はじまり
「ルイ。単刀直入に言う。このパーティを出ていってくれ。」
珍しく3日も休みを取った後の日の昼、俺を呼び出したレクスが開口一番そう言った。
彼は新進気鋭の冒険者パーティ『十三番目の英雄』のリーダーであり、この国に5人しかいないAランク冒険者の1人だ。
「は?え、いや、ま、待ってくれ。どうしてだ。どうして急にそんなこと...」
「わからないか?あまり言いたくはないのだが、しょうがない。」
レクスは頭を掻きながその続きを語る。
「もうお前は俺たちのレベルについてこられないからだ。自覚はないか?なら教えてやる。ひと月ほど前から俺たちはAランクダンジョンに挑戦し始めた。その時から徐々にお前の動きが皆に合わなくなってきた。なぜか?それはお前が敵と味方の動きを把握できなくなっているからだ。前から兆候はあった。微妙に前進後退のタイミングが合わなかったし、合図にもワンテンポ遅れることが多かった。それがここひと月顕著になっている。今より難易度の低いダンジョンであれば俺たちがフォローすることもできただろうが、ここからは俺でも十分死ぬ可能性のあるダンジョンだ。足手まといを連れ歩く余裕はない。」
言われてみれば確かにそのような状況に心当たりがあった。皆と違うものを見ている感覚は確かにあった。俺は、俺はいつの間にかお荷物になっていたのか...
「...これは皆の総意なのか?」
「そうだ。お前以外皆の総意だ。」
俺の問いかけにレクスはそう答える。俺は何も言えなくなる。時計の音がいやにうるさい。呼吸の音がやけに他人事に聞こえる。
ここまで来たら否はない。俺はひとつふたつ呼吸を整えて、答えた。
「...わかった。パーティーから出ていく。」
「そうか。よかった。昨日までの報酬は後でギルドを通じて渡す。今までご苦労だった。」
レクスは俺の答えを聞いて答えた。その声はいやに冷めて聞こえた。