ある日、もりのなか、くまさんと、出かけた~♪(も○のくまさんのメロディーで)
ここにきて1ヶ月くらいがたった。どうやら時間の概念は、現世と大体同じらしい。だけど、時計は広場に日時計があるくらいで、個人で知るにはそれを見るか、日の傾きで大体の時間を測っているから時間には皆すごくルーズだ。それくらい時間に追われる必要がないみたい、元の世界からするとうらやましい限りだね。
私はその1ヶ月の間、魔法の練習をしたり、外でセージ君とたまにヒミちゃんとディグ君と遊んだり、ロジーさんのお手伝いをしたりして何事もなく過ごした。魔法はようやく火の粉が出るようになったくらいだ。ちなみに、セージ君はガスコンロくらいの火がだせるくらいになった。いいんだよ、大器晩成型なんだよ。
ヒミちゃんは口数は少ないけど、笑ったりあきれたりするし、冗談も言ったりする普通の子だ。ただ、土竜だから午後しか会えないし、週2日くらいで病院のお手伝いもあるからあんまり遊べない。ちなみにヒミちゃんのお兄さんのディグ君とは、病院までの送り迎えをしていて、そのときに知り合った。ディグ君は某鬼退治の兄みたいな、ザ・お兄ちゃんって感じ。よく私たちの頭を撫でてくるけど、セージ君は照れくさいのかすぐに手をよけようとする。そういうお年頃なのかな?
「あら、ジャガイモがない」
「どうしたんですか?」
「いいところに来たね。ちょっとお使い頼んでもいいかい?」
「いいですよ」
「助かるよ。じゃあジャガイモ5個ほどを買ってきてくれないかい?」
「わかりました。でも、八百屋の場所がまだ曖昧なので地図を書いてくれませんか?」
「それなら、セージも一緒に行ってくれないかい?道案内とボディーガードとして」
「いいよ!じゃあ、お姉ちゃん行こうか」
「うん、行ってきます」
「頼んだよ~」
セージ君と一緒に八百屋までお使いに行くことになった。それにしてもセージ君、ボディガードって聞いたときにフンスッて顔してたけど、うまく乗せられた気がする。さすが母、やる気にさせるのが上手い。
「お姉ちゃんって道覚えるの苦手?」
「う~ん、そうではないと思うけどな。広場から数本道が延びてるから、未だにどの道に行けばどこに出るのか曖昧なんだよね~」
「そっか~、確かにあそこはわかりにくいね。でも広場には日時計があるから、そこの数字から道を覚えればいいと思うよ。今日行く八百屋は、日時計の3の所の道をまっすぐ進むとつくんだ」
「なるほど」
確かに、建物で覚えようとしてたからだめだったのか。晴れてるときはいいけど、雪に埋もれて屋根の色や壁がわからなくなる。今度から日時計の数字を参考にして覚えていこう。
「あ、リコちゃんだ」
「セージ君の友達?」
「うん、でも誰かと会うのが苦手なのかあんまりお外にでてこないんだ」
「じゃあ今日は珍しい日かな?」
「うん!おーい、リコちゃーん!」
「ッ!?……あ、セージ君…と誰、ですか?」
「初めまして、優維って言います。リコちゃん、でいいかな?よろしくね」
「うん、私リコ。よ、よろしく」
「お散歩?」
「そんなところ。セージ君はお使い?」
「そうだよ。お使いとお姉ちゃんのボディーガード中!」
「お姉ちゃん?」
「血は繋がってないけど、家族同然だからそう呼んでるんだ~」
「そう、なんだ。うん、お使い頑張ってね」
「?またね~」
セージ君のいきなりの発言に驚いた。リコちゃん狐耳と尻尾、もふもふでおどおどしてる可愛いな~って思ってたら、まさかの発言でそんな考えが吹っ飛んでしまった。会って1ヶ月弱、しかも詳しい素性もわからないやつを家族同然と思ってくれている。一瞬この子は純粋すぎないかと心配になったけど、それと同時に胸がほっこりした。そして、泣きそうになった。その理由はわからなかったけどね。
「八百屋に着いたよ、お姉ちゃん」
「らっしゃい!お、クロさんとこの坊ちゃんとお嬢ちゃん!お使いか?」
「うん、兼お姉ちゃんのボディーガード!」
「ハハッ!そいつは重大任務だな!んで、今日は何を頼まれたんだ?」
「あ、ジャガイモ5個ください」
「あいよ!ジャガイモ5個だな、まいど!お嬢ちゃん可愛いから、リンゴ1個おまけしといたよ」
「ありがとうございます!」
わーい、リンゴだ~。デザートに剥いてもらおう。その後は何事もなく帰宅した。今日の晩ご飯はジャガイモのガレットと、魔鳥のソテー、ザワークラウト、鳥出汁の野菜スープだった。魔鳥はクロさんが今日仕留めてきた新鮮なものだったので、めちゃくちゃ弾力があっておいしかった。その後、お風呂に入ってからすぐに寝た。ここに来てからめちゃくちゃ健康的な生活をしている気がする。体は子供だからね、何度でも言おう、寝る子は育つ!
「おはようございます」
「おう、おはよう」
「おはよう、お姉ちゃん」
「あれ?セージ君が先に起きてる」
「ウハハッ!セージ、珍しがられてるな」
「む~」
「ふはっごめんごめん」
「今日はちょっと森のほうまで出かけるから楽しみだったんだよな?」
「うん!お姉ちゃんも一緒に行ってもいいよね?」
「う~ん、まあ森って行っても入り口あたりだから大丈夫か。一緒に行くか?」
「はい!」
というわけで、今日はクロさんが普段狩りに行っている森付近に行くことになった。セージ君は定期的に薬草摘みや果物狩りについて行って、クロさんを手伝っているんだそうだ。森の奥には、草食魔動物を食べる肉食魔動物がいるから危ないんだって。まあ、ウサギとかかがいるならそれを食べる動物もいるだろうね。それが自然の摂理、食物連鎖ってね。
「上着、手袋はオッケーか?」
「はい!」
「リュック、お弁当、飲み物オッケー?」
「おう!」
「最後に、森に着いたら絶対にはぐれ~?」
「「ない!」」
「よし!じゃあ、行ってくる」
「はいよ、気をつけてね」
「「いってきまーす!」」
ある日、もりのなっか~、くまさんと、出かけた~。とことことーこーとーこーと~、とことことーこーとーこーと~♪
「ついたぞ」
着くのは結構早かった。町の外に出た後、クロさんが獣形態になって乗せて走ってくれた。さすがに子供の歩みだと森に着くまで日が暮れてしまうんだと。歌を心の中で歌っていたのは、意外とスピードが速くて怖かったからだ。とことこなんてもんじゃない、バイクでブオオーンって感じだったよ。
とりあえず、森の入り口に着いたみたいだ。入り口といっても整備されているわけではなく、立て札があってここからカルニキナの森って書いてあるだけ。道もほぼ獣道で、所々の木に紐が目印のように巻き付けてあるだけだった。
「ここから少し左に行くと、薬草とかキノコが生えているところがあるんだよね?」
「お、よく覚えてたな。今日はそこに行くぞ」
「「は~い」」
立て札の所から、森の中には入らず木が茂っているところに沿って15分くらい歩いた。目的地に近づくにつれて、木の下にキノコや草のようなものが見えるようになってきた。
「よし、ここら辺で薬草を採ろう。キノコは見分けるのが難しいからとらないように」
「うん、この雪の形みたいな葉のやつを採ればいいんだよね?」
「そうだ。このユキケッショウは、しもやけに効く薬になるんだ。あと、茶にしても爽やかで上手いぞ」
「へえ~」
「お父さん、あっちにいっぱい生えてる!」
「あんまり遠くに行くなよ!」
「わかってる!お姉ちゃん、こっちこっち!」
「わわっ待ってよ~」
さあ、頑張って集めるぞ~!