結界の中身はなんじゃろな?
「お、お姉ちゃん平気なの?」
「うん、なんか水触ってるみたいで全然痛くもなんともないよ」
「ホホウ、優維ちゃんや、そのまま結界の中に入れそうかの?」
「長?!」
「え~と………やってみます」
「優維?!」
ディグ君がめっちゃ騒いでるけど、無視しよう。後で説教は聞くので今はご勘弁を。
さて、表面は水みたいだけどその奥はちょっとドロッとしてる?表現するならおもちゃのスライムみたい。でも、そこを抜けたら中に入れそう。もうちょっと奥まで———————
ゾクッ
「ッ?!」
「!どうした!」
「お姉ちゃん!」
「ムッ」
スライムみたいな壁を抜けた途端、嫌な感覚がして反射的に手を引っ込めた。一瞬だったけど、鋭い悪意を向けられた感じ、まだ胸がざわざわしてる。ひどく冷たい感じもしたけど、あれは王様のじゃない。他の誰かのだ。根拠はないけど、私の直感がそう告げている。
「ごめんなさい。中には入れないみたいです」
「フム、そうか。無理を言ってすまんかったの」
「いえ………」
「優維!よくわからないものは勝手に触らない!ディグ兄ちゃんと約束!」
「!ボクとも!勝手な行動しないって約束して?」
「う、うん。ごめんなさい、約束します」
「うん!」
「よし!」
「わわっディグ君、いつもより力強いよ!」
「ははっ勝手なことしたからだよ。これでチャラな!」
ディグ君にガシガシと頭を撫でられた。もっと怒られるかと思ったけど、これでチャラにしてくれるらしい。これだから、ちびっ子皆に兄ちゃんって呼ばれるんだろうな。私も今はそのちびっ子の一員だけど。
「ぶわっくしょい!」
「うわ!カルヴァロさん寒い?」
「ずずっうん、ごめんね。王の魔力が漏れてるせいか、この部屋だけ異様に寒いんだよね」
「ああ~、王様の得意魔法って氷だっけ?」
「そうじゃの。楔梛様は魔法が得意での、魔力量も膨大じゃったが、その分魔力のコントロールも抜群じゃった………」
確かに、さっきのお墓の通路も寒かったけど、ここはさらに寒い。壁は全部凍っていてキラキラしている。日の光が当たっているはずなのに、全く溶ける気配がない。まるで氷の城だ。
「でも、封印されてから制御が利かなくなったのか、魔力が外部に漏れるようになったんだ。そのせいなのか、ここら一帯の雪の量が増えたんだよ。もともと雪が多い地域だったけど、さらに増えたって」
「まわりに影響与えるくらいの魔力?!」
「そうだね、それくらい魔力量が多かったんだ。コントロールできるまではすごく苦労してたからね」
周りに影響与える位って、いったいどんな精神力と体力してんだって話だよ。異次元だよ。
「くしゅっくしゅっ」
「お姉ちゃんも寒い?」
「うん、ちょっとね」
「そろそろ戻るか。風邪引いちまう」
「わしも用事は済んだしの。老体にこの寒さはこたえるわい」
「絶対ぼくらより長の方が寒さに強いよね」
「ホッホッホッ」
あ、誤魔化した。この中で一番寒さ耐性あるのは白熊のセージ君だけど、次に強いのは梟のココ爺だろうな。パンダとか土竜ってあんまり寒さに強いイメージないし。
あの後、ここから一番近いココ爺の家でお茶をしに戻ることになった。カルヴァロさんはまだ用事があるらしく、入り口で別れた。
「あ~、寒かった~」
「ホッホッ今茶の準備をするからの。先に座って待ってってけろ」
「「は~い」」
「おれ手伝います」
「では、そこの棚から茶菓子を取って並べてくれるかの?」
ココ爺がお茶を、ディグ君がクッキーをお皿に並べていた。クッキーは四角い白黒がちらっと見えた。あの市松模様のクッキーって定番だけどおいしいよね。
「今日のお茶はショウバをブレンドしたハーブティーじゃ」
「ショウバ?」
「ちょっと辛いけど、食べた後に体がぽかぽかする葉っぱだよ」
「刻んで料理に使うことが多いな、あとは独特の匂いがするな」
「へえ~」
ショウガみたいなものかな?なんかお茶の匂いもそれっぽい。ジンジャーティーって感じかな?
おお!飲んだらちょっとピリッとするけど、すごく飲みやすい。それに体の芯からぽかぽかしてくる感じ。
「「はあ~」」
「っぷ、お前らおんなじ顔してるぞ?」
「だって、ね~?」
「ほっとするもんね~?」
「「ね~」」
「ホッホッホッ」
本当にほっとする味だった。胸のざわざわがやっと治まった気がする。
それにしても、結界に手を入れたときに感じた悪意は何だったろう。それに、誰に向けてのものだったんだろう。無差別に向けているものじゃなければいいけど。
ユニーク1000人超えました!ありがとうございます。
亀更新ですが、これからもよろしくお願いします。