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移動中は寝て時間をつぶすタイプ:解呪組




「ふぁ……………」

「眠いのか?」



 あれから好きな食べ物とか、生前の凛さんの話とかいろんな話をして時間をつぶしていたが、朝が早かったせいか欠伸が出てしまった。



「いえ、大丈夫です」

「寝てていいよ~。潜入は夜だから今のうちにいっぱい寝ときな~」



 カルヴァロさんから「着いたら起こすから~」と間延びした声が聞こえた。

 確かに、私たちが動き出すのは時間でいえば深夜当たり。王都に着いたら休めるところはあっても寝るところはないかもしれない。



「う~ん、じゃあお言葉に甘えて」



 積まれている干し草の束、恐らくルラとニンパのご飯を少しだけ拝借して枕と寝床を作りダーイブ!おお、意外と柔らかい。あのアルプスの少女もこんな感覚だったのだろうか。

 あ~、横になったら眠気が………………。








 ——————————————楔梛視点——————————————



「すー……すー………」

「すぐに寝てしまった…………」



 やはり子供の体だ、いくら凛おばあ様と修行をしたといってもまだ体力的にもきついものがあるだろう。



「優維ちゃん寝ちゃった?」

「ああ」

「楔梛様も寝てていいよ。まだ本調子じゃないでしょ?」



 図星だ。まだ封印が解かれてから数日しかたっていない。

 魔力のコントロールは何とか出来ているが、魔法はまだ元の感覚が戻ってきていない。それに封印により時間がある程度止まっていたが、それでも全く動いていなかったことに変わりはない。以前より体力がかなり落ちている。”獣の王の咆哮”は奴に全力でぶつけなければ意味がないだろう。



「では、俺もひと眠りしよう」

「門に着く前に起こすよ。お休み~」



 ふむ、獣人形態のまま寝てもいいが意外と肩がこるんだよな。

 獣形態に変化して丸くなる。やはりこの体勢が楽だな。



「う~」



 寝ようとしたところで優維の唸り声が聞こえた。目は閉じているようなので起きてはいないようだ。

 魘されているのか?と思い、足音を立てないようにゆっくりと近づく。唸り声は一度だけだったが、かなり先ほどよりも体を丸めている気がした。心なしか眉間にしわが寄っている気がした。

 もしかしたら、寒いのか?


 俺は一度獣人形態に戻り、羽織を脱いで丸まっている優維にかけた。そうすると、優維の眉間のしわが取れて規則正しい寝息が聞こえてきた。やはり寒かったのか。馬車の中はある程度密閉されているとはいえ、走行中だとどうしても出入口から風が入ってきてしまう。

 再び獣形態になり優維と出入口の間に丸くなる。こうすれば風よけになるだろう。幸い、俺は寒さに滅法強い。親譲りのふさふさの鬣と体毛のおかげもあるが、氷魔法が得意なおかげでもある。



「ふぁ………」



 横になったら急に眠気がきた。カロが起こしてくれるまでゆっくり休むとしよう。











「楔梛様~、そろそろ着くよ~って何でそんな所で寝てるの?」

「ぬ?おぉ~」



 カロが声をかけながら、馬車の扉を開けて中に入ってきた。

 俺はぐーっと伸びをして、大きな欠伸で肺に空気を目一杯取り込む。最後に顔をぶるぶると振ると、頭が覚醒してきた。かなりぐっすりと眠れたようで、とても気分がいい。 



「おはよう」

「おはよう。何でそんな中途半端な所で寝てたの?あと羽織は?」

「ああ、優維が寒そうだったんでな。風よけになるかと思って優維と扉の間で寝てたんだ。羽織は優維に貸した」

「そうだったんだ。確かに人間だと寒いかもね、もうちょっと毛布とか持ってくればよかったね」



 俺達も普段は毛皮があるから問題ないが、人間形態の時は普段より寒く感じる。もう少し配慮すればよかった。次があるなら毛皮がない者のことも考えないとな。



「すー……すー………うにゃ……」



 優維が変な声を出したので思わず見つめてしまった。俺の羽織に顔を押し付けて、とても気持ちよさそうに寝ている。その姿を見ているだけで、何故か胸がほこほこと温かいもので包まれていく感覚がした。



「ふふっ優維ちゃん、ぐっすりだね~」

「…………」

「楔梛様?」

「………………」

「おーい、楔梛様~?」

「ぅお!なっなんだ?」

「んふふ~、そんなに優維ちゃん見つめてどうしたの~?」

「え、あ、いや!」



 別にやましいことは何もないのに、何故だかわからないがひどく動揺していまいしどろもどろになってしまった。そんなおれを見て、カロはニヤニヤ?じゃないな、なんか微笑ましそうな顔をしていた。何故だ?



「しー。あんまり大きい声出すと優維ちゃん起きちゃうよ」

「あ、ああ、すまない」

「このまま羽織をはがすのは忍びないし、起きるまで待とっか。予定よりかなり早く着きそうだし、まだ時間もあるしね」



 俺がそれに肯定として頷くと、カロは「ルラとニンパにご飯食べさせてくるね」と干し草の束をいくつか持って外に出て行った。



「ふー」



 カロがいなくなり、再び二人だけになった空間で大きく息を吐く。

 優維はまだ寝ているので、さっき自分が何故あんなに動揺したのか少し考えてみた。

 指摘されたのが恥ずかしかった?それもあるがなんか違う気がする。寝ている優維をじっと見ていたのが悪いと思ったから?無い訳ではないがしっくりこない。

 うーん、分からん。


 もう少し見ていたら分かるか?

 そう思い獣形態のまま、そろそろと再度優維の枕元まで近づく。

 ふむ、相変わらずよく寝ている。幸せそうな寝顔だ。思わず頬がほころんでしまうな。それに優維の魔力はとても心地よい。まるで春の風のように心地よい温かさと柔らかさだ。魔力の波長が合うというのはこういう事なのだろうか。

 俺が目を閉じて優維の魔力を感じていると、不意に身じろいだ音が聞こえた。起こしてしまったか?と思ったが、相変わらず寝息を立てて寝ていた。心なしかさっきよりも口角が上がっている気がした。優維も俺の魔力を心地よいと感じてくれているのだろうか?だとしたら嬉しいな。




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