜さんはそういうとうつむいてしまった。一瞬咎めようと思ったが、その姿を見たら言えなかった。



「それでね、魂のままだといずれ消えてしまうから、器を作らなきゃって精霊王と一応神様にも相談した」

「この世界の誰かに入れるとかはしなかったんですか?」

「転生ものだとありがちだよね。でも、それをしちゃうとその魂が本来持っている称号の力が弱まったり、消えちゃったりするんだ。そうならないためにも、神無呂優維は神無呂優維として転移させなくちゃならない。

 話を戻すね。精霊王と神様に直談判したかいがあって、生前と全く同じ体を作ることができた。でも、神様が生命は作れるが成長はさせられないって。でも、小さいままじゃ可哀想だし、孫を助けるまで時間もかかると思った。

 そこで、体を成長させるためにあたしの魔力を使ったけど、10歳までしか成長させることができなかった。もう魂の時間も限られてたから、その体にぶち込んで転移させた」

「なんであんな何もない場所に………?」

「ごめん!疲れてて座標間違った(てへぺろ)」

「オイ」

「まあ、優維は称号のおかげでちょっとやそっとじゃ死なないし、あたしの力もかかってたからね。結果的に大丈夫だったっしょ?」

「走馬灯みたいなのは見ましたけどね」

「ごめん(シュン)」



 死んでからも死ぬ思いをするとは思わなかったよ。

 でも、"逃げ姫"の称号のためになぜそこまでするのかわからなかった。



「なんで、あたしが逃げ姫にこだわったかわからないって顔してるね」

「あ、はい。逃げたりするのは昔から得意でしたけど、そんないいこととは思ってないですし」

「だよね~。まず異世界人の称号について話そうか。この世界で称号は、要はスキルは職業とか性格に由来するっていうのは知ってる?」

「はい」

「おっけ。まず異世界人は元の世界での職業とか偉業、性格とかがかなり誇張されて称号になるんだ。実際にいた人だと、消防士なら救命の英傑、底抜けに明るかった人は太陽の男とか、チョービビリだった人はビビリ王とかね。

 それでね、称号にはその称号に応じた魔法が強化されることが多いの。救命の英傑は水や風魔法が強くなる、太陽の男は光魔法が強くなるみたいにね。ただ、姫や王がついた称号は魔法以外にもバフがつくんだ。でも、実際詳しくはわかんなくてね~」

「え~」


 

 結局はわかんないの?わかんないのに賭けたの?



「優維はさ、ドッヂボールは得意?」

「藪から棒になんですか?」

「いいから」

「得意、ではないですね。ただ、いつも最後まで残るのであんまりやりたくはなかったですね」



 あのドッヂボールで最後まで残る気まずさよ。ボール取ったり投げたりできないから、相手から一方的に標的にされる恐怖よ。

 外野の人からボールまわせって言われるけど、できたらやってるわ!って。あの時は、時間制限があってよかったよ。



「そう、避けるのが上手いよね。それ以外に嫌な人と関わりが極端に少なかったり、何かあっても自分は無事だったことない?」

「あ~ありましたね。なぜか、嫌だと思った人とは一度もクラス一緒にならなかったり、インフルが流行ってクラス全員がかかっても私だけかからなかったり」

「ほうほう。嫌な人はなんで嫌だってわかった?」

「いや、なんとなく………?」



 本当になんとなくだ。でも、いじめっ子とか悪い人とかそういうのは、わかる人はわかるんじゃなかろうか?雰囲気とか言動とかで。

 テレビを見てても、この人悪いことしそうだなって思うと必ず逮捕されたり、炎上してたりほぼ当たっていた。

 てか、この話何が関係あるの?



「なんとなくでもそれは歴とした自分の能力だよ」

「ブラック企業に就職はしましたけどね」

「あ~、それはご愁傷様。そのときって、就活でボロボロじゃなかった?」

「確かに、何社も落ちてて精神的にも体力的にも限界でしたね」

「それが原因だね。魔法と同じで、称号も発動には精神も体力も残ってる状態じゃないと力が発揮されないんだ。どちらかと言えば、精神の影響が大きいけどね」



 なるほど、心が折れてなければって感じか。



「そ・れ・で、優維の逃げ姫の能力はね、"必ず逃げられる"能力」

「……………ん~?」

「ピンとこないよね~。この世界に来てから、人に対して何か変わったって感じたことはない?」

「ん~……………あ、なんか人から色が見えるようになったかもしれないです」

「どんな色?」

「クロさんやセージ君は白、私をさらった人は黒でした」

「予想だけど、悪い人は黒く見えるんじゃないかな」



 そうかもしれない。黒く見えたのは今のところそいつらだけだった。

 あとは、あの結界の中に感じたもの。



「あ、あと逃げるときに滅茶苦茶高く跳んだんですけど、これも関係ありますか?」

「それ、身体強化魔法にバフかかってるね。ちょっと今鑑定してもいい?」

「いいですけど」



 凜さんの目がまっすぐに私を見てくる。ヒミちゃんの時と同じ感覚だ。

 


「……………本当にこの前来たばっかり?」

「貴方がこの世界に連れてきたのに?」

「そ、そうだよね。それにしてはレベルが高すぎるんだよ。今、逃げ姫のレベルは3だよ」

「それって高いんですか?」

「レベルとしては高いわけじゃない。ただ称号のレベルは、早くても10年かかって1上がるかどうかくらいなんだ。かかる人は一生かかっても、レベルが上がらないこともある」

「はじめから高かったとか?」

「それはあり得ない。生まれたときから才能があったとしても、称号だけは例外なくレベル1からなんだ。それを来て1ヶ月弱で1上がるのは、あり得ないくらい早い」

「ほえ~」



 なんだか、あんまりピンとこないけどあり得ないことらしい。そんなこと言われても、自分でもわかんないよ。



「……………これは仮説なんだけど、逃げるときに魔法を使ったからかも」

「えっと、どういうことですか?」

「称号の経験値は、称号に関係する魔法や技術を使ったときに上がるんだ。優維は逃げるときに、無意識で魔法を使ったよね。その時に滅茶苦茶な経験値が入ったんだろうね」

「え~っと、つまりは逃げれば逃げるほどレベルが上がるってこと、ですか?」

「そうだね、正確には逃げるときに魔法を使うとべらぼうに強化されるってことだね」



 逃げれば、逃げるほど強化される……………なんつー称号だい!!!

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