さよなら
掲載日:2020/08/13
つらさを受け入れる。
痛みを受け入れる。
苦しさを受け入れる。
感じていることを、受け入れる。
あるがまま。
あるがままに。
さよなら。
別れの言葉もなく、
いつも終わりが来ることに気づかずに、
過ぎ去った時間を思うことしかできずに、
さよなら。
別れを受け入れて、
また朝が来る。
夜が明けるまでは、
時間が止まったように、
進んでいく。
さよなら。
ありがとう。
宙に投げかけた言葉が木霊に変わる。
繰り返す記憶の波が、緩やかに変化するのを感じ、あるいは気づきもせずに。
去っていく時間だけが降り積もる。
去っていった記憶にくずおれる。
そうであっても、ありがとう、と感謝を述べる以外に言葉が必要だろうか。
そうして発せられた言葉は虚空に消えていき、この世から去った魂のような曖昧な者に届けと願う。
願いは生者の物でしかなく、死者は沈黙を続ける。
沈黙の中から掬いあげた物を、覚えている。
忘れられずに。
そして、
ありがとう。
宙に投げかけた言葉が木霊に変わる。




