アヌビス神緊急来日!2
「お前達も神か?」
男、アヌビス神は困惑した顔でエビスとレールに声をかけてきた。
「ソ、ソウ!ワ、ワタシハ、シュザイニキタ!わかる?シュザイ!」
「エビちゃん……それ全部日本語だよ~。アヌビスさん、普通に日本語話してるけど……日本語でいいんじゃないかな~?」
レールがクスクス笑っている横でエビスは顔を真っ赤にして叫んだ。
「わ、わかってるわよ!そんなの!」
「な、なんなのだ?お前達は……。」
アヌビス神は明らかに戸惑っていた。
「ま、まあいいわ!アヌビス神、ここで何をしているのですか?」
エビスは突然取材モードに入った。
「な、何って……雨に打たれながら墓を見ていただけだが……。」
「雨に打たれながら墓を見ているってどういう状態よ……それ。」
アヌビス神の言葉にエビスは返答に困った。
「日本の醍醐味と言えば雨。じめじめした感じが癖になるのだ。」
「そ、そうですか……。なんだかナメクジとかみたいですね……。」
「あ、ところで……この墓なんだが……一体なんと書いてあるのだ?日本語が読めんのだ。」
アヌビス神は大きめの墓の墓石に掘られている文字を指差した。
「え?え~……。」
エビスは文字を読もうとしたが首を傾げた。
「エビちゃん、日本神なのに日本語読めないの~?」
隣でレールも墓石を覗き込む。
「よ、読めるわよ!亡くなった人の名前と亡くなった日付が書いてあるだけ。後は亡くなった先祖の名前も入ってる。きっと家族、親族で同じお墓に入ったんだわ。で、お線香あげる所は玄関だから横からお墓に入るのはやめなさいよ!」
エビスはお線香を置く場所にある石段からそっと降りた。
「なるほど。家族で住んでいる……家なのだな。お線香は何故あげるのだ?」
アヌビス神も頭を下げるとお線香を置く場所の石段から降りた。
「お線香は亡くなった人の食べ物だそうよ。聞いた話だけど。他の所は違うかもしれないけどね。」
「なるほど……。どの国でも死者を大切にするのだな。うむうむ。」
アヌビス神は感心したのか目を瞑りながら大きく何度も頷いていた。
「そ、それよりですね……。凄い格好してますね……。良い筋肉ですが下が際どい!」
エビスの顔はどことなく嬉しそうだった。
「え、エビちゃん~何を取材してるの~?変態だよ~?」
「あーっ!気になるの!良い体つきの男は芸術だと思う!ねえ?」
「……。」
アヌビス神はさらに困惑していた。
「エビちゃん……アヌビスさん引いてる~。エビちゃんに彼氏ができないのはそのせいだと思うよ~……。このままじゃ喪女のままだよ~……。」
「喪女じゃない!男ができないのは男が私の美貌に見惚れて寄ってこないだけ!ねぇ?」
レールの言葉にエビスはアヌビス神をちらりと見上げた。
「ん……ん?よくわからんが……俺を誘っているのか?これが日本の誘い方か?」
アヌビス神はさらに戸惑いきょろきょろとあたりを見回していた。
「アヌビスさん~。違います~。気にしないでくださいね~。」
レールは軽く微笑むとアヌビス神を落ち着かせた。
「ふむ。ところでだな。かき氷とやらを食べてみたいのだがどこで食せるのだ?」
アヌビス神は若干ワクワクした表情へと変わった。
「かき氷?そういえばこの近くにあったような気がしますよ。こんな雨降っている日にかき氷食べるのですか?」
エビスは首を傾げながらアヌビス神に答えた。
「日本の雨でジメジメしたところにシロップのかかっている砕いた氷……我が国ではないからな。ちょうどいい。案内してくれ。」
「えー!」
「エビちゃん、いいじゃない~。案内してあげよ~。」
渋るエビスにレールは微笑んだ。エビスは取材の為と思い直し、アヌビス神を連れて歩き出した。しばらく山道を下り、民家やお店が見え始めると雨はだいぶん小降りになった。