#2 ファースト・コーナー #夏・ツーリング・海へ
ノイジー・エナジー #2 ファースト・コーナー
#バーゲンセール
バーゲン♪バーゲン♪夏物最大半額セールゥ~♪
女子のサイフを狙ったイベントの季節がやって来ました!まぁ、バイク用品店はむさい男物ばっかりだけど、最近はレディースコーナーも出来て、品揃えもだいぶマシになってるよね。
今日は、中古とはいえ真新しいバイクをコカシてしまった可哀想な先輩のことは気にしないで、バイク用品店で買物です。
膝すりツーリングパンツは欲しいけど、やっぱり公道で飛ばすのは怖いし、レーシングスーツを買うまで我慢することにしました。夏用ジャケット、夏用グローブ、でも転んだ時も考えて、プロテクターインナーと膝プロテクターは買っておくことに。二輪男子部のジムカーナバトルでもらった割引券が活躍したおかげで随分と節約できたよ。嬉しいな。
レーシングスーツを買う時には、今の装備品では力不足なので、フルフェイスのヘルメット、プロテクタの付いたレーシングブーツ、革製のレーシンググローブもセットで必要なのだ。この夏はバイトでお金をためて、早くスーツと一緒に買いたいな。
バイク用品店で夏物のウェアを揃えた後で、ツーリングの相談。御厨先輩がコケたバイクの修理で財布が寂しくなっている。最初は泊まりも考えていたけど、残念(本っ当に!)ながら、日帰りになってしまった。御厨先輩と熱い一夜が過ごせるかもしれなかったのに。惜しいことをした。
日帰りでも折角だから海にしよう。どうせなら綺麗なところがいい。結果、伊豆白浜に決定。じゃじゃん!天崎先生の実家が伊豆だというウワサなので、聞いてみたら近々休みを取って里帰りするらしい。アタシ達もそれに合わせて日程も決まった。夏子は何か妄想したのか、ニヤニヤし始め、ジュルルとヨダレまで垂らしている。こらこら、いい加減にしなさい!
というワケで水着も買いに行きましたぁ。バイクを修理している御厨先輩は置き去りにして、吉野先輩のベスパを取りに行ってね。夏子のバイク習熟も兼ねて、近場のショッピングモールに出かけました。色々試着して楽しく悩んだ結果…!まぁ、どんな水着かは海へ着いてからのお楽しみ!
#夏・ツーリング・海へ
お盆過ぎはクラゲが出るから、その前に海へ!天崎先生の里帰りとタイミングが合って本当に良かった。
今回は海がメインでツーリングは手段。伊豆の白浜が目的地。水着や遊び道具はバックパックに詰め込んで出掛けます。
待ち合わせはいつも通り朝早くファーストフードの駐車場。今回は天崎先生が高速道路じゃないと一緒に行かないと駄々をコネたので、東名のインターにほど近い立地のところ。
やって来た天崎先生はハヤブサに乗っていた。
「やっぱり自分の名前と被ると嬉しいだろう。名前を書く必要もないし…。アハハ…。」
だって…。あれ?天崎先生ってこんなキャラだったかな?バイクに乗ると性格変わるってベタな設定なのか?メガネも外して、バイクに乗る時はコンタクトなんだって。別人か?
早速、高速に乗り、まずは厚木まで。料金所の一般出入口で通行券を取り現金を払うアタシと御厨先輩以外は、ETCという文明の利器を装備している。社会人の先生はともかく、吉野先輩と夏子はどういうことなんだ!
「親が勝手に付けちゃったの。その方が安いんだよ?」
「そうそう、お得な感じ。」
甘い!甘いよ、アンタ達の親は!
厚木からは小田原厚木道路で小田原方面へ。平塚インターまでは平らな道で周りも平らな土地が広がっている。平塚インターを過ぎると、アップダウンの連続する山の中に入るが、カーブが急になることは無くスピードを落とすことはない。
平塚料金所を過ぎてしばらくいくと、もともと吉野先輩のベスパに合わせてそれなりにのんびり走っていたのだが、先頭を走っていたハヤブサの天崎先生がチラチラとミラーを気にし始めた。そのうちに徐々に減速してきっちり制限速度で走り始めた。
アタシ達の後ろにはいつの間にか国産車のセダンがピタリと追走しているが、その後ろが徐々に詰まり始めている。やがて痺れを切らした外車が追い越し車線から唸りを上げて抜いて行った。その途端、後ろにいたセダンが追い越し車線にでると外車を追走し始めた。いつの間に出したのか、屋根の上からは赤い回転灯がピカピカと光っている。
ウウ~、ウウ~~ッ!
なんとセダンは覆面パトカーだった。天崎先生なんで分かったの?
しばらく行くと路側帯に止められた外車にお巡りさんが切符を切っていた。危ない危ない。天崎先生ありがとうございました。
道は小田原西で箱根方面に向かい、箱根口のインターを過ぎて箱根新道へ。この先は急坂、七曲りの山道です。坂の途中でエンジンがオーバーヒートして、白い煙を上げて止まっているトラックがいる。かと思うと、冬場にはチェーン脱着場所になる広場に白バイがスタンバっていて、目の前の登坂車線でスピード違反するバイクやクルマを取り締まっている。お役目ご苦労様です。
七曲りはまあまあ楽しめるけど、ベスパの吉野先輩はちょっとお疲れです。
『登り坂しんどいよう。疲れたよう。』
例によってインカムではブツブツ言う吉野先輩のボヤキが聞こえてきた。
『ミカリン、少し先の十国峠で休憩だ。もうちょっと頑張れ。』
御厨先輩がなだめすかして何とか箱根峠まで登って来たものの…。
『…ねえ、交差点の向こうが見えないんですけど。』
箱根峠名物の濃霧が発生。箱根新道の途中から霧が出始めて、イヤな予感はしたんだ。
視界の悪い箱根峠を左に入って伊豆スカイライン方面へ。ここから熱海峠までは以外といいくねくね道で、普段は景色も悪くないのだが…。しばらく霧は濃くなるばかり。対向車もライトを点灯して走ってくるが、くねくねしている分近くに来るまで分からない。十国峠に着いた時は正直ホッとした。
まだ朝早いため残念ながらケーブルカーも売店もやっていない。広い駐車場はガラガラだ。天気が良ければ景色もいいんだけどと、天崎先生も残念そうだ。夏子は天崎先生がいれば十分楽しいですとか言い出したが、先生は苦笑していた。
アタシはバックパックからペットボトルを取り出して喉を潤した。朝だし山の上だからまだ涼しいけど、夏場のバイクは水分補給が重要です。
「少し晴れてきたね。」
幸いなことに霧が薄くなって、時折日光が差すようになってきた。ミカリンも元気を回復したようです。
さあ、出発だ。
熱海峠の料金所はETCはご利用いただけません。ニコニコ現金前払いです。
天崎先生は財布を出すのもしまうのにもなんだか手間取っていた。しばらくするとアタシの番だ。
「行き先は?」
料金所のおじさんが何処まで行くのか尋ねる。
「終点までお願いします。」
「天城高原ね。料金は…」
料金を払うと通行券をくれる。
「出口で必要だから無くさないでくださいね。」
アタシは通行券をポーチにしまうと、
後ろの連中を待ってバイクを左に寄せた。ようやくみんなが揃うと伊豆スカイラインのスタートだ。
道を進んでゆくと霧が晴れてきた。尾根伝いの道は適度なワインディングロードにアップダウンがあって、ライディングも楽しいのだが、何より景色がいい!左手には海の向こうに大島が見えるし、右手には西伊豆の山が連なるのが綺麗。
『天気が良ければ後ろに富士山が見えるんだけどね。』
天崎先生がインカムで教えてくれる。今日はまだ雲がかかっているかも。
途中でハングライダーが飛び立つ場所があって、朝の風に乗って飛び立つ人達が空を漂っていた。気持ちよさそう。優雅だね!
尾根伝いの道はやがて山を下り、谷にそった山あいの道に変わってゆく。田畑がひろがり、茶屋があったりして景色も変わるが楽しいワインディングはしばらく続く。
冷川のインターを過ぎ、最後のくねくね道。とうとう終点の天城高原料金所だ。アタシと吉野先輩は先に料金所を通過して待っていたが、またもや天崎先生がもたついてる。どういうワケか通行券が見つからないらしい。
「まったく、困ったオッサンだ。」
吉野先輩がばっさり言った。
「晴海!先に行こう。アッチはでっかいバイクだし。スグに追いつくでしょ?」
え?大丈夫かな?アタシ、道知らないよ?吉野先輩がインカムで先に行くと言ったけど、天崎先生はワタワタしていて、あぁとかそうとか生返事。ミクリンと夏子は聞いているのか、いないのか?
「行こ!」
プルルルンッ!
吉野先輩は先に行ってしまった。アタシも慌ててついて行く。
早速の分かれ道が目の前に。後ろを振り返ると料金所が見える。まだもたついてる。左に行くと伊豆高原、右に行くと天城高原。さてどっち?
「え?ちょっと!」
吉野先輩は迷わず右に行く。アタシもついついついて行く。
『ホントにこっちで良かったんですか~?』
『大丈夫だって!私を信じなさい!』
え~。怪しい。
やがて道は登って細くなっていく。周囲の森も深くなっていくようで、吉野先輩も自信がなくなってきたのか、スピードが落ち始めた。そこへ…。
『あ!危ない!』
吉野先輩が急ブレーキを掛けた!
そこへ飛び出してきたのは?
『…鹿?』
一匹の子鹿が道路を渡ろうと出てきたのだ!危うく鹿にぶつかるところで、ドキドキしているアタシ達を不思議そうに眺めながら、子鹿は悠々と道路を横断して行く。
「危なかったぁ。…あ、見て、晴海!あんな所にもいる。」
吉野先輩の指差した森の中から、数頭の鹿の群れがやって来て、道路を渡ってゆく。子鹿に合流すると反対側の森の奥に消えた。
「ねえ、可愛いかったね!」
二人して、ああカメラで撮っておけばよかったとか盛り上がっていると、吉野先輩のスマホに着信音。
「ああ、ミクリン?…うん?右は間違い?…え?…あ、ハイ…ゴメン。戻ります。」
なんだ…やってしまったか、ミカリン。
「…晴海。戻るぞ。」
え?それだけ?アタシはちょっとフクれたけど、鹿も見れたし、まぁいっか?
アタシ達は戻って来ると、三人と分かれ道のところで合流した。インカムではミカリンと天崎先生がなんだか言い合っていたが、ようやく双方とも気が済んだのか、お互いに謝って和解したようだ。
目的地の白浜はまだ先だ。お椀を伏せた様な大室山を左手に見ながら、国道135号に向かう。天崎先生が、大室山のすり鉢の中でアーチェリーをしたことがあるらしい。今は、やっているのかな?
突き当たりの国道135沿いに公園があった。例によって吉野先輩が寄ってみたくてグズり出すが、まだ開店前ということで近くのコンビニで休憩。
「この辺て不思議な博物館が多くない?」
…ですね。なんでか、伊豆高原近辺は国道沿いにもあるし、案内看板もその手のモノが目に付く。別荘地もあるみたいだし、ヒマな人が見に来るのかな?
もう一時間も走れば目的地に到着する。頑張って行こう。
伊豆と言えばやはり温泉ですね。135沿いには日帰り温泉も温泉宿もたくさん出てくる。そのうち温泉に浸かってのんびりしたいね。
海辺を走ったり、岬を回ったり、アップダウン、ちょっとくねくね道もある。気が付くと断崖絶壁の上を走っていたり、海水浴場のすぐ脇を走っていたり、変化に富んで楽しい。
ふと山の上を見ると発電用の風車がいくつか立っている。海辺の切り立った山の上にそんなモノがあるなんて、なんだか秘密基地っぽい。小さい頃に魔女アニメとともに放送していた特撮ヒーローみたいだ。ちょっとワクワクする。
#砂浜
『見えたぞ。白浜だ。』
天崎先生がインカムで教えてくれた。断崖絶壁の道の上から、確かに白い砂浜海岸が見えた。
『いいね、いいね。テンション上がる!』
坂道を下り、くねくね道を進むと砂浜の広がる海岸線を走っていた。リゾートホテルもあって、いい感じです。
駐車場にバイクを止めて、事前に調べておいた更衣室でお着替えです。
残念ですが、着替えのシーンは割愛させていただきます。
お待たせしました。海辺の戦闘服、水着紹介です。
エントリーナンバー1、女格闘家ちえり!レモンイエローのショーパンと、ピンクのサクランボ柄バンドゥビキニ(透明肩紐付き)で、スリムで躍動感溢れるイメージが倍増しです。
アイテムとしてピンクの水中メガネとシュノーケルを追加して、男の子より水遊びが好きなイタズラっ子そのものです。
エントリーナンバー2、爆発のオンナ夏子!制服の上からは想像のつかないメリハリのあるボディを黒のスカートと一体のAラインワンピースで包み、落ち着いた大人フェミニンな装いです。サングラスとつば広のストローハットが、いいオンナを演出しています。
しかし何故か手には砂遊び用シャベルとバケツのセット(恐らく百均の)を持っているのですが…。この辺のギャップがマニアックな男心をくすぐるのでしょうか。
エントリーナンバー3、電脳ガールミカリン!ボリュームのある胸をオレンジ柄のホルターネックビキニに収め、透け感のあるグリーンの短いパレオで、エロカワな雰囲気を匂わせています。
黄色い大きな浮き輪がアクセント。泳げないというウワサもある彼女ですが、健闘を期待しましょう。
エントリーナンバー4、わりと真面目なイケメンライダーミクリン!水色のボクサーパンツで至って普通です。筋肉質ではありませんが、引き締まったボディと長身がモテ男のオーラを漂わせています。
思ったより色白の肌は日焼けに弱いのか、白のラッシュガードを羽織り、白いキャップをかぶっています。
エントリーナンバー5、クールな顧問天崎先生!落ち着いたグリーンの半ズボンタイプに、生成りの地にヤシ柄のアロハシャツ、麦わら帽子と濃いサングラス、生徒の夏休み期間で伸ばし始めたヒゲが、いつもとは違うワイルドな雰囲気を醸し出しています。
今日は引率の先生というよりは、若いオンナ達をはべらすヤンチャなお兄さんな感じです。ミクリンは舎弟かパシリ?みたいな、怪しい御一行様です。
「みんな!日焼け止めは塗ったか?」
「おー!」
いつの間にやら天崎先生が音頭を取って、とにかく最初は泳ごうということになった。貴重品はロッカーに預けてしまったので、みんなで海に駆け出した。
アタシ達は足がつくくらいのところで泳ぎ始めた。吉野先輩は大きな浮き輪を付けてプカプカ浮いてる。御厨先輩とアタシは浮き輪につかまりながら泳いでいる。夏子も先生と一緒で楽しそう。
外海に面しているからか、たまに高い波がくる。特に沖合を船舶が通ってしばらくするとザッパンザッパンと大きな波が打ち寄せる。折しもタンカーの通過に伴う大波がうねうねと押し寄せてきた。
海面がぐう~っと上り、さぁ~っと下がる。立っているアタシ達は、海面が上がるとジャンプしないと、アタマまで水に浸かる。御厨先輩はジャンプするタイミングを外し、どっぷり水に沈んでしまった。
「きゃあきゃあ!ミクリン!」
浮き輪の吉野先輩はプカプカ浮いていたが、上がって下がる度に岸の方に運ばれていく。やがて、波打ち際に近くなり、どっぽ~ん!吉野先輩を運んでいた波が崩れ、浮き輪ごとひっくり返った。
「プパーッ!」
一度は沈んだものの、波打ち際だ。足をついて立ち上がった。御厨先輩も何とか泳いで帰ってきた。夏子と先生はまだ波を楽しんでいる。
「はあ、やられた。疲れたぁ。」
「大丈夫ですか?」
アタシと吉野先輩はパラソルに戻ってきた。吉野先輩はバックパックからタオルを取り出すと、ちょっと休むと言って座り込んだ。
「大丈夫だよ。晴海は泳いでおいで。」
「じゃあ、行ってきます。」
アタシが水中メガネとシュノーケルを持って海へ向かうと、御厨先輩が波打ち際に座っていた。
「お?いいもの持ってるな。」
「貸しませんよ。女の子用ですから。」
「それは残念。…待った、一緒にいくよ。」
そのまま夏子達の方に行こうとしたアタシを、御厨先輩は立ち上がって追いかけてきた。波打ち際から波の砕ける向こうに出ると、さっきまでのうねりがウソのように、ゆったりとした海になっていた。
アタシはメガネとシュノーケルをつけると、海面に浮きながら海の中を覗きこんだ。砂が白いからか、透明度が高いのか、海の中が明るくみえる。夏の強い日差しを受けて小さな魚の群れがキラキラと光っている。海面から差し込む陽の光はカーテンのように波のヒダが揺れて綺麗。アタシはしばらく水中の景色に見とれて浮いていた。
お?近くに立っている男性の脚が見える。この水色の水着は御厨先輩だ。
「プハーッ。」
立ち上がって顔を上げると、御厨先輩が興味津々で立っている。
「どんな感じ?」
「使います?」
アタシは水中メガネを外して御厨先輩に差し出した。シュノーケルはちょっとねえ?
「いいの?サンキュ!」
御厨先輩は早速メガネをつけ、ザブンと海に潜った。水中を泳ぐ先輩は楽しそう。何度か息継ぎをして泳いだ後、十分堪能したのか、ありがとうと水中メガネを返してくれた。どういたしまして。
しばらく水中メガネで遊んでいたら、お腹が空いてきた。
「先輩、そろそろお昼にしませんか?」
「そうだな。ちょっと戻ってみるか。」
パラソルに戻ると夏子と先生もいて、コンビニのおにぎりやサンドイッチを食べている。先生はビール飲んでる?と、思ったらノンアルだって。
「あ、おかえり晴海。コンビニに買出し行ってきたけど。何か食べる?」
吉野先輩、気が利く!
「ありがとうございます!嬉しい!いただきます!」
早速、おにぎりにかぶりついた。
「ねえ、先生と何話してたの?」
アタシは夏子にコソッと聞いてみた。
「別に、なんてことはないよ。フツーの話?」
「えー。聞きたい!」
夏子はちょっと頬を染めている。
「え~?…マグネシウムの燃焼する光の輝きとか、粉塵爆発における爆発下限濃度と爆発条件とか?すごく楽しいよ!」
むう、そうですね。化学オタクに聞いたアタシがバカだった。