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悪役令嬢に転生いたしましたので将来の為にヒロインを潰したいと思います

作者: よしの

 皆様はじめましてごきげんよう。ラディアータ公爵家長女、リコリス・ラディアータと申します。先日10歳となりました。

 そしてその誕生日の日に思い出しましたの。所謂前世記憶と言われるものと、この世界が乙女ゲーム『君に大輪の花束を』の世界であり、将来悪役令嬢と呼ばれヒロインと攻略対象者達に断罪される運命にある事を。


 ………マジか⁉


 いやいやいや………マジでか⁉


 なっちゃったらしいです。悪役令嬢。物語の中のお話だと思ってましたが……まあなっちゃったものは仕方ない。正直前世の死因とか詳しい個人情報とかはほとんど思い出せません。この世界がゲームの世界であり、大してやり込んでいた訳でもないと言う事くらいでしょうか。

 うん。やった事はあるけど特に思い入れがあったわけでもないんですよね。確かもっとどハマリしてた乙女ゲーあったハズなんだけどなぁ。今からでもそっちになれない?ムリ?はい。


 と言うわけで前置きはこの辺で。目下の目的はやはり断罪イベントを回避する事です。牢屋は嫌すぎますし、折角公爵令嬢と言うカーストほぼ最上位に居るのですから。うーん、どうするべ…。

 ゲームが始まるのは今から約3年後、私とヒロインちゃんが13歳になった時からで、15歳の卒業パーティーで断罪されるまでの約2年間が学園パート。その後攻略対象者とのイチャコラパートが続くが今の私には関係ないので省略。因みに私ことリコリスちゃんはどのルートでも断罪されます。現・私の婚約者である王子にも、騎士団長子息にも、宰相子息にも、急成長商人子息にも、弟にも。…弟にも!ヒドくない?確かに陰に日向にネチネチイジメたのはリコリス嬢ですけれども。仕方ない?そっかぁ。

 ですが回避出来るものならしたいとは思いますし、出来るはず。歴代の転生悪役令嬢達も様々な方法で回避してきたのだから!例えば凄く良い令嬢となって悪評を0にする。王子を目一杯甘やかして私から離れられない様にする。ヒロインちゃんと友達になって逆に味方にする。いっそ別の学園に入学する。エトセトラエトセトラ…。ぱっと思い付くだけでもこれくらいでしょうか。

 幸い転生したのはまだゲームが始まる前の世界。仕込む時間は沢山あるのですから、ゆっくり考えて……。


 ん?


 んん?


 そう言えば、ゲームのプロローグでヒロインちゃんは12歳の時に孤児院に居たのを義理の父母である男爵家に引き取られたのでしたっけ?そこからある程度の知識を与えられ、学園に。という流れだったはず。

 …今の私は10歳。まだゲームが始まる前。既に王子の婚約者ですから、ヒロインちゃんさえ現れなければ将来は安泰。そして私とヒロインちゃんは同い年なので、当然ヒロインちゃんも今はまだ10歳。引き取られるのは12歳。2年後。今頃は孤児院で天使の様な笑顔を振りまきながら遊んでいる事でしょう。まさか男爵家に引き取られるなんてつゆとも知らないままに。つまり、まだ男爵家令嬢ではないのです。


 ふひっ


 おっと。公爵令嬢にあるまじき笑いが出てしまいました。改めまして…。


 ふひひっ


 ……コホン。

 さて、そうと決まれば早速お父様の下へ参りましょうか。別に他意はありませんが、唐突に城下中の孤児院の視察がしたくなりましたので。私も10歳になりましたし、そろそろ市井の生活に興味を持っても不自然ではないでしょう。将来の為に今から勉強したいと言えば、娘に甘いあの親ならば二つ返事で了承してくださるはず。なあに、2年もあれば城下の全孤児院の視察くらいならば出来るでしょう。


 おっとうっさま〜♪


 ※※※


 と言うわけで、さくっと許可が下りましたので全く面白くもない視察を回っております。一つ一つの孤児院を巡り、たまに気まぐれで状況改善案を出したり、端金を寄付していたら、何故か評判がうなぎのぼりに上がっていっていますが、正直どうでもいいです。一部の国民からは聖女様とか言われてるみたいですよ、私。これぞノブレスオブリージュの体現者だとか。鼻で笑っちゃいますね。

 念の為、私と近い歳で抜きん出た容姿の女の子をおみや…もとい、メイド見習いとして引き取っているのもウケてるみたいです。特にお父様から。ちゃんと外にバレない様にして下さいね、と念を押していますので大丈夫でしょう。全く、あの癖さえなければ完璧な父なのですが。ただ私の計画にはある意味で追い風になっているのは間違いないでしょう。


 さてさて、そんなこんなで…何件目でしたっけ?孤児院多くない?捨て子か戦争孤児か知りませんがよくこんなにも居ますね。ついでに一部は貴族の非嫡出子だとか。案外私の異母兄弟も居たかも知れませんね、あのお父様の事なら。わが国の法律的には認知しない限りは関係ないそうですが。とか思いながら本日も視察をしていましたら…。


 いた


 ゆるくウェーブのかかった金色の髪は日の光を受けてキラキラと輝き、動くたびにふわふわサラサラと揺れています。透けるような白い肌にほんのり薔薇色に染まった頬。上質のサファイアのようなぱっちりとしたマリンブルーの瞳。あどけないながらも、確実に美人になると確信出来る容姿。間違えるはずもありません、ヒロインちゃんです。ゲームでも可愛く描かれていましたが、実際に見ると凄いですね。しかも性格も天真爛漫で優しく、気配り上手。そりゃ男爵家もひと目で引き取りたくなるはずですわ。王子も弟もコロっといきますわ。私が一瞬コロっといきかけたのは内緒です。内緒ですよ?

 あの子を見つけた段階で私の計画は半分成功したようなものです。男爵家が引き取れるのですから、公爵家に引き取れない道理はなく。おまけに私は聖女様(笑)らしいですから信用もありましょう。最悪札束ビンタならぬ白金貨ビンタでもすれば良いですし。


 いいよね?


 おっけー?


 だよね〜


 やはり金ですね。

 これでヒロインちゃんが男爵家に引き取られる未来はなくなり、我が家のメイド見習いとして招く事になりました。もちろん学園になんて行かせるつもりはありませんし、そもそも孤児院で最低限度の読み書きは教えています。必要ないです。メイドを辞めればワンチャンあるかも知れませんが、それはつまり我が家から脱走するという事。見習いに辞める権利なぞありません。

 必死で仕事を覚えて、朝から晩までクタクタになるまで働く以外に道はなく。ついでに一部はお父様のお相手もするのですから、他人事ながら頭の下がる思いです。絶対メイド如きに頭を下げたりはしませんが。


 と言うわけで私の計画の山場の一つ、男爵家の代わりにヒロインちゃんを引き取る事は出来ました。引き取ったヒロインちゃんをいつも通りお父様にお見せした所「良くやった」と謎のお言葉をいただきましたが、何故褒められたのでしょうか。リコリスちゃん10歳だからよくわかんなーい


 なんちゃって


 ふふっ


 きっとヒロインちゃんは近いうちにお父様の専属に大抜擢される事でしょう。公爵家当主の専属なんて、大変な名誉だと思いますよ。男爵家や他の攻略対象者はもちろん、いかに王子と言えども公爵お気に入りに手を出せるワケはありませんし。それに、おそらくお父様はヒロインちゃんを『奥』に入れるでしょうから会う機会すら低いでしょう。チャンスがあるとすれば弟がおこぼれに預かれるかも知れませんね。最もお父様が飽きた後ですからしばらく先になりそうですが。


 これでヒロインちゃんがヒロインになる事自体はおそらくなくなりましたが、それで安心する私ではありません。まかり間違って別の子がヒロイン候補になるかも知れませんからね。これからも孤児院巡りは続けていきますし、これはと思う子は積極的に引き抜いていきたいと思っています。件の男爵家にもこっそり監視を放って怪しい動きがあれば伝える様に言っています。

 流石に生粋の貴族令嬢には下手に手は出せませんが、そこは各家でしっかりと上下関係が叩き込まれている事でしょうからあまり危険視はする必要ないでしょう。学園に入る時点で大半は婚約者がいますし。


 そうそう、私の孤児院巡りの事を国王陛下と王妃様、それに私の婚約者である王子が耳に入れ、お父様が褒められたと言っていました。もちろんお父様の癖の件は公然の秘密です。

 市井の評判も良く、王家からの評価もある。表立って悪い事はしていませんから、後はこのまま学園に入学すれはこっちのもの。仮にライバルが現れてもバレない様に潰す用意はいくつかしてあります。

 あとは私がヘマさえしなければ問題なし。次期王妃の座は安泰です。さあ、左団扇な希望の未来が私を待っている!



 ただ、ひとつだけ疑問があるとすれば…

 ()()()()前の私は、別に悪役令嬢と言うわけでもないごく普通の令嬢でした。ゲームでは最初からかなりひどい性格だったのに。一体なにが私、いえ、彼女をあそこまで堕としたのでしょう。


 …ねえ、お父様?

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです! お父様クズだと思って読んでいたら最後の最後にドクズっぷりが知れましたね。 主人公も孤児を身代わりにして難を逃れているのでクズですけどね…お父様にも弟にも飽きられたらどうする…
[良い点] ヒロインを発見できれば、どうとでも出来ますよね。 ハッピーエンド? [一言] お父さん、手を出しちゃうのでしょうか。 不穏な終わり方です。
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