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団長!空から女の子が!

 今回も視点がころころ変わります。

――優維視点――


 あれから無我夢中で走った。多分走ってたと思う、途中飛んでるような感覚があったけど多分気のせいだ。



「町が近くなってきたわ!」

「……はぁッ……ッ…りょー、かい!」

「でも、なんか集まっててどこかに行きそう!入れ違いになっちゃうかも!」

「ど、どうしよう?!」

「跳んで!」

「へ!?」

「いいから、前に向かって思いっきり地面蹴って!」

「うええい!?わかった!!」


 言われるがままに思いっきり地面を蹴った。



 ザフッダンッ!



「ええええええええええええええ!!!跳びすぎいいぃぃぃ!!」

「ヨシッ!このままクロのおじさんに受け止めてもいましょう!」



 いやいやいや、なんでこんな跳ぶの?!普通に地面蹴っただけだよ!?某朝の女児アニメの初変身並みに跳んだよ!高所恐怖症じゃなくても、普通に怖いよ!

 と、とりあえず誰か受け止めてええ!!!



――クロ視点――



「着いた!」

「クロ?!」

「リーさん!?なんでここに!」

「お前こそ、そんなに急いでどうしたんだ?」

「優維ちゃんが森の中で迷子になったんだ!」

「なんだって?シューマの子供もいなくなって、森に捜索に行こうとしてたんだ」

「そうなのか?シューマ」

「へいっ。遊びに行ってもいつも昼頃には帰ってくるのに、この時間になっても帰ってこないんでさぁ。町中探してもいないんで聞き込みをしたんでさぁ。そしたら、森の方に行ったって聞いたんで探しに行くところなんでさぁ」



 シューマの子供、リコちゃんもいなくなったなのか。声色事態は普段通りだが、明らかに顔が引きつっていた。そうとう心配なのだろう。



「団長!準備完了であります!」

「む、ご苦労エドガー。総員、整列!今から森に捜索に向かう!対象は狐の獣人族の子供、および人族の子供だ!道中も探索魔法を切らすな!これから吹雪になる可能性がある!無理はするな、不調があるものはすぐに申し出ろ。救助も大事だが、自分の命も大事にしろ!」

「「「「はっ!!!」」」」

「よし!エドガー、まずは四方に探索魔法を」

「了解であります!」



 捜索隊はリーさんを筆頭に、犬獣人のエドガーを含めた4名。4名とも探索魔法が得意な団員達だ。



「!?だ、団長!大変であります!」

「どうした!?」

「空から女の子が、こちらに向かってくるであります!」

「はぁ?!」

「狐を抱えているであります!」

「リコか!?」

「!受け止める準備を!」

「はっはい!」


 何がどうなっているのかわからないが、とりあえず空に耳を澄ませてみた。



「ぅゎぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!」

「優維(お姉)ちゃぁああん?!?!?!」

「何だって?!」


 ドフッ



「ク、クロさん……よがっだぁぁ……」

「優維ちゃん!無―—ッ!どうしたんだ、この怪我」

「クロのおじさん、ユイ撃たれたの!早く手当してあげて!」

「…………ぅ…………」

「お姉ちゃん!?」

「……気絶しただけだ。セージ、優維ちゃんを早く病院へ」

「え、でも」

「優維ちゃんのボディーガードなんだろ?」

「!うん!」

「アタシも一緒に!」

「リコ!!」

「パパ?!」



 セージに優維ちゃんを任せた後の会話は、あまり聞こえていなかった。

 誰がこんなことをした?なぜこの子がこんな目に会わなければならない?オレが目を離さなければこんなことにはならなかった。オレのせいか?そうか。なら、オレが責任とらないとなぁ。せめて、犯人を見つけないとなぁ。



 ガタガタガタッ!


「あのガキ!なんであんな足速ええんだ!」

「クソッ雪で前が見えねえ」

「!ヒヒィイン!ブルル」

「どうしたんだ、レタラ!」

「……お前らか?」

「は?ヒィッ」

「オレの娘に銃を撃ったのはお前らか?」

「お、お前の娘ぇ?あ、あの狐か?」

「違う。」

「もしかして、あのガキか?あのガキが邪魔するから!」

「もうやめろ!お前!」

「そうか、お前かッ……」

「へ?」

「!やべえ!」

火熊(ひぐま)!!!!」



ドゴオォォッ!!!



――セージ視点――


「お父さん?」

「セージ、早く行け」

「でもッ、お父さんどうしちゃったの?」

「あの馬鹿、怒りで暴走してる。ここは(おれ)がどうにかする。行け」

「ッわかった、リーンヴォックさん、お父さんをよろしくお願いします」

「ああ。エドガー、セージについて行ってやれ」

「……了解であります。団長もお気をつけて」



 あんなに怒ったお父さんを見たのは初めてだった。お父さんなのにお父さんじゃないみたいで、怖かった。でも、それよりも今はお姉ちゃんの手当をしないと。リコちゃんも怪我してるみたいだから一緒に連れて行きたかったけど、何かシューマさんと話してるみたいだ。あ、こっちに来た。



「セージ君、早く行くわよ」

「シューマさん、いいの?」

「いいのよ、今はユイでしょ?」

「!うん!」


 なんかリコちゃんが頼もしく見えた気がした。それに、お姉ちゃんの名前呼んでた。こんな時だけど、ちょっとうれしくなった。



「リコちゃんは自分が抱えていくであります」

「よろしくお願いします」

「よいしょっと。さあ、行こう!」


 獣形態になって、背中にお姉ちゃんを乗せた。乗せるときに傷口に布を巻いて軽く止血したけど、それでも血が垂れてきたのか生暖かいものが毛皮にしみこんだ。早くちゃんと診てもらわないと!





「先生!」

「どうしたんですか!?」

「急患であります!」

「わかりました。すぐに先生を」

「準備はしてたわ~。でも、これは予想外ね~」

「銃で撃たれたのよ」

「これは……止血剤と、念のため輸血パックの準備を!」

「はい!」

「スルク先生、お姉ちゃん死なないよね?!」

「大丈夫よ~。ケヒト先生、他の患者さんのこと頼める~?」

「わかりました。手が回らなくなったらエイアさんにも出てもらいましょう」

「お願いね~」



 あの後、スルク先生と数人の看護師さんがお姉ちゃんを連れて行った。リコちゃんの怪我は、トカゲ獣人のケヒト先生が診てくれた。軽い捻挫だったらしく、水魔法で炎症を抑えたから後は安静にするよう言われていた。リコちゃんを診た後、ケヒト先生は、他の人達を診るためにすぐに行ってしまった。

 ぼくたちはお姉ちゃんが入っていった病室の廊下で、スルク先生が出てくるのを今か今かと待っていた。



 ガラララッ ピシャン



「「スルク先生、お姉ちゃん(ユイ)は!?」」

「病院では静かにね~。とりあえず、止血して傷口も塞いだから大丈夫よ~。ただ、体力をかなり消耗してたから、しばらくは起きないと思うわ~」

「そうですか~、ありがとうございます」

「はあ~」

「一安心でありますな。では、自分はクロさんの様子を見てくるであります。2人にはここで待っていてほしいであります。スルク先生、いいでありますか?」

「いいわよ~。いってらっしゃ~い。さて、優維ちゃんの所行く?」

「「行きます」」


 ガララッ


「まだ寝てるから静かにね~」

「すぅ……すぅ……」

「阿呆づらでよく寝てるわね」

「……リコちゃんって意外と口悪いね」

「……今まで猫かぶってたのよ。こっちがアタシの普通」

「そっか、ぼくは今のリコちゃんの方が好きだな」

「!そういうことサラッと言うの、ユイに少し似てるわ」

「そうかな?」

「そうよ」 


 ベットには肩に包帯を巻いたお姉ちゃんが寝ていた。スルク先生曰く傷口は塞いだけど、寝返りで傷口が開くかも知れないから念のための包帯なんだって。

 よかった、お姉ちゃんが助かって本当によかった。いなくなったときと知ったときは、全身から血の気が引いた。上から降ってきたとき、驚きと安心が一気にぐわっと来たけど、血を見たときにまたどん底に落とされた気がした。でも、今は安堵感でいっぱいだ。今日はいろんなことがあって疲れちゃったな。


「くあ~」

「あら、眠いの~?」

「ううん、大丈夫です。お父さんが来るまで起きてます」

「それじゃあ、アタシはちょっと寝てもいい?」

「いいわよ~。仮眠室に行く?」

「ちょっとだけだから、ここで大丈夫です」

「そう?じゃあ、毛布持ってくるわね~」


 ぼくも眠いけど、お父さんが来るまで起きてよう。



 ――リーンヴォック視点――



 参ったな。セージにはなんとかすると言ったものの、キレたクロを止めるのは一苦労だ。それに、あいつらはおそらく今までの誘拐事件の重要参考人になる。生きたまま捕らえて、話を聞きたい。

 クロの攻撃で馬車が横倒しになっていて、馬はバタバタと暴れていた。2人の男が地面に投げ出されていた。1人は銃を背負っていて、もう1人は帽子を目深くかぶっていた。



「グオォォォォォ!!!」

「ヒィィ!」

「誘拐したのは、すまなかった!オレたちはどうなってもいい!ただレタラは傷つけないでくれ!」

「オイ!てめぇ何言って「黙れ!!!」ヒィ」

「言いたいことはそれだけかぁ?」



 ふむ、あの帽子男は話がわかりそうだ。もう1人は典型的なクズか。レタラというのはあの灰色の魔馬のことか。話がわかりそうな男は魔馬の飼い主か、何か理由がありそうだな。さて、そろそろクロを止めないとな。



「おい、クロ!そろそろその辺にしとけ!」

「グルルルルルゥ!」

「ちっ!キレすぎてて聞こえないのかッ」

「団長、取り押さえます!」

「動くな!お前らは己が合図するまで、待機だ!!」

「はっはい!」



 峰打ちで止まるか?!最悪切るしかないかッ!

 己が刀を構えようとしたとき、急にクロの魔力が上がった。これは本当にまずい。



狂火(グリズ)「あんたぁああ!!!!何してんだい!!!!」ロ、ロジ-?!」

「ロジー!?なんでここに?」

「あの馬鹿が暴れてる感じがしたから、家からすっ飛んで来たんだよ。迷惑だったかい?」

「いや、助かった。ありがとう。あいつらを捕らえろ!」

「「「はっ」」」


 ロジーが来なければ、クロを切る所だった。そのクロは今ロジーに怒られている。あの状態のクロを一喝で止めるとは、さすがだ。



「団長、これはどういう状況でありますか?」

「エドガーか。クロが暴走していたところをロジーが止め、犯人と思わしき2人を捕らえた。それで、優維はどうなった?」

「そうでありますか。優維ちゃんは治療も終わって、今は寝ているであります」

「そうか、ご苦労」

「団長もお疲れ様であります」

「そういえば、シューマさんは?」

「ああ、あいつは一旦家に帰ってから病院に向かうそうだ」

「そうでありますか」


 

 ここは一段落したが、これから犯人の聴取か。忙しくなるな。


クロさんの技の解説です。

火熊ひぐま:拳に炎を纏って対象に叩き付ける。

狂火熊グリズリー:火熊のラッシュ、拳が当たったところに爆発も付与。使用者の周りは爆心地のようになる。

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