悪役令嬢、連れ去りました
一度書いてみたかったんですよねこういう系の話。ほら、悪役令嬢を連れ去ってまでラブコメする話ないような気がしますし。
「……ふふっ。今頃お父様たちはどうなっているのかしら。ね、カイト」
「そうだなぁ。きっとてんてこ舞いだと思うよ」
なんにせよ家から連れ出してしまったからねと呟いて笑う。
「いいのよ。それが私の本望だもの。貴方と添い遂げれるなら世界の果てでも行くわ」
「それはなんとまぁ……一生かけて幸せにするよ」
まだ朝焼けが少ししか見えてない道を、小さな馬車がガラガラと音を立てて走っていく。
隣にいるのはレティシア・レノワーズ。しかし、彼女はもうレノワーズの名を捨てたため、ただのレティシアだ。
そんな俺はカイト。なんとひょんなことからこの乙女ゲーの世界に転生してしまって、そこで推しキャラであるレティシアと幼い頃に出会った。
悪役令嬢と化していないレティシアは家族からも厄介者扱いされており、愛を知らなかった。
だから、いっぱい構ってやった。俺はレティシアの事が好きだし、レティシアは人の温もりを知らない。ほら、WinWinだろ?多分。
俺はレノワーズ家の執事見習として、レティシアの厄介祓いのようにレティシアの専属執事にさせられた。俺も家では厄介者扱いだったからな……。
まぁそんな同じ境遇にシンパシーをレティシアが、俺の事を励ましてくれたからもう好き。いっぱい好き。口説きまくった。
無事に俺に惚れてくれたレティシアは、人の愛というものに触れたことがなかったので、もう俺にぞっこん。態々厄介者コンビの様子を見に来る人もいなかったので、思う存分イチャイチャできた。
もうね、レティシアまじ可愛いの。耳元で愛を囁くと顔を赤くして「ひゃっ」とか可愛らしく悲鳴あげてくれるし、キスする時のあのとろんとした顔とかまじ可愛いし。もうね、ヤバい。
そんなレティシアも歳を取ればそれはもうたいそうお綺麗に。ほかの貴族からも縁談の話もてんてこ舞い。本来婚約を結ぶはずの王子との縁談の話も出てきた。
そしたらあのクソ親ども。無理やりレティシアを王子と婚約させようとしてきたから、もうなりふり構わずさらっちゃった。
もともと二人でどこか遠い国へ行こうと計画していたので、逃げるなら今しか無かった。
家から沢山ある宝石類を半分くらい奪って魔法とかで痕跡消して、真夜中に小さめの馬車を走らせた。御者の経験しといてよかったぁ。
「それでそれでカイト!この宝石類売ったら小さな家を建てて暮らしましょ!」
「レティ。もう先の話?」
「楽しみなの!カイトとこれから暮らす未来の話が!」
馬を操っている俺の服を掴んで、目をキラキラとさせる。
「……本当に勢いそのままで攫っちゃったけど良かったの?」
「いいのよ。あの家には何も未練はありませんし、それに好きなのはカイトだけですから」
「ん、嬉しいよレティ」
キスをしたかったが、俺の両手が塞がっているので出来なかった。代わりにレティシアが俺の頬へキスをしてくれた。
「ねね!どこ行きましょうか!」
「そうだねぇ……隣国だったら簡単にレノワーズ家なら追ってくるよなぁ……聖国辺りにしとく?」
「いいわね、着くまでの旅も楽しみだわ!」