ただいま混乱中
「優維?」
いやそんなどうした?みたいな純粋な目で見られても!?おっきい猫ちゃんですか!カッコいいのに可愛いんですか!?獣人が肌をスリってするのはキスと同じような意味だって聞いたよ!?つ、つまり私の手の甲にキスしたって感じで……なに、王子?王子なの?あ、王様だったか。
もう脳がバグっております、大混乱中です!
「先生!どっどうしよう!優維が真っ赤になって動かなくなった!」
「あら~、優維ちゃんはあまり耐性がなかったみたいね~」
スルク先生、彼氏いない歴=年齢だった私に耐性なんてないですよ。
こんなん刺激が強すぎます!
「楔梛様、何をしているのですか?」
「ク、クロ、何で怒っているんだ?」
「いくら楔梛様でも、まだ優維には早いです!!どこで覚えたんですか!?」
「え、あ、ち、父上が女性に感謝を伝えるときはこれをすればいいぞって、間違っていたか?」
「……あんの色ボケクソ親父!!息子に何教えてんだ!!」
なんかクロさんが怒ってるけど、私はそれどころじゃない。
とりあえず熱を冷まそうしているんだけど、一向に熱が引いてくれない。
「優維、とりま、水、飲む?」
「あ、ありがとう、ヒミちゃん」
「ん」
少し水を飲んで、グラスを頬に充てる。
あー、冷たくて気持ちいい。ちょっと冷静になってきたかも。
「ダッハッハ!いいじゃねぇかクロ!楔梛様の親父の教えなんだし!」
「だから、優維にはまだ早いというんだ!」
「いいじゃねぇか!遅かれ早かれ番は作るんだろうし!」
「つがっ!まだ嫁にはやらんぞー!」
「落ち着けって、親バカ!」
「今褒めてんじゃねぇよ!」
「褒めてねぇよ!?」
なんかクロさんグルグル言ってるし、ダイモンさんは眉間のしわがすごいことになってる。
やめてー!目の前で獣大戦争始めないで!?
「二人とも~?病人の前ですよ~?」
「「す、すんません」」
「うふふ~分かればいいのよ~」
教訓、スルク先生に逆らってはいけない。
「すまない。どうも俺はこういうことに疎くて……」
「いえいえ!楔梛様のせいじゃありませんよ!ただ、気軽にしない方がいいかと……」
「肝に銘じておくよ。改めて、助けてくれてありがとう」
「どういたしまして」
今度は二人で笑いあい、握手をした。
今は素直に受け取ろう。
「ホッホ、落ち着いたかのぅ?」
「ココ爺」
「よいよい、まだ寝てなさい。さて、今日は皆疲れたじゃろう。話は明日、また改めてしよう。優維にも聞いてほしい話なんじゃ」
「はい……?」
どこか神妙な面持ちのココ爺、また何かあっただろうか?
「おし!じゃあ今日は帰ろう。ロジーやセージが心配している」
「凛さん?」
「私、今日はここに泊まるわ。いいかしら?ココロさん」
「ええぞ。楔梛様もいいかのぅ?」
「もちろん」
今日はお開きということで、各々挨拶をして家に帰った。
私はスルク先生から薬をもらい、クロさんに肩車されて家に帰った。自分で歩こうとしたら、クロさんが断固として認めなかったので肩車してもらった。
「「ただいまー」」
「ユイ姉、お帰り!」
「おかえり、凛は?」
「今日は長の所に泊まるんだと」
「やっと帰ってきたのね」
「リコちゃん!?」
「何よ?いちゃ悪い?」
「全然!」
家に帰るとセージ君とロジーさん、意外なことにリコちゃんも出迎えてくれた。
「勘違いしないでよ!?アンタが怪我してないか確認するために待ってたのよ!」
「リコちゃん、一人で待ってるのが嫌で「セージ君?」何でもないでーす」
「リコちゃん、ここにいるのはいいがシューマも家に帰ってくるぞ?」
「手紙は置いてきたけど……一応パパに連絡してきます」
リコちゃんはシューマさんに連絡するため、少し席を外した。
クロさんの肩から下ろしてもらうと、すかさずセージ君が抱き着いてきた。
「ユイ姉、服、汚れてる。それに……ちょっとだけ血の匂いがするよ?」
「あははは…………ごめん」
「はぁー、リコちゃんに思いっきり怒られされてね?」
「うっす」
うん、怒られるのは確定だろうなーって思ってたよ。甘んじて受けますよ。
「心配、したんだよ。帰ってきてくれて、よかった」
「………」
何を言えばいいかわからなかったから、とりあえずギュっと強めにセージ君を抱きしめた。