ダメ神、下界へ行く
初めまして。
ととのすけと申します。
ノリで描き始めた作品ですが、少しでも楽しんでいただけたらと思います。
では!
「だー、クッソ、また負けた!!!!」
古き良き日本を思わせる和室、それも二十畳はあろうかという広い一室の中で、一人の少年がゲーム用のコントローラーを握りしめながら怒りの混じった声を漏らす。
「なんだあいつ、普通そんなところから撃ってこないだろ!! 絶対友達いないわ。キッショいなあ!!」
怒りに任せて広い和室にコントローラーを放り投げる。
よくよく見れば、彼のいる部屋の中にはそこかしこにコントローラーや洋服、そしてスナック菓子の袋などが転がっている。
「はー! こんなクソゲーやってられっか!!!」
怒りに負けせて、広い部屋の中にひと組だけ敷かれている布団にみを投げる。
彼がやっているのは所謂FPSゲーム。その中でも若者を中心にユーザー層を獲得しているスフリャチューンというゲームだ。彼も漏れなくその魅力に取り憑かれた一人であった。
「別のゲームすっか・・・」
放り投げたコントローラーを再度拾い、別のゲームを始めようとする。
その時だった。
「失礼致します。シキ様」
広い和室に響き渡る凛とした音色。シキと呼ばれた彼がその声の方に首を向けると、そこにはまさに大和撫子という言葉が当てはまる、着物に身を包んだ、整った顔立ちをした女性が立っていた。
「桃花さん・・・部屋に入るならその前に声かけてよ・・・」
「はい、お声がけいたしました。何度も何度も。なのに、そのピコピコに夢中でお気づきになられなかったのはシキさまではありませんか」
シキは桃花と呼ばれた女性に対して、部屋に入る前に声をかけなかったことに文句を垂れるが、それは桃花に一蹴されてしまう。
バツが悪くなったのか、シキは再び桃花の方から顔を背け、ゲームを再開しようとする。
「で、なんの用? こう見えてボク忙しいんだけど」
「そうですね、昼間っから布団の上でゴロゴロしながらピコピコざんまいで、自分のお召し物やお菓子のゴミも散らかしっぱなしなのですから、さぞ忙しいことでしょう」
桃花から淡々と事実を突きつけられ、げんなりした表情を浮かべるシキ。
「全く、これから正式に神になられるというのに・・・本当にその自覚がおありなのですか? 大体、シキ様は日頃から・・・」
桃花の口から発せられた神という単語に対してシキは眉をひそめる。
「わかったわかった! ボクが悪かったよ! で、何の用なのさ!」
都合の悪い話を断ち切るように、桃花の話に割ってはいる。
「あら、そうでした。 継承式のことで主人様がお呼びです。」
「げっ・・・」
話題を逸らそうとしたにも関わらず、結局自分の嫌な話題に戻ってしまった事に対して心底怪訝な表情をする。
「わ、わかったよ。あとで向かうからそう伝えておいてよ」
「そういうわけには・・・」
いかない。と、桃花が口を開こうとした瞬間、別の人影が桃花の横からヌッと現れる。
「よお、シキ。相変わらずぷー太郎しとるのう」
「とっ、父さん!!」
桃花の横から現れた無精髭をたくわえた大柄な人物。彼こそ、桃花の言う主人にして、シキの父にあたる人物だ。
「な、何しきたんだよ父さん・・・継承式の話ならあとで・・・」
「いやな、そのことなんだがな。色々考えた結果、お前をまだ神にするわけにはいかないと思ってなあ」
「は?」
父の言葉に鳩が豆鉄砲食らったような表情を見せるシキ。
先ほどから、桃花や父が口にしている神という言葉。それは比喩でも何でもなく、古来より神話などに登場する神そのものを指す。
現役の神であるシキの父は、長きにわたるその役目を終えて代替わりをして、その役目を息子であるシキに委ねようとしていた。
その代替わりの時に行われる式典こそが継承式である。
「長い間神としてこの地を治めてきたが、まだまだ色々問題もある中ですぐにお前を次の神にしていいのか考えていたんだが、このままでは良くないと思ってな」
「そ、そうなんだ・・・」
驚いた表情から一転、嬉しそうな表情に変わっていくシキ。
そう、彼は神になんてこれっぽっちもなりたくないのである。今のまま、怠惰な生活を続けたいのだ。
「それじゃあしょうがないよねえ〜、じゃあ継承式はもう少し先に・・・」
「うん、だからお前、下界に行ってこい」
「そうそう、下界に・・・って、え?」
再び、豆鉄砲を喰らう。
「一番の問題がお前じゃシキ。今の自分の生活を顧みてもみろ。毎日食っちゃ寝の生活を繰り返し、起きている時間はひたすらゲームをしている。これでは下の者に示しがつかんだろ」
「いや! それと下界に行くことの何の関係があるのさ!」
「儂はお前を一人息子として心底可愛がってきたがな、ここ数年のお前を見ていると少し甘やかしすぎたかと思ってなあ・・・」
「はい、全くその通りでございます」
主人の言葉にうんうんと頷く桃花。
そんな二人の態度にシキが慌て始める。
「だ、だからって別に下界に行く必要はないじゃないか! ボクの態度が問題ならこれから!」
「いや、このままお前をここに置いていては何も変わらないと言う結論に至った。お前には一度下界で人とりで暮らしてもらい、人々生活を共にして下界のことを学んでもらう」
「なーーーーーーーー!!」
開いた口が塞がらない。そう、シキはただでさえ引きこもり気質の出不精なのだ。実家でニート生活を満喫していたような人間が急に家を出ろと言われたらこのような反応になるのも無理はない。
「い、嫌だ!! ボクは絶対に行かないからな! この自由気ままな怠惰な生活を続けるんだ! 好きな時に起きて、好きな時に寝る! 起きてる時間はゲーム! 漫画! アニメ! 主食はお菓子! ずっとゴロゴロゴロゴロ! この部屋の中こそがボクの理想郷であり聖域! 下界なんてぜっっっったいに行かないからな!! 一生引きこもり続けるんだ!」
およそ親が聞いたら側頭しそうな言葉をこれでもかと吐き続ける。これが神になろうと言うのだから世も末である。
「・・・どこで育て方を間違えたか」
「心中お察しいたします」
自分の息子の堕落ぶりにもはや言葉も出ないと言った様子の父をそよに、シキは続ける。
「とにかく! ボクは下界になんか絶対行かないからな!!」
「まあ、そう言うと思っておったわ」
そういうと、シキの父はスッと右腕をシキの前にかざす。
「な、何だよ・・・」
「だから、今からお前を下界に送る」
「なっ・・・!!」
そういうと、シキの父は目をつむり、言葉を紡ぎ始める。
「我、彼の地を治めし者が命じる。 我が息子、シキを彼の地へと誘え・・・」
その言葉と共に、シキを中心として床に光の円が広がっていく
「ちょっ! あまりに急すぎるだろ!! 絶対に行くもんか!!」
これでもかと部屋の端にある柱にしがみつき、光の円から逃れようとするが、その円はシキの後をどこまでも追ってくる。
「心配するな、住む場所やしばらくの食事は用意してある。その他諸々の手配もしておくからな」
「いや、そう言う問題じゃ・・・!」
「シキ様、私も最低限のサポートはさせていただきますので、ファイトです」
「いやだから!」
シキの意思に反して、光はどんどんん強まってき、ついにはシキの体が中に浮き始める。
「じゃ、頑張って来いな」
「ふざけんなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
その捨て台詞を吐いた瞬間、まるで元からそこには誰もいなかったように、シキの体が消えてしまった。
・・・・・・・・彼の服を残して。
「あ、転移術に服も指定するの忘れとった」
「主人様・・・」




