結界ってすごいね。てか、汎用性高すぎん?
ルビ入れ忘れたので修正しました、すみません。
「おーい、優維ちゃんや。聞いてらが?」
「うぇ?!すいません、何か話してました?」
「わし、かなちぃ」
「お姉ちゃんぼーっとしてたね」
王様にみとれていたら、なんか話が進んでいたらしい。
ごめんなさい、全く話聞いてませんでした。
でもねココ爺、かなちいってちょっと無理があるよ。皆スルーしてるし。リコちゃんとかならかわいいと思うけど……………うん、絶対やってくれないな。ツン全開で返されそう。だがしかし、可愛いは正義!いつか頼んでみよう。
「すいません、何の話してました?」
「むう、優維ちゃんもスルー。わし、かなちぃ」
「そういうのいいんで、もう1回話してあげてください」
「ディグ、わしに辛辣じゃない?……ゴホンッではもう1回、王の話じゃ」
ディグ君内心イラッとしてるな。気持ちはわかるが、ご老人はもう少しいたわってあげて。
「この獣人の名は楔梛様、その王国の3代目の王じゃった。その王国は、今はもう人族が王になっているがな」
「その王様がなんでここに……」
「うむ、その人族は過去の因縁から王国に攻めてきて、そして王を封印した。もう50年も前のことじゃ。殺すのではなく、なぜ封印したのかは未だにわからんがの」
「たとえ理由はわかっても、理解はしたくないよ。やったことは動物と同じだもん。ボクたちは言葉も話せるし、心もある。それなのにこんなことするなんて、ボクには一生わからないよ」
いつもニコニコしているカルヴァロさんが、哀しそうだけどちょっと怒りが混じったなんとも言えない顔をしていた。温厚そうなカルヴァロさんがこんな表情をするくらいだ、それにこの墓の数。相当むごいことがあったのだろう。
もう一度、王様の姿を見る。腕についた包帯には、乾いた血がついていた。必死で戦ったのだろう。そして、50年という歳月が過ぎた今でも包帯を巻かれたまま、きっと当時の姿のまま。
「封印を解こうとは「思ったよ」そう、ですよね」
「でも、何をやってもだめだった。解析もした。そしたら、この封印は初代王妃の結界をアレンジしたものだったんだ。驚いたと同時に、なんて皮肉だと思ったよ。だってそうでしょ?獣人の未来を作った人の魔法が、こんな形で使われたなんて。同時に、自分たちから逃げた人が作った魔法を基礎にしなきゃできなかったなんて」
「それほどまでに初代王妃の結界は強力。わしらの町を覆っている結界も、初代王妃が作ってくれたもの」
「その、初代王妃はどんな人だったんですか?」
初代王妃は異世界人だったと聞いている。彼女は私とは違って、優秀な人だったんだろう。あ、もふもふ好きは同じか。
「ふむ、初代王妃の名はリン、別名"わがまま姫"と呼ばれておった」
「わ、わがまま姫?」
な、なんと!わがままだったのか!パンがなければ、ケーキを食べればいいじゃない的な。ん?じゃあなんでこんな皆に慕われてるの?
「称号が"わがまま姫"じゃったんじゃよ。彼女は努力家でいつも皆を引っ張ってくれる。そして、どんなことがあっても一度決めたことは最後までやり遂げる。そんな姿を国民皆が知っていた。わしらは彼女を"理不尽"だと思ったことはない。また、彼女自身も"わがまま姫"は自分にとって最高の褒め言葉だと常々言っておった」
「……かっこいい人だったんですね」
「本人はカワイイ系じゃと言っておったがの」
"わがまま"にもいろいろあるんだな。そういえば漢字で書くと、我が儘か。我の儘に、自分の思い通りって意味があるけどそれって一番難しいことだと思う。どうしても自分が想像したものと現実とでは差が出てしまう。それで上手くいかなくて癇癪を起こしてしまって人を困らせてそのままでは、ただのわがままになってしまう。でも、リンさんはその部分を努力でカバーしたんだろう。
すごいな~、憧れはするけど私には絶対できないな。その前に逃げてしまう。
「話がそれたのう。そのリン様が作った魔法が結界魔法。従来の障壁とは違い、魔法も防ぎ、その他諸々の驚異からも守ってくれる」
「その他諸々ってずいぶん曖昧ですね」
「だって本人も詳しくわかんないって言ってたらしいしね。未だに全部解明できてない魔法の1つなんだよ」
「本人はこの国を守りたいって思ったら、なんかぶわーっとなってできたって言っておった。その後に結界の作り方と維持の仕方はわかったんじゃが、効果に関しては色々試した結果じゃ」
おっと、まさかの感覚だけで魔法作っちゃった人だったよ!天才だった!努力云々のくだり何だったのさ!さっきの関心を返せ!
「努力はしておったよ?最初から魔法ができたわけではなかったからの。何年も魔法を勉強して、魔力を高めてやっとできたものじゃかからな。この国を守りたいって言うのは、ずっと思っておったじゃろうからな。本人からその言葉を聞いたのは、結界ができたときじゃったと言う話じゃ」
「すみませんでした」
「ホッホッホッ。リン様は初見では誤解されやすかったからのう。まあ、本人がわざとそうした可能性もあるがの」
ちゃんと努力家でした!努力の天才でした!
「長、話またそれてますよ」
「すまんの、リン様の話をするのは楽しくてな……はて、何の話じゃったか?」
「ココ爺、ボケるのはまだ早いよ。王様の封印の話でしょ?」
「わしゃまだまだ現役じゃ!そうじゃったの。それで、この封印はリン様の結界をアレンジしたもの、通常は魔力が切れれば解除されるんじゃがもう50年もこのままじゃ。楔梛様も目覚める気配がない。強制解除もできるはずなんじゃが、何をやってもだめじゃった」
「結界は解除には術者の魔力切れの他に、外から強い衝撃を与える、術式を壊すが一般的だね。1つめの術者云々に関しては人だし、もう死んでいるだろうから除外。2つめのやつは、一番強いリーやクロの攻撃でもだめだった。最後に術式を壊すだけど、これは結界の中にある剣を壊せればいいんだけれど……」
「今まで誰もこの結界の中に入れなかったんじゃ。獣人族も魔族も、人族でも無理じゃった」
「……それじゃあ、王様はずっとこのままなの?」
「そんなことは絶対にさせない。必ず解いてみせるよ」
そんなに強い封印だなんて、どうしてこんなことをしたんだろう。それだけ怨んでたのかな?人族の寿命はこの世界でも最長で100年くらい。何代にも渡ってこの怨みを受け継いだのか。そんなもの受け継いだところで何の意味もないのに。
そういえばこの結界って触るとどんな感じがするんだろ。ここに入ってくる前に結界を通ったけど、全然痛くもなんともなかったし触るだけなら大丈夫なんじゃないかな。
よし、レッツトライ!
ピチャッ
「え、水?」
「うわあああああ!何してんだ、お前!」
「待って、ディグ!見てよ!優維ちゃん吹っ飛ばされてないし、電撃も見えない!」
「あ?!ああああ、本当だ!嘘だろ!」
「ホッホッホッ!」
「え?え?」
え、あれ、なんかディグ君とカルヴァロさんめっちゃ驚いてる?!てか、カルヴァロさん物騒なこと言ってなかった?!吹っ飛ばされるとか、電撃とか!
好奇心には勝てなかったんです!なんか、すんません!