3.
「ねえ私この前1Bの教室でね、鈴乃にそっくりな子見かけたんだけど。もしかして以前言ってた双子の妹さん?」
昼休み、一緒に弁当を食べていた級友の一人に尋ねられる。
「1Bならそうだと思う」
「へーやっぱり。本当にそっくりでね、私びっくりしちゃった」
私には双子の妹、里内涼香がいる。一卵性双生児の私達の外貌は酷似していて昔からよく名前を間違えられる。一般的に成長するに従って体格の差などが生じ多少は見分けやすくなるのだが……
ふと教室の後方のドアからキョロキョロと中を見渡す女子生徒の存在に気づく。あちらも私のことを発見したようでこちらに歩いてくる。手には見慣れたランチバッグが握られている。
「お姉ちゃん! お弁当逆だった!」
そのやや大きめの声に教室にいた他の生徒たちの視線が集まる。肩に少し掛かるくらいのふわりとした軽やかな髪にぱっちりした目。そんな外見の彼女は私と瓜二つで、周りの目線が二人の間を行ったり来たりしているのを感じる。
「もう学校ではその呼び方止めてって言ってるでしょ。それに弁当はどっちも同じじゃないの」
「違うよ。私の方にはピーマン入れてないし、それに唐揚げも多めにしてたのに。あーもう殆ど食べちゃってるじゃん」
呆れ顔で立ち上がった私は涼香の手を取って教室の外へ出る。少し説教してやらねば。
自分の席に戻り小さなため息をつく。いささか厳しく言い過ぎたかもしれない、後で謝らないと。それに食事をする時間も奪ってしまった。
「それにしても二人ともよく似てるのね。そのうち間違えそう」
ゆいがにこにこ顔で言う。そう私達はよく似ている。顔は遺伝的に同じだけれど、髪型も身長も同じ。常に一緒に過ごしてきたからこんなにも似通ってしまったのだろうか。
その日の夜、入浴を済ませた後涼香の部屋に侵入した。彼女はベッドの上に打つ伏せになって何やら小説を読んでいた。声をかけると慌てて本を閉じて私の方を向く。
「何?お姉ちゃん」
頬を膨らませていて不機嫌そうだ。内心この膨れっ面を可愛いと思いつつ、私はきまり悪そうな面持ちで今日のことを謝る。
「昼休みはごめんね。その、つい色々と」
「いいよ別に。許してあげる」
その言葉に心の靄はあっという間に晴れ、嬉しさのあまり彼女に抱き付く。いい匂いだ。涼香は呆れたような表情を浮かべる。
「もうお姉ちゃんいきなりやめてよ」
そう言いながらも抱きしめ返してくれた。
「許してくれてありがとう。私涼香が大好き」
彼女の柔らかな手が私の頭を優しく撫でる。
「全く……家では本当に甘えん坊さんなんだから。私も大好きだよ、お姉ちゃん」




