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逃げろや、逃げろ

今回は、優維視点とクロ視点があります。

――優維視点――


「じゃあ、行きますよ」

「うん」


 まず、壁をコンコンと叩き小さな音を出す。だんだんと馬車の速度が落ちてきた気がする。速度が緩んで来たところで、リコちゃんの風魔法。



ビュオオオオ!!!

ガタガタガタッ!!



「うお!なんだ!?」

「ヒッヒイイイィイイイィィィン!!!」

「まずい!!」


 すげ!一瞬だけど馬車がひっくり返るかと思った!外は計画通りパニック状態。外に出るなら今しかない!


「行こ、リコちゃん!」

「(コクッ)」


 狐姿のリコちゃんを抱えて、あまり音を立てないように降りる。



 サクッ



 よし、まだバレてない。あっちは馬が滅茶苦茶に暴れていて、こちらを気にかける余裕はないようだ。このまま離れよう。あ、その前にちょっとだけ振り返って、小声で言いたかったことを。


「バーカ」

「何やってんですか、早く離れましょう」

「はい」


 ごもっともです。



――クロ視点――


~優維が気絶してすぐ辺り~


「お、ここの木に珍しい木の実が……」

「あ、ここにも……ここら辺すごいよ、お姉ちゃん!……あれ?」

「どうした、セージ?」

「お父さん、お姉ちゃんいない!!」

「…………な、なんだってー!!!!!」

「ど、ど、ど、どうしよう!?!?」

「そ、そ、そ、そうだな!?い、一旦深呼吸だ!!」


 スーハー、スーハー、スー……ふう、よし、落ち着いた。まずは周囲の確認。セージはオレの近くにいるが、優維ちゃんだけがいない。いつからいなかった?それ以前になぜ気がつかなかった?いや、それを考えるのは後だ。


「とりあえず、周りを探してみよう」

「う、うん。ごめんなさい、ボクがちゃんと見てなかったから……」

「いや、オレが気がつかなかったのが悪い。それに初めての森だ、もっとちゃんと見てなければならなかった」

「……お父さん、ここはお互い様ってことにしとこう。今はお姉ちゃん探さないと」

「セージ……言うようになったな。そうだな、まずは探そう」


 オレはそんな情けない顔をしていたのだろうか、セージに気を遣われてしまった。全く、子供の成長というものは早いな。オレもしっかりしないとな。

 周囲を探してみるが、やはり見当たらない。生き物の気配も小動物以外感じられない。そんなに遠くには行っていないと思うんだが……ん?足跡がオレたちのしかない?雪はさっきよりは強くなっているが、足跡がすぐに消えるほどではないはずだ。だが、これはまずい。もうすぐ、吹雪になるかも知れない。


「セージ、一旦町に戻って自警団に協力してもらおう。もうすぐ吹雪が来る」

「え?!でも、まだお姉ちゃん見つかってない!!」

「だからこそだ。闇雲に探しても、このままだとオレたちが遭難しかねない。探索魔法が使えるやつにお願いするんだ、その方が確実だし安全だ。それに、優維ちゃんにあげたポーチの中には工具の他に食料と防寒具も入れてある」

「―ッ…………わかった」


 いろいろ飲み込んだ返事だった。すまないな、セージ。オレが探索魔法が使えたらよかったんだがな、あいにく壊す魔法しかできないんだ。だから、これから最速で町に戻る。もう少し待っててくれ、優維ちゃん!



――優維視点――


「クロのおじさん、町に向かってる」

「え?」

「多分あなたが居ないことに気がついて、自警団に協力してもらいに行ったんだと思います。いくら森に慣れていても、自分たちだけで迷子を捜すことは危険です。さらに迷子が増えるだけ」

「そうなんだ」


 よかった~。町に戻ってると聞いて、一瞬見捨てられたのかと思ったけどそうじゃなかった。そういえば元の世界でも、山で遭難者を探すときは大人数で自分たちの安全も確保しつつやってたな。


「じゃあ、町の方に行けばいいんだね」

「方向、わかるの?」

「う、わかりません」

「はぁ、ちゃんとナビするわ」

「よろしくお願いします」


 少し希望が持てたからか、雪で歩きにくいけど少しだけ歩く速度が上がった気がする。



「なかなか追ってこないね」

「フフッまだ、馬が暴れているのかもね」

「……何したの?」

「ちょっとお話しただけよ?」

「……さいですか。」


 狐姿なのにニヤッて笑ったのがわかったよ。絶対小悪魔の顔してたよ、この子。まあ、追ってこないなら今のうちに距離を稼いでおこう。うん、あんまり追求しないでおこう。





 結構歩いたかな?雪強くなってきたな~、さらに歩きにくい。


「まだかな?」

「まだ、でも町には確実に近づいてます」

「お~、じゃあもうちょっと頑張る」

「………すいません」

「?何が?」

「いや、色々と、その……」

「怪我のことはしょうがないし、誘拐については事故だし、リコちゃんが謝る必要はないよ」

「それのこともですが………いえ、ありがとうございます」

「?どういたしまして?」

「クスッなんで、そこもハテナがつくんですか」


 リコちゃんが本当は何を言いたかったかはわからなかったけど、さっきより雰囲気が明るくなったからヨシッ!




 ドンッ



「!!おい、何してんだ!!」

「へ、ヘヘッ」



「え?―ッ!?ッ~~~!!!」

「ユイ!?」

「ッ!……ぁ、ぃ、ダイ、ジョーブ!!!」


 痛くない痛くない痛くない痛くない…………滅茶苦茶いてーわ、ド畜生!!子供に向かって銃撃つか、普通!それがお前らのやり方かぁ、ゴルァァ!!うわ、肩からめっちゃ血ぃ出てる。



「その狐よこせよ!くれたら命だけは助けてやるよ。そんな獣助けてなんになる?!そんなことしたって無駄だろう?」

「…………ハッ……!」

「嬢ちゃん?」



 思わず嘲笑(わら)ってしまった。一瞬でも渡そうと思ってしまった自分に、そんな考えが出た自分に。そんな獣?この子を渡せば助かる?そうだろう、明らかにこの子目当てで、私はおまけだろう。無駄かも知れない。






「んなことするか!!バーカ!!!!」

「え?」

「ッ何だとぉ!!!」

「ひいぃぃぃぃぃ!!!」



 だってだって、リコちゃん震えてるんだもん!こんな子、渡せると思う?私には無理!それに、この子なぜか私に口調きついけど、ナビしてくれたり、ごめんなさいできたりいい子だもん!ばーか、ばーか!私もお前らもばーか!何してんだろうね?!私!でも、叫ばずにはいられなかったんだよ!理由?ムカついたから!




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