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レール神緊急来日!2

 エビスはレールの所に行くべく足を速めた。


 ……レールに一神前になれるかもしれない事をちゃんと伝えなくちゃ。

 ……明後日帰っちゃうなら少しでも私達のやった功績と進歩を伝えてレールを喜ばせてあげないと。


 エビスはこんなことを思いながら再び休憩室へと戻ってきた。休憩室でレールはのんびりとお茶を飲んでいた。


 「レール!お茶なんて飲んでる場合じゃないよ!私、レールのおかげで一神前になれるかもしれないのよ!」


 エビスが力強く声をかけたため、レールは驚いて飛び上がった。


 「わあ~びっくりした~。どうしたの~?エビちゃん~?」

 「取材の功績が認められたんだよ!一神前になれるかもしれないの!」


 「え~と……じゃあ、まだ一神前にはなってないって事だよね~?」

 レールに尋ねられてエビスはウッと声を詰まらせた。


 「ま、まあ、もう一神前になれるよ。私だけで取材していい記事が書けたら……って言ってたけど……。」


 「ふ~ん。じゃあ、私のスケジュール帳はもういらないね~?」

 レールはスケジュール帳をエビスの前にかざした。


 「うっ……。ちょ、ちょっとだけ見せてもらってから一神で行くから……。」

 「ダメだよ~。一神ででしょ~?」


 レールはエビスを見てほほ笑んでいた。それを見たエビスはまた涙が溢れてきてレールに抱き着き、泣いた。


 「うう……。さみしいよぉ……。レールぅ……。」


 「エビちゃ~ん、ごめんね~。ちゃんと色々落ち着いたらまたバカンスに来るから~……。」

 レールはエビスの頭を撫でてせつなげにほほ笑んだ。


 「あ、そうだ!」

 エビスが突然声を上げた。


 「ん~?」

 レールは不思議そうにエビスを見た。


 「できる範囲の取材……。レールは外国神……。私はレールの事をけっこう知っている。」


 「うん~?」

 レールは首を傾げていたがエビスの瞳に再び光が差した。


 「レール、私は馬鹿だった。パパの『できる範囲でやる取材』っていうのがわかったわ!まずどの神を取材するよりも先にしなければならなかった事、それはレールの取材!だからパパは私に掃除ばかり命じてたんだ!レールと話をさせるために!」


 エビスはビシッとレールに言い放った。レールはぽかんとした顔でエビスを見ていた。


 「……パパは馬鹿じゃなかったんだ……。」


 エビスが納得した顔で頷いた刹那、エビスとレールの後ろから蛭子の声がした。


 「エビス……パパになんて言葉を使うんだ……。」

 「ゲッ……パパ。」

 「『ゲッ』と言うんじゃない。汚いだろう。」

 蛭子は呆れた顔を向けるとエビスの隣に座ってきた。


 「な、何よ。パパ……。」

 「……お前の取材能力を見てやろうと思ったのだ。所謂テストってやつだ。」

 蛭子の一言でエビスの顔が引き締まった。


 「パパ。ありがと。」

 エビスは小さく蛭子につぶやいた。蛭子は少しだけ照れながら頷いた。


 急に取材モードになったエビスと試験官の蛭子にレールはなんだか固まっていた。


 「う、うわ~なんか緊張するんですけど~……。」

 「あんたが緊張する事ないじゃん。レール、いつも通り!お願いね!」

 エビスの笑顔でレールの緊張もほぐれた。


 それを見た蛭子はわずかにほほ笑んで二神の会話を優しく見守った。


****


 「すごい!こんないい記事が書けるなんて!」

 取材が面接のようになってしまっていたがエビスはとても喜んでいた。


 「良かったね~エビちゃ~ん。私も嬉しいよ~。」

 レールはエビスにホッとした顔を向けた。


 「パパ!どう?」

 エビスは自信満々に蛭子に記事を見せた。


 「うん。良く書けているよ。本当はもっと早くに記事を書いてほしかったのだが……まあ、いい。……じゃあ、エビスにはこれからレール殿の国の記事を書いてもらおうか。レール殿の国の事に今、日本の神々はとても興味を持っているんだ。」


 「そ、そうだったの?知らなかった。レールの国の事を書く事が今の私にできる事なの?」


 「ああ。そうだよ。お前にしかできないだろう。レール殿とお前はとっても仲良しじゃないか。」


 エビスは蛭子の言葉を聞きながらレールに目を向けた。レールはほほ笑みながらエビスに頷き返した。


 「そうか!そうだよね!……じゃあ、レールの国と日本はこれからどんどんつながっていくって事だね。」

 エビスの言葉にレールは再び頷いた。


 「レール殿、一つお願いがあるのだが……。」

 蛭子がひかえめにレールに声をかけた。


 「は~い。日本紹介の記事を私の国で出せばいいんですよね~?」

 「……っ!そ、その通りだが……。どうしてわかった?」

 レールの発言に蛭子は驚いた。


 「いや~、私の国で日本がちょっと有名になっていて~実は私、バカンスじゃなくて~記者としてのお仕事で来たんです~……。でも全然、ダメダメで~楽しかったので~そのままバカンスしちゃいましたあ~……。」


 「なっ!」

 レールは呑気に言っていたがエビスと蛭子は驚いて立ち上がった。


 「あ~、日本の事はエビちゃんにこれから聞くね~?これでおあいこだね~。」

 レールはクスクスと楽しそうに笑った。エビスと蛭子はお互いを軽く見やるとレールにつられてほほ笑んだ。

 


 その後、レールが帰国し、エビスはしばらく落ち込んでいたがレールの国のためにレールの国のPR記事を頑張って書き続けた。いつぞやに教わったラトゥー語についての事も思い出しながら記載した。


 それはイトゥーが「です、ます」を意味するという事しかわからなかったが日本の神々にはかなり注目されたようだ。


 エビスはできる事を目標に着実に功績を上げた。

 そしてしばらく経った後、再びレールが日本に戻ってきた。


 「エビちゃ~ん!久しぶり~!最近エビちゃんのおかげで~日本神がうちの国に旅行しにくるようになったの~。」


 「レール!久しぶりだね!元気そうで良かった!……そうなんだ!私頑張ったもんね。」


 レールとエビスは久しぶりに会ったというのにずっと一緒にいたように話し始めた。


 「あ、そういえば、高天原に白猫がよく遊びに来ているのを見るね。レールのおかげかな!」


 「私も頑張ったよ~。」

 二神はお互い幸せそうに笑いあうといつものように天界通信本部の休憩室へと向かった。


 レールの国は『レール』と名付けられたらしい。


 レールもエビスもレール国という名前がすぐに好きになった。


 「だって、私とレールを結んでいる感じするじゃん。」

 「ね~?」

 二神は笑いあうと再び、いつもの日常に入り込んでいった。

 

 

 彼女達のこれからの仕事は一つ。

 一面記事でお互いの国をPRすること……。

 「ようこそ!外国神!」は「来てみて!外国神!」になり、

 彼女達の生き生きとした文章には笑顔が見える事だろう。

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