第六幕 アオハルってのは定義は人それぞれの概念に過ぎないって何言ってんだお前
演劇部お家騒動が終わって、いつも通りバカと話をする重屋。
すると、江口が青春の話をし始めて野々原がそれに乗っかって言い争いをし始めた。
江口が言うには、青春とは「友達と一緒にずっといて、それでいて喧嘩して、でもそれは仲がいいからで、大喧嘩しても結局写真を撮る仲」らしい。
でも、野々原が言うには、「青春ってのは、少なくとも個人個人が考えている概念に過ぎなくて、江口の言ってることは理想に過ぎないんだ」とのことだ。
そしたら、江口が反論するような口調で「何言ってんだお前」って言った。それで、「青春」の定義について2人が口論をしてたら岡崎がやってきて、「バカ2人は黙ってろ」って。
野々原は「岡崎にバカって言われても俺は耐え抜く」みたいなこと言ってたのに、いざ言われるといつも通り萎れちゃって、江口の事を「エリンギだの水を失った魚だの言えない人間」ってことが分かって、余計に岡崎にからかわれるようになった。
多分こういうのを青春って言うんじゃあないかな。
でも、そんなこと言ったらまた野々原を傷つけるから俺は言わないようにする。
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江口は呟く。
「野々原ってよぉ、そういえばよぉ岡崎さんにバカって言われた時は水でしなしなになったほうれん草みたいな感じで萎れるけどよぉ、他の女子にバカって言われたらあいつどんな反応するのかねぇ」
津山は乗っからないって思ってた。この時までは。乗っかってきたんだ。こんなしょうもない議論に。
「確かに。野々原には「バカ」って言われて萎れる定義があるのかな?」
「僕の説だ。2つある。1つは「かわいい もしくは 美人」って思ってる人間にバカって言われると萎れるという説。」
「そしてもう1つはー」
突然ドアが開く。
中に入ってきたのは、例の女子3人組だ。
茶髪の桐生、ちっちゃい渡邉、清楚っぽい鈴本。
「えっとよぉ、確かあいつが好みって言ってたヤツは...渡邉さん...だったっけなぁ?」
「それはお前が好きって言ったやつじゃあないの?」
「じゃあ桐生さん?」
「それだぁそれそれ」
江口は多分、記憶力が鶏である。女をチラチラ見る時間を、勉強に使えばいいのに。重屋はずっとそう思ってる。
噂をすれば、こちらにやってくるもので。
桐生がこちらにやってくる。
「なぁ、そこのバカ3人なんか噂でもしてたのか?」
意外と男勝りな桐生さん。
口ぽかーんと開けてアホ面をかます江口、萎縮する津山。保健室で回復した野々原。変化なし、重屋。
「い、いやなんでもないよ桐生さん」
「いいや嘘だね。絶対なんか話してたろお前ら」
「ヒィッ」
重屋だったからチビらなかった。野々原だったら失禁してた(失礼)
「なんか言えよ?」
アホ面の江口が直ぐに顔を戻してサポートする。
「い、いや、ね?そ、そそそそそその...」
「え?」
「そそそそのかくかくが(略)」
「ふーん。まぁいいや。」
3人は生きのびた。桐生は多分前世がおっかない人である。そうじゃあなきゃそんな本場のスケバンみたいな話し方なんてしない。
「やっべぇチビりそうだった。」
「ちょ...っと怖かったな...」
「あぁ、野々原なら死んでたな。」
3人が口々に言う。
「野々原?」
桐生が聞き返す。
「え?知ってるの?野々原?」
「当たり前だろ?岡崎ちゃんがバカって言ってる奴だろ?」
「(ちゃん付けするんだ)知ってたんだ」
「多分、野々原の事が好きなのかもな。知らんけどね。」
それを聞いて、江口はこんな妄想をした。
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「じゃあなぁ野々原」
「んじゃな江口」
「よし、帰るか」
「待って!」
「岡崎?どした」
「このバカ!!」
「え?」
「どうして乙女の気持ちに気づかないの!?このバカ原バカ太郎!!」
「(失神する野々原)」
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いやなビジョンしか思いつかない。例え両思いだとしたとてあの二人は絶対に続かない。野々原がバカと言われすぎて死ぬか、野々原の貧弱さにドン引きして縁を自分から切る岡崎かの2択しか重屋の頭の中に無かった。
津山は一応聞いたんだって。
恋愛的に見てないんだってさ。桐生さんのが乙女なのかもしれない。めっちゃ怖いけど。
しばらく保健室で休んでいた野々原が帰ってきた。
そういえば、設定的に野々原は演劇部であるが演劇部にいる描写が殆ど書かれていない。書いてないだけで、刑部先生との対立には立ち会ってる。
腐っても演劇部の野々原 蓮太郎。女子にバカと言われて休んでる貧弱なチャラチャラ野郎。だけど根はいい奴。
江口が野々原に試す。
「お前、桐生にバカって言われてるぞ」
「ふーん」
興味を示してない。
そういえば、津山が俺だけに教えてくれた。
「多分、のっちが好意を示してる人にバカって言われると萎えるんじゃあないかな。」
という説。
でも、野々原は3人の中だったら桐生が好きって言ってたし、その説はないと思う。
「もう、野々原に聞くしかないと思う。」
重屋はそう思い、津山も心が通じているのか、納得していた。
そういえば、四バカ組はあだ名で呼んだり本名で呼んだり呼び方が結構変わりがちである。
「のっち、ちょっと来て」
「ん〜?」
「お前ってバカって呼ばれても本当は何も思わないだろ」
「当たり前じゃん。なんか知らないけど岡崎に言われるとすっげぇ萎えるんだよ」
単純に岡崎がいけ好かないらしい。
好きの対義語は嫌いではなくて興味が無いという言葉があって、多分彼が岡崎を嫌いと言っているうちはまだマシなのかもしれない。
野々原は性格上、本当に嫌いな人間には何言われても恐らくそっぽを向く。だから、嫌いなんじゃあなくて保健室で萎れながらもそういう、「いわゆる女子になんか言われてみたかった」というものが彼の中にあったとして、本当であれば彼はそれを叶えてることになる。
皮肉にも、彼の青春というのはさっき青春の定義で口論をした江口の定義にほど近いものなのであった。
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四バカ組の話はまだ続きます。ストーリーに直接関係しません。
次回はバカ4人でかわいいカフェに行くお話です。
おことわり
なんか漢数字とアラビア数字が入り交じってますね。
無意識のうちです。申し訳ない