表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/46

第29話 「褐色の疾風」と呼ばれた女盗賊が子を生みたい男、それが俺!(その4)

 気がついた時には、オレはアジトの洞窟の中にいた。

 手足は頑丈な鎖で縛られ、壁に繋がれている。

 何だか身体が熱っぽく、暑苦しい気がした。

 最初にやって来たのはゴラスだった。


「ナーチャ、やっと気がついたようだな。さっき飲ませた気付け薬が効いたか」


「ゴラス、貴様……こんな事をしてタダで済むと思うなよ!」


 オレはヤツを睨みつけた。


「おっとぉ恐ぇ恐ぇ。もうキスも出来ないな」


「どういう意味だ?」


「気を失っているオマエにどうやって薬を飲ませたと思う?俺様が口移しで飲ませてやったんだよ」


 屈辱で全身が熱くなるのを感じる。

 こんな下劣なヤツに唇を奪われるなんて。


「もう一つの薬は効いたかな?」


 ヤツはそう言うと手を伸ばして、オレの胸を触り始めた。


「テメェ!触るな!」


「どうやらまだ効き目は十分じゃないようだな」


「なんだと?飲ませたのは気付け薬だけじゃないのか?」


「ご名答。と言うより飲ませた気付け薬は『マタービの実』で出来た催淫剤なのさ。これをネコ系の獣人に飲ませると、一気に発情するって代物だぜ」


 オレは下唇を噛んだ。

 さっきから身体熱い気がするのは、その所為だったのか。


「ま、また後で来てやるよ、その時にはきっとオマエの方から『抱いて、抱いて』って迫ってくると思うぜ」


「誰がそんな事!」


 オレはそう叫んだが、ゴラスは笑いながら洞窟を出て行った。


 それから一時間後。

 オレは全身が火照る異様な高ぶりと戦っていた。

 身体が熱い。

 そしてオレの意思とは関係なく、身体が何かを求めている。


「だいぶ辛そうっすね」


 野卑な声が聞える。

 顔を上げるとネズミのヤツがいた。


「貴様……」


 荒い息の下、俺が辛うじてそう言うとネズミは驚いた顔をした。


「まだそんな口が聞けるんですか?ネコ系獣人には耐えられない欲求のはずなんですがね。前にこの薬を使ったネコ女は、三十分もしない内にヘロヘロでしたよ」

「……黙れ……」


 だがネズミはオレの言葉を無視し、オレの近くに寄ってきた。


「なぁナーチャ。アンタにももうこれ以上、どうする事も出来ないって解るだろ?このままだとアンタは砂漠に置き去りにされるか、ヘタをしたら殺されるかもしれないんだぜ」


 ネズミはオレの肩に手をかける。


「アンタは綺麗に生きようとし過ぎたんだよ。盗賊のクセにな。一般人に被害は与えない、金にならない奴隷商人の襲撃、リスクが高い役人への攻撃。その上、人質も取らない。こんな砂漠で暮らして女も捕まえて来れないんじゃ、不満が溜まって当然なんだよ。俺達は修行僧じゃないんだからな。みんなアンタには不満と恨みで一杯なのさ」


 そうしてネズミはオレの背後に回った。


「そこで相談だ。ナーチャ、俺の女にならないか?俺と組めば盗賊団の副団長にしてやる。どうだ、悪い話じゃないだろ?」


 そう言いながら、ネズミは背後から俺の胸に両手を回してきた。

 ゆっくりと撫で回す。

 熱く火照った身体がピクン、と反応してしまった。


「止めろ!気持ち悪い!」


 俺は朦朧としそうな意識をかき集め、抵抗の言葉を口にした。


「さすがに強情だな、でもいつまで耐えられるかな?」


「こんな事をして……アッ……ゴラスのヤツと……トラブルに……んっ……なるんじゃないのか?」


 ゴラスの荒々しい触り方と違って、ネズミの手は焦らすようにネチッこい。

 身体の快楽を求める本能が、頭の嫌悪感を打ち消すように襲ってくる。


「心配するな。ゴラスはいま、アンタを巡って挑戦者と戦っているよ。だがヤツを消す手立ては整っている」


「オマエラみたいな……卑劣なヤツらは……どっちもゴメン……だ」


 ネズミが蒸れるような息をオレに吹きかけながら言う。


「じゃあこのまま強引にヤッちまうか?ネコがネズミに犯されるってのも、中々面白い趣向だろ?」


 ヤツの片方の手が、胸から腹、そして股間に向かって降りていこうとする。


……クソっ、こんな奴の思い通りになんて……


 その時、洞窟に突然人影が現れた。


「ネズミさん!たいへんだ!とんでもない奴が現れた!」


 ネズミが怒鳴った。


「バカヤロウ!勝手にココに入ってくるなと、言ってあっただろうが!」


「すんません。でも緊急事態なんです。どうやら荷馬車隊の警備の奴らしいんですが、強いのなんのって。もう三分の一の仲間がられちまいました!」


「そんなバカな!」


 ネズミは慌ててオレから離れると「続きはまた後だ!」と言って、洞窟から駆け足で出て行った。


 オレはホッとした。

 だが身体はまだ疼いている感じがする。

 何とか意識を集中して、気持ちを整えないと。


 しかし五分もしない内に、ネズミのクソ野郎は戻ってきた。

 だがさっきまでとは様子が違う。


「信じられねぇ、チクショウ!あんな奴がいるなんて!」


 オレは顔を上げてネズミを見た。

 外で何があったんだ?


「あのゴラスが一瞬で殺られた!相手はまだガキなのに……」


 ネズミはオレに近づくと、右手に握った注射器を出した。


「これは催淫剤の解毒剤だ。これをオマエに打つ。オマエは外に出て、アイツと戦うんだ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ