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ようやく一段落

「よし、診察は終わりよ~。大丈夫だとは思うけど、念のためあと2日は病院で安静ね」

「は~い」

「入ってきていいわよ~」

「優維ちゃん!!!よかったよ~!!!」

「うわわ!ク、クロさん?!」


 急にクロさんが入ってきたかと思ったら、思いっきり抱きつかれた。え?え?何事?!



「オレが着いていながらごべんなー!」

「そ、そんなクロさんのせいじゃないですよ!ほら、ちゃんと生きてますし!」

「そうだよ、バカ!泣きながら抱きつくんじゃないよ、さっさと離れな!」


 ロジーさんがすぐ来て、ベリッと言う感じでクロさんを剥がしてくれた。あの巨体をいとも簡単に、ロジーさんすげえ!


「でも、起きてよかったよ。今回ばかりは肝が冷えたさね」

「ご迷惑を「そんなことないさ」え?」

「おかえり」

「あ、た、ただいま!」

「「おかえり!」」


 ロジーさんが優しく頭を撫でてくれながら、セージ君が泣きながら抱きついてきながら、クロさんはニカッと笑いながら。

 ああ、帰って来たんだ、帰ってこれてよかった。安心したら涙が出てきた。最初の時のように泣いてしまった。あの時と違ったことと言えば、リコちゃんもそばにいて私の背中を尻尾をぽんぽんしてくれていたこと。

 その後は泣き疲れてしまったのか、また眠ってしまった。あの後、クロさん達はスルク先生から今の状態を聞いて、ロジーさんとクロさんが交代でいてくれた。





「抜糸した後も問題なし。これなら退院しても大丈夫よ~」

「やったー!」

「た・だ・し、まだ無理はしないこと。いくら治りが早いと言っても油断はできないわ~、1ヶ月は安静にね」

「は~い」


 誰かがお見舞いに来てくれるから退屈はしなかったけど、リハビリとトイレ以外で動き回れないのと外に出られないのが辛かった。やっぱり元気が一番、元気があれば何でもできる!



「今日退院なのね、おめでとう」

「あ、リコちゃん、うん、そうなんだ~」

「これ、退院祝い」

「え?!あ、ありがとう!これは、ジャム?」

「ブドウとリンゴよ。2種類作ったの」

「わあ~、おいしそう!」

「本当は新鮮なの渡そうと思ったけど、あんたいつ起きるかわかんなかったし……こ、今度一緒に行ってあげてもいいけど?」

「え、いいの?!あ、でも……」

「クロのおじさんとパパとか、カルヴァロさんとかも連れて行くわよ。子供だけで行くのは危険だからね」


 リコちゃんも、もうあんな目に遭うのは嫌だろうしね。その後、他愛のない話をした。お見舞いに何回も来てくれたし、前より私に対する雰囲気が柔らかくなった気がする。



「……パパ、いつまでそこにいるの?」

「え、あ、いや、あっしは———」

「何か言いたいことあるんでしょ?」


 ずっと視界の端に見えていた狐さんはリコちゃんのお父さんだったみたいだ。ていうかなんで隠れてるんだ?

 私に言いたいことって何だろう?はっ!まさか私のせいで、リコちゃんが巻き込まれたと思われてる?!ち、ちぎなげされる?!



「……リコの父のシューマでさぁ。えっとユイちゃん、でいいでやすか?」

「あ、はい」

「話はリコから全部聞きやした。それで、その………………今回はリコを助けてくれて、ありがとうございやした!」

「うえ?!あ、はい、どういたしまして?!」

「2人して大声出さないでよ、ここ病院」

「「失礼しました(しやした)」」


 びっくりした~。いきなりお礼言われるとは思ってなかった。そっか、リコちゃんがどこまで説明したかはわからないけど、悪いようには伝わってはいないらしい。


「アタシのこと何だと思ってるのよ」

「え、口に出てた?」

「顔、あとカマかけた。まあ、アタシの今までの態度も悪かったしね。そこはごめんなさい。でも、あんたがいなかったらアタシは今ここにいない。そんな恩人を悪く言う訳ないでしょ。それに事実だし」

「オ、オウフ………」

「何よ、その顔。アタシだってたまには素直になるわよ?」

「いや、そこまで言われると照れるというか何というか……」

「ふふっ何よそれ」

「ふへへっ」


 リコちゃんが素直だ~、めっちゃ可愛い。でもあの時は、無我夢中だったからあんまり覚えてないんだよね。最後にめっちゃ跳んだことだけは覚えてる。あれ何だったろう?火事場の馬鹿力?にしてはすごかったな~。



「おう、シューマ。なんか楽しそうだな」

「あ、クロの旦那。そう見えやすか?」

「おうよ」

「お姉ちゃん、迎えに来たよ!」

「こんにちは、セージ君、クロのおじさん」

「こんにちは、リコちゃん。ちゃんと渡せたみたいだね。ずっといつ渡そう、いつ渡そうって———」

「セージ君?」

「ナンデモナイデス」


 リコちゃんの威圧、セージ君はタジタジになった。そっか~、タイミング見計らってたのか~。さっきからニヤニヤが止まらないね~。


「何ニヤニヤしてんのよ!」

「いや~、別に~」

「~ッ!ふん!」

「ごめんごめん」


 あ~あ、すねちゃった。尻尾もピンッとしちゃった。ちょっとからかいすぎた。その後、セージ君と2人でリコちゃんに謝ったら許してもらえた。




「んじゃ、そろそろ帰るか。ロジーがご飯作って待ってる。遅くなったらオレがドヤされる」

「お母さんめちゃくちゃ張り切ってたよ」

「おお~」

「あっしらも帰りやすか」

「うん、じゃあまた」

「「またね~」」

「またでさぁ」

「またな」



 家に帰るとロジーさんとほっかほか料理が出迎えてくれた。ローストビーフに、マッシュポテト、ニンジンなどの野菜のマリネ、ニョッキグラタン、トマトスープとレストランさながらの料理が並べられていた。


「すごい!これ全部ロジーさんが作ったの?」

「そうさね。腕によりをかけて作ったから、たんと食べな!」

「「ぼくも(オレも)手伝ったぞ!」」

「ぷははっありがとう!いただきます!」

「「「いただきます!」」」



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