第1話 黒
舞台は20xx年。世界は表向きでは平和だった。
しかし、この世界には2種類の人間が存在した。
それは「持つ者」と「持たざる者」である。
ここでの持つとは<魔力>すなわち特殊な力、持たざる者からすれば想像することのできないような力である。
そんな魔力を持つ者たちに対抗するべく、作られたのが「ベイ・ジンチャー」と呼ばれる組織である。
これは、ジンチャーに所属する正義感の人一倍強い主人公の物語である。
第1話 「黒」
ブラックはいつも考える。
世界はどうすれば平和になるのか。犯罪者が消え、町の人々が穏やかに過ごすことができる時はいつか来るのかと...
そしていつも一つの答えに辿り着く。
ジンチャーが導くのだと。
しかし今日のブラックは違った。
〜ジンチャー 承認試験〜
1週間後に迫ったジンチャー承認試験...
まずはこれに受からなければ!!
俺は「知力」には自信があるが「体技」には...
もっとこう派手な能力があれば、他の奴に差をつけられるのに!俺の能力はただ一つ。傷の治りが早いということだけ...
だが、こんなちっぽけな能力でも能力者認定されて、ジンチャーになれたんだ!絶対に落ちるわけにはいかない!!
1週間後...
筆記試験が終わり、会場に集められたジンチャー第13期生18人、この試験の結果でこの中から何人かが落とされることになっている。
会場のドアが開き、外の光が入る。
「私が試験官のエリアスだ。試験のルールは簡単、
ランダムで決められた3人1組のチーム。その中で戦ってもらう!そして負けた1人が不合格とし、ジンチャーを辞めてもらう。」
会場がどよめく。
ということは6人が不合格...多すぎる...!
「能力を使うのはもちろんありだ。だが必要以上に痛めつけたり、万が一でも命に関わるケガを負わせた場合、そいつは不合格だ。」
ジンチャー...全員能力者、特別な力を持つ...
勝てる筈が無い...という心の声を押し殺し、前だけを向いていた。
くじにより戦う相手が決まった。
男と女、1人ずつだ。
「よろしく、俺はベル・ルビー。悪いけど手加減はしないよ。俺もジンチャーに残りたいからね。」
強そうだ...
一体どんな能力を持っているのだろう...
「私はサファイア・ルーン。本当はみんなで受かりたいけど、やらなきゃいけないこともあるってわかります。だから今は全力で戦います。」
かわいい、でもそれだけじゃない、怖い...!
やる時はやるって顔してる。
二人が俺の顔をジッと見てくる。
今度は俺の番...
「俺はブラック、なんとかジンチャーに入って、ここで落ちる訳にはいかない。俺も全力で行くよ!」
威勢はいい。でも心ではビビってしまう。
その後、決められたグループ毎に違う会場へ行き、合図があれば試験を開始することが伝えられた。
移動...
俺たちの会場は芝生が生えたグラウンドのようなところだ。障害物はほとんど無い。
武器は持ち込み可能であるが、能力者であるジンチャーのメンバーは誰も持っている様子はない。
ただ一人を除いて。
三つ巴の試験が今始まろうとしていた。
色んな感情が頭の中を飛び回り、冷静でいられない。
試験開始!!!
その合図が聞こえた瞬間に二人の体から溢れる魔力を目にした。
その二人が明らかに俺を狙っていることはすぐに分かってしまった。
魔力を纏い向かってくる二人を見てブラックはニヤリと笑う。
「来いよ。」