モフモフに全集中
「リ、リコちゃん説明プリーズ!」
「え、アタシ?まあ、いいけど………」
リコちゃんが言うには、獣人は成人して成長が止まると獣形態時の大きさを変化させることができるようになるらしい。もっともそれは純血の獣人族だけで、ヒト族や魔族などの異種族と混血だと人、獣人、獣の形態変化はできるけど大きさの変化はできないみたい。
なるほどね。これなら、私が抱えて運ぶことができるってことか。それより………
「だ、抱っこしてもいいですか?」
「いいよ~。モッフモフだよ~」
「なぜ凛おばあさまが許可を?」
あ、楔梛様がちょっと引いちゃった。落ち着け、落ち着け、多分リコちゃん曰くだらしない顔をしていたんだろう。こんな人に抱っこされたくはないよね。
「す、すみません」
「いや………いいぞ?ほら」
「で、ではお言葉に甘えて」
失礼しますと断ってから恐る恐る抱きかかえる。
「ほ、ほぁ~」
ほわほわだ~。
大人の楔梛様の鬣はファサファサでそれはそれは気持ちよかったけど、子ライガーは鬣こそないけど毛がふわふわでぬいぐるみみたいだ。それにやっぱりなんか安心する。
———————————楔梛視点———————————————
もふもふもふ
「なあ、優維?」
「……………」
俺が呼びかけても全く聞こえてないのか、もふもふ撫でることをやめてくれない。
「ふふふ、楔梛のがよっぽどいいみたいね~」
「おーそこまで集中してるのは久々だな!」
「まーただらしない顔してるわ」
皆の方を見ると仕方ないなという顔、微笑ましいものを見ている顔、またやってらという呆れ顔と様々だったが反応を見る限りこれが通常らしい。
「楔梛様、そのまま聞いてくれるかの?」
「あ、ああ」
あ、俺このままなんだ。なんかかっこつかないな。
「二日後の早朝、エクロク達が出発し時間差でクロたち陽動部隊、楔梛様と優維は城潜入部隊が随時出発する。楔梛様は昼頃には着くだろうから、少し街を散策でもするといい。クロ、リーは案内を頼むぞ」
「応」
「任せろ!」
クロはいつものニッという笑顔を、リーの表情は変わらないが少し声が弾んでいたように思えた。
「そしてその日の夕方、カミアシ家での陽動と救出を決行する。その間、ダイモン達は各々行動してくれ」
「おうよ!」
「「ん」」
「はい!」
「うむ。そして、楔梛様達は陽動が始まり城から兵が動き始めたら城に潜入し、ライル王の所まで向かってくだされ」
「わかった」
「ふえ!?あ、はい」
あ、優維が戻ってきた。
反応からして俺の返事に驚いただけかもしれないが。
「ホウホウッでは皆の者、二日後の早朝出発する。それまでは各々、しっかり体を休めるようにの」
ココ爺の呼びかけに皆が頷く。
「ホウホウホウ。では、今日はこれで解散じゃ」
「優維、そろそろ降ろしてくれないか?」
「あ!す、すみません!嫌でしたよね?」
「嫌ではない。が、少し恥ずかしい」
俺がそういうと再度謝られて、すぐに降ろされた。
いや謝らなくてもいいんだが、そろそろ凛おばあ様からの温かい目に耐えられなくなってきただけなんだ。決して優維に撫でられるのが嫌だったわけじゃない。