少年神緊急来日!
今回で三話目です。
海外の神を取材する日本の神々向けの情報誌、天界通信の記者、エビスとレールが今回、桃を食べに甲府盆地までやってきた中国出身の少年神ナタを取材するが…?
日本の神々は世界の神々についても知りたがり。世界の神々も日本にはよく遊びに来ると言う。しかし、お忍びで来たり、バカンスできたりなどなのでほとんどがいつ来たのか知られずにいる。
日本に住む神々に向けての情報誌、天界通信ではその緊急来日の記事を書くため、ある二神組が動いていた。
緑の布を被っている黒髪の少女、エビスはキリッとした瞳で旅行雑誌を読んでいた。ここは高天原南にある天界通信本部の中の休憩室である。畳と長机しかないが広々とした空間だ。
「もも!桃食べ放題ね!もう七月後半だから旬かあ……。いいね!おいしそう。」
エビスは人間専用の旅行雑誌を読むのがとても好きだった。雑誌に載っているツアーには彼女自身が人の目に映らないので出る事はできない。ただエビスは雑誌を読んでいるだけだった。
エビスは元々、日本の神ではない。今は日本人に信仰されて日本の神の一つになってしまった。向こうの神とは別れて日本で新しく生まれた来訪神だった。
今現在、蛭子神エビスと名乗っている彼女は貿易の神とも言われ商業関係にも手を伸ばしはじめている神であった。
「エビちゃ~ん。桃狩りできるとこって甲府盆地とか~?」
エビスの隣で金髪の少女、レールが桃のスムージーをおいしそうに食べていた。
レールはエビスの仕事仲間で海外から来た神である。彼女はどこかの国で出会いの神として崇められていた。もちろん、お国には帰るが今は天界通信本部でエビスの仕事を手伝っている。
桃のスムージーを食べているレールの青い瞳は潤み、とても幸せそうだった。
「あ……あんた、いつの間にそんなうまそうなもんを……。」
エビスはガラスのコップに山盛りに入っている桃のシャーベット付きスムージーをうらやましそうに見つめた。
「ん~。おいし~。あんまり甘くなくてさっぱり~。エビちゃん食べる~?」
「ちょっとちょうだい。あんた、これどうしたの?」
「これ~?今高天原で桃を育てている神が多くてね~。スムージー作ったからあげるっておすそわけしてもらった~。なんだか桃を育てるのは中国の神達を見てからみたいで、今更日本の神々にブームが来たみたいね~。」
レールはスプーンで少しスムージーをすくうとエビスの口に入れた。
「んまい!ああ、そっか。桃は昔から中国だったねぇ。……なんか桃のスムージー食べたら本物が食べたくなってきた。」
「エビちゃん、スムージーも本物の桃だよ~。」
「じゃなくて、加工されていない生の桃!」
のんびりスムージーを食べているレールにエビスはビシッとツッコミを入れた。
「ん?じゃあ、食べに行く~?高天原の木種の神に頼んで桃もらえばオッケー。」
「あ……いや、人が作ったやつのが食べたいんだけど。」
「人が作ったやつ~?じゃあ、甲府盆地いく~?」
レールはのほほんとした顔でエビスを仰いだ。
「なんで甲府盆地限定かわかんないけど行く!」
「甲府盆地には今、少年神ナタさんがいるようだね~。」
意気込んでいるエビスに目を向けながらレールはスケジュール帳をパラパラとめくった。
レールのスケジュール帳はレールの能力により、出会いたい神の情報が書きこまれる。見た目はなんの変哲もないスケジュール帳だ。
「!?……中国から?わざわざ日本の桃を食べに来たの?桃なら中国の方が伝統的なんじゃ……あっ、まさか日本で爆買い!?」
「エビちゃん……桃を爆買いはしないと思うよ~。沢山買っても腐っちゃうし~。単純に日本の桃を味見しに来ただけみたい~。」
「な、なるほどね。これは取材に行かないと!レール!行くよ!」
「あ~待ってよ~エビちゃ~ん!」
エビスはレールの手を引くとさっさと歩き出した。レールは持っていたガラスのコップを慌てて机に置くと素直にエビスに引っ張られて行った。




