城下町~ギルド
「それじゃあ、街を案内するね!!」
城を出た直後、俺に明るく話しかけてくるエリー。
(可愛いな~!)
そんなことを思っていると、エリーは、早く早くと言わんばかりにこちらを向いて待っている。
俺も足を進め、城下町を一通り見ることにした。
城下町は、商店街がいくつも合体したような形になっており、活気が溢れている。
「これこれ!!これが、この国での名産品!!甘くてサクサクして美味しいの!!!食べてみない?」
エリーが進めてくれたお店は、日本では屋台で売っているチュロスのようなものだ。
根っからの甘党であった俺は即答した。
「やった!」
エリーは、俺の分と2つ買って持ってきてくれた。
「あっ、ごめん…!俺、お金が…!」
そういえば、俺はまだお金を持っていない。
魔人を討伐したことで、宿は無料で借りることができているのだが…。
(これは、本格的に働かなければいけないな…!早めにギルドに行こう!)
「いいのです!!むしろ払わせてください!!命の恩人なのですから!!!」
エリーは両手を前に出してバツ印を示し、奢りを強調した。
俺は感謝の言葉を述べ、いつか今日のお礼をすることも約束した。エリーは断ったが、この世界も日本と同じでギブアンドテイクが基本だろう。
(ギルドで稼げるようになったら、エリーの好きなものをプレゼントしよう。)
その後も街を周りながら、いろいろなお店に入った。中でも興味深かったのは、装備品や魔法のお店である。
装備品のお店では、剣や盾、そしてネックレスや指輪など幅広く売っていた。
この先、戦闘では「トランス」が使えるとしても、剣や盾は必要になってくることだろう。
指輪やネックレスには、マジックアイテムというものもあり、身につけていると使える魔法や、身体強化の効果があるらしい。
魔法のお店では、魔法そのものを習得できるということがわかった。
エリーから聞いた話によると、魔法の販売には法律で定められたルールがあるとのこと。
魔法を買うには、2つの条件を満たしている必要がある。
1つ目は、ギルド所属であること。
これは、確かにわかる。魔法を悪用する人がいたら困るからな〜。
2つ目は、その魔法に合うランクに達していること。
自分の魔力量より大きい魔法を習得しようとすると、魔力障害という病気になることもあり、一生魔法を使えなくなることもあるのだとか…。
(まぁ、俺はここでどんな魔法があるのかを知るぐらいでいいな。あとは、魔物ならテイクチャージをすればいいことだし!)
最後に興味深かったのは、露店である。
露店の中には、素材店のようなものがあり、一般的な魔物の素材からレアな魔物の素材まで売っていることがあるというのだ!さっきエリーと見たときにも、ドラゴンの鱗が置いてあった。
(俺のスキルには、役立つかもしれない!!)
そんなことを思ったのである。
店を見終わり、最後にギルドに案内してもらった。
ギルドの中に入ると、みんなの視線が集中した。
それは、もちろん俺ではなく、エリーにだった。
「うわっ、めっちゃ美人な兵士さん!!」
一緒にいて思ったが、エリーはこの世界の男たちからも一目置かれるほどの美人らしい。
そんな視線にも目をくれずに、俺の方を見て
「あっちが、受付です!」
そう言って、2人で受付に向かった。
周囲の冒険者たちからの嫉妬の視線を感じながらも進んでいく。
(強そうな人たちもたくさんいるな~!)
男女比でいうと、ちょうど半分ずつぐらい。
男の方が多いイメージだったが、近接戦闘や遠距離戦闘など、役割も様々あることで男女がバランスよくいるのだろうか。
「いらっしゃいませ。勇者…いえっ…!リョウさんですか?」
受付の人は、王様なら話を聞いていると言い、別室に案内してくれた。
ギルドの説明を受けながら、まずは鑑定をすることになった。
ギルドで鑑定をした後は、自分のステータスを見ることができるようになるのだとか!
俺は、用意された水晶に魔力をこめた。
すると、不思議な青白い光が俺を包み込む。
数秒して、俺の頭の中にステータス情報が流れてきた。
それと同時に、水晶から紙に光が伸び、ステータス情報が印刷されていく。
「少々お待ちくださいね。」
印刷が続いていく。
まだ続く。
そして…。
俺のステータス情報の印刷がなかなか終わらないのを見かねて、受付の人が印刷中のものを見に行き、悲鳴を上げた。
「キャーッ!ありえない!!!こんなステータス…!!今すぐギルマスを呼ばないと…!!もう少々お待ちください!!!」
慌てた様子で立ち去り、ギルドマスターと共に戻ってきた。
慌てるのも無理はない。
俺も自分のステータスを見て驚いた。というか、驚きすぎて固まっていたのだ。
ギルドマスターが、やっと印刷が終わったステータス情報を見て、一言。
「ランクはSからスタートでよろしいかと…!!」
俺のステータスは、たったの数回の戦闘でとんでもないことになっていたのだった。