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セージ君のお守り




 あっという間に奪還作戦アンド解呪作戦当日です!

 え、その間?ちょっとだけ魔法の練習して後は寝てました。魔力回復には寝るのが一番!とスルク先生に言われたので実行してました。おかげでまだ日の出前だけど、すこぶる元気です!



「じゃあ、そろそろ行ってくる」

「クロ、優維、いってらっしゃい。アンタたちの好きなもん作って待ってるから」

「ありがとう、ロジーさん。そういえばセージ君は?」



 朝が弱いのは知ってるけど、絶対見送りはしてくれると思ってたんだけどな~。



「セージ君なら早くに出かけてったよ~」

「え、どこに?」

「多分、リコちゃんとこじゃないかな?」





 

 —————————————リコ視点————————————— 



 トントンッ


 家で出発の準備をしていると玄関のドアがノックされた。こんな時間に誰?



「リコちゃん」

「あらセージ君、珍しく早いわね」

「がんばったー」



 意外なことにセージ君だった。

 かなり眠そうで目も半開きだし、あんまり呂律も回ってない。



「リコちゃん、はいこれ」

「これは………?」

「ぼくの魔力を込めたお守りだよ」

「ああ、ちゃんとこめられたみたいでやすね。頑張りやしたね」

「えへへ」



 手渡された群青色の勾玉から、ほのかだけどセージ君の魔力を感じる。セージ君はそのせいなのか、ちょっと疲れてるみたい。なんでいきなりこんなものを?



「リコちゃん、これから危ないとこ行くんでしょ?」

「……誰から聞いたの?」

「小耳にはさんだんだよ」



 そんな難しい言葉、どこで覚えたのかしら。それより作戦の事ね、優維が直接言うとは思えないし、多分クロのおじさんでしょうね。心配かけたくないから言わなかったのに、クロのおじさんったら。



「加護は少ないかもしれないけど、何かしたくて、その」

「わかってるわ。ありがたくもらっておくわ」



 気持ちはわからないでもない。アタシも優維のときはおんなじ気持ちだったし。



「リコ、わりぃがそろそろ時間ですぜ」

「はーい!アタシはもう行くけど、まだ行くとこあるんでしょ?」

「あ、うん……………リコちゃん!」



 アタシがパパを追いかけようとしたとき、セージ君に呼び止められた。



「いってらっしゃい!」

「——————ッいってきます!」



 振り返るとセージ君は太陽のような笑顔で、こちらに手を振っていた。

 少しだけそれに見惚れて挨拶が遅れてしまったのに、彼は気づいたかしら?まあ日の出前の太陽は鈍感だから、気付いてないでしょうね。

 



 





 ———————————優維視点——————————————— 




「ただいま!ユイ姉まだ出てない!?」

「おかえり、ジャストタイミングだね」

「よかった~」



 セージ君は走ってきたのか少しだけ息が弾んでいた。それにほっぺたも耳も真っ赤だったけど、外そんなに寒かったのかな?



「セージ君、ほっぺも耳も真っ赤だよ。そんなに寒かった?」

「—————ッべべべつにいつも通りだったよ!?あ、朝だからいつもより寒かったかも!?」

「そ、そう?」



 なんかめっちゃ動揺してるけど、リコちゃんとなんかあったのかな?これは後でねほりんぱほりんせねば。


 

「そっそういえばお父さんたちは?」

「いつもの」



 私がそう言うとセージ君はちらっとクロさん達の方を見て、仲いいな~という視線を向けていた。因みにいってらっしゃいの鼻スリスリロングバージョンです。クロさんがお仕事行くたびにやるから、もう見慣れたよ。



「もうちょっとかかりそうだね」

「そだね~」

「………ユイ姉、これお守り」

「私に?ありがとう」



 クロさん達の方を見ていたら、唐突にセージ君から勾玉のようなお守りを手渡された。勾玉は混じりっ気のない黒色で、光に照らしても漆黒のままでなんでも吸い込んでしまいそうだ。



「魔法石を牙みたいな形に加工したお守りだよ。ぼくたちは勾玉って呼んでる」

「へえ~」



 形も一緒だからもしかしてと思ったけど呼び方も同じなんだ。魔法石だからかほのかに魔力を感じるけど、なんかよく知っている気配がする。



「これ、セージ君の魔力……?」

「ユイ姉すごい!よくわかったね」

「優維は元々魔力感知能力高いのよ。現世で他人の感情や悪意に敏感だったのはそのせいね。勾玉はそのまま渡すこともあるけど、大切な人を守ってくれるようにって祈りを魔力に込めて渡すこともあるのよ。昔からのやり方だけど、思いは伝わるでしょ?」



 確かに。本当は温度なんてない魔法石なのにほのかに温かい感じがするのは、セージ君の魔力が、思いが込められているから。



「ありがとね、セージ君」

「うん!」

「あ、優維、楔梛にこれ渡してくれない?」



 凛さんから手渡されたのは、私のよりも少し大きめでミルク色をした勾玉。これからはほのかに凛さんの魔力を感じる。



「直接渡せばいいじゃないですか」

「行きたいのはやまやまなんだけどね~。今回、見送りはココロさんだけでって言われてるのよ」

「ぼくもそう聞いてたから、今朝リコちゃんのお家に直接いったんだ」



 そうだったっけ?やばい、そこの話全然聞いてなかった。まあ、そういうことなら仕方ない。



「わかりました」

「ありがと。よろしくね」




 そうこうしていると、クロさんがロジーさんから離れてこちらに戻ってきた。 



「すまんな。そろそろ行こうか」

「うん」

「気を付けて。”みんなが無事に帰ってこれますように”」



 言葉から少しだけ魔力を感じたので、驚いて凛さんの方を勢いよく見る。それに気が付いたのか凛さんはふっと笑い、私の肩に乗って耳打ちした。



「凛さん、今……?」

「ちょっとだけよ。あたしの我が儘、きいてくれる?」

「………わかりましたよ」



 だからそんな心配そうな顔をしないでほしい。今回の作戦は奪還、解呪が目的だけど、最優先は皆の命、誰かが欠けてしまっては意味がない。

 私の返事を聞いた後、凛さんは一度だけ鼻を私の頬にすりっとしてからタンっと降りた。


 

「凛ちゃん、ユイ姉、二人して何の話したの?」

「内緒よ(シー)。ね?」

「うん、内緒」



 我が儘姫のわがままを聞いただけだよ。






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