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弁財天緊急来日!4

 「あんた達、誰?竜宮は今新サービスのための研修してるよ。今日はやってない。」


 弁財天だと思われる女性はかけていたサングラスをグイッと頭の方まで上げ、さばさばと話しかけてきた。


 「え……あ、あの……べ、弁財天さんでしょうか?」

 エビスが恐る恐る尋ねると弁財天だと思われる女神はにこりとほほ笑んだ。


 「そうだよ!あ、この格好?これは竜宮の新パフォーマンスの演技指導でちょっとはしゃいじゃっているだけだよ。気にしないで。」

 弁財天は楽しそうにケラケラと笑いながらエビスに言った。


 「そ、そうでしたか。実は取材をさせていただきたくて……。」

 エビスは素早くレールに目を向ける。レールは頷いてメモ帳を取り出した。


 「え?取材?なーんでまた?あたし達は親戚みたいなもんじゃないか。」

 「い、いいですから……お願いします!」


 「あ、そう?何が聞きたいの?」

 弁財天の質問にエビスは少し考えてからズバッと切り込んだ。


 「七福神の会合とは何なのでしょうか?」


 「ああ、その話ね。軽い雑談から始まってミーティング、内容は日本と中国の信仰心の相違的問題点、それのバランスと強弱変動、日本故の七福神の存在的価値、その意義……それからインド、中国、日本の信仰心の対象、竹林の七賢についてと……。」


 「あー……えっと……ちょっと待って!マジでわかんない……。」

 エビスは弁財天の話の一部すらも理解できなかった。


 「わかんないのに聞いてきたの?はははは!先にパパに取材がいいんじゃない?それ?」

 弁財天はお腹を抱えて笑い出した。


 「わ、笑わないでください……。あ、あれ?というかなんで名乗っていないのに私が蛭子神の子だってわかったの?」


 エビスは訝しげに弁財天を見た。弁財天は笑いながらエビスの肩をポンポンと叩いてきた。


 「わかる。わかる。ほんとーはさ、最初からわかってたの。わざと質問したの。はははは!ほんとだ!ほんとに来たよ!あーははは!はい、じゃあそのイチゴ大福もらうね。」


 弁財天はぽかんとしているエビスからそっとイチゴ大福の箱を奪った。


 「あ……。え?どういう事?」


 「いやあ、蛭子から電話があってね、竜宮におそらく娘が向かっているだろうからそのままイチゴ大福をもらってくれって言ってきてさ。それから変な事を尋ねてくるだろうから適当に流してくれ、お手数をおかけ致すって言って来たよ。当たってるね!さすが蛭子!」


 弁財天は両手の人差し指をエビスに向けて変なポーズをとった。エビスは茫然と弁財天を見つめていた。


 「エビちゃん~、社長さんにばれているみたいだね~。ドンマ~イ!」

 レールがそっとエビスの肩を叩いた。


 「ゲッ……パパ鋭すぎる……。あーもう……どうにかしてパパを丸め込みたいなあ。」


 「あ……。」

 エビスがブツブツ言っている最中、弁財天がエビスの後ろにそっと目を向けた。


 「……私を丸め込むだと?お前はパパになんてことを言うんだ。」


 「ひぃ!ぱ、パパ!」

 エビスの後ろには憤怒した顔の蛭子が仁王立ちしていた。いままでの積りに積もった怒りが顔からあふれ出ている。


 「あちゃ~……。」

 レールは噴火してしまった蛭子から少しずつ後ろに下がった。


 「お久しぶり!蛭子!あんた、今、阿修羅みたいだよ。娘さん、かわいいじゃないか。」


 弁財天が楽観的に蛭子に挨拶をした。蛭子は顔を元に戻し、弁財天に疲れの入った顔を向けた。


 「ああ……エビスが失礼をした。申し訳ない。彼女は私の大切な娘だがなんというかお転婆なんだ。許してくれ。」


 「いいよ。いいよ。今日は竜宮の一室を貸し切りにしているからさっさと会合やって七福神の皆でご飯食べよう!会合終わったら娘さんと金髪のかわいい子もおいでね。」


 弁財天はエビスとレールに優しくほほ笑んだ。


 「本当!七福神とお話ができる!行く!行きまーす!」

 「エビちゃ~ん。でも社長さんがすごく怒っているよ~。」

 レールが青い顔でそっとエビスをつついた。


 エビスは蛭子の言いつけをことごとく破ったのを思い出し、顔じゅうに冷汗を浮かばせた。


 「竜宮へ向かう前に……弁財天殿、少し失礼する。……エビス、まずはそこに正座しなさい!」


 「ひぃいい!」

 蛭子の鋭い声にエビスは目に涙を浮かべながらその場に素直に正座した。


 「あ~……これは長くなりそう~……あ、弁財天さ~ん、先に竜宮内を案内していただいてもいいですか~?」

 レールが呆れた顔をしつつ、弁財天に頼んだ。


 「ん?いいよ。そこにいる亀に連れてってもらおう!あれ、長くなるの?」

 弁財天が叱られて縮こまっているエビスを指差しながらため息交じりに尋ねた。


 「あ~そうですね~長くなりますね~。今回は色々とエビちゃんが悪いから~私、止めない~。」


 レールは弁財天にほほ笑んだ。弁財天もケラケラと笑い、「じゃ、先に行こっか。」とエビスを置いてレールと共に竜宮へと向かった。


 遠くの方でエビスが

 「助けてー!レール!」

と叫ぶ声が聞こえたような気がしたがレールはエビスを見捨てる事にした。



 その後の天界通信、エビスとレールが担当する「ようこそ!外国神!」の欄には……


『弁財天さん緊急来日!七福神の会合に出席。内容はほぼわかりませんでしたが日本のため、世界のために日々動いているようです。えー……実はですね、蛭子神、私の父なのですがその父を怒らせてしまい、その説教(まさに苦行)が耳にこびりついてしまっていて内容をほぼ忘れてしまったんですねー。会合の内容が気になる方は私のパパ、蛭子神へどうぞ!』


 と蛭子に内容をしゃべらせる記事だったという。


 内容を聞いてもわからなかったエビスは知っている蛭子にすべて振ったようだった。


 その後、七福神の会合の内容が気になると蛭子に沢山の電話があり、蛭子は自分の娘に頭を抱えながら一件一件丁寧に説明したという。


 そして当然のことながらエビスはこの後も蛭子にたっぷりと叱られることになるのであった。

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