表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/25

デメテル神緊急来日!3

 「それでね、そのプロフェッショナルの味をリーズナブルなお値段で庶民でも食べられるようになっているようで、わたくし、それが一番感動いたしましたの!」

 デメテルはさらにエビス達に詰め寄ってきた。


 「は、はあ……。」


 「知っていますこと?カップメンと言うそうですわ。カップメーン!コンビニで売っていました!それを買っておうちに持って帰ると小さい男の人達がせっせと庶民にラーメンを作ってくれるそうですことよ!」


 「ふんふん……はあ?」

 エビスは途中まで頷いていたがふと後半の言葉に疑問の声を上げた。


 「小さい男の人って……どういう事かわからないんだけど。」


 「カップに入るくらい小さいメーンが庶民のためにせっせとラーメンを作るんですことよ?ご存知ないのかしら?日本神なのに?」

 デメテルはどこか勝ち誇った顔で胸を張っていた。


 ……あー……なるほど……。この神、盛大に勘違いをしているな……。

 エビスは呆れた顔をデメテルに向けた。その横でレールがとても驚いた顔をしていた。


 「え~?そうだったの~?知らなかったよ~?そうか!だからメーンっていうんだね~?」


 「レール……あんたね、馬鹿なの?納得させられてんじゃないわよ。」


 「エビちゃん~!これ嘘じゃないかもしれないよ~?私達、カップメン買った事なかったよね~?中身確認してないよね~?」

 「……うっ……。」

 レールの言葉に呆れていたエビスの顔が少し強張った。


 「きっと、カップメーンの中に入っているという『かやく』の中にいっぱい男の人が詰め込まれているんですわ!きっとかやくって職業なんですわ!おそらくはまだラーメン店に入れない修行中の人間が小さくされてかやくにされるのですわ……。」


 デメテルはエビスとレールを交互に見ながら怖い顔でささやいた。


 「や、やめてよ!あんな小さなカップに入れる人間なんているわけないじゃない!」


 「だからさ~エビちゃん、わからないよね~?私達中身確認してないし~。」

 レールが顔を青くし、エビスを怯えた表情で見つめた。


 「わたくしが予想したシステムはこんな感じですわ!」

 デメテルがへたくそな手書きの図解をエビスとレールに渡した。


 「なにこれ……。下手過ぎて何が描かれているかわかんないんだけど。これは何?妖怪の髪?……あ、ラーメンか。」


 エビスが目を凝らしながらデメテルが描いた絵を見つめるが何を説明したいのかまるでわからない。


 「うん~……独創的な絵ですね~……。」

 レールも反応に困り、とりあえず感想を述べた。


 「あらやだ。もうこんなお時間?わたくし、これから用事がありますの。マイエンジェル。いらっしゃい!」

 デメテルが一言そう発すると光に包まれて天使が現れた。


 「デメテル様。もうよろしいのですか?」

 天使がデメテルに尋ねた。デメテルはほほ笑みながら頷くと天使が出した光の階段を登り始めた。


 「ほえー……あれが天使……。初めて見た。」

 「真っ白な羽~きれいだね~。」

 エビスとレールは目の前に現れた光の階段と天使、それとデメテルを茫然と見つめていた。


 そんな美しい光景の中、エビスはハッとカップメンの真実にたどり着いた。

 「そ、そうだ!カップメンのメンって麺の事なんじゃない?ラーメンの麺!」

 エビスはもう消えかかっているデメテルにそう叫んだ。


 「あらあら。そうですことよ?そんな小さな人間がいるわけないでしょう?ゴットジョークですわ。ホホホホ。また冬に遊びに来ますわ。冬は娘もいないし暇になるので。それでは~。」


 デメテルは必死に言い放ったエビスを楽しそうに眺めると静かに消えていった。


 「……。」


 エビスとレールは口をぽかんと開けたまま階段があった部分を仰いでいた。


 「な、なんていうか~個性的な神だったね~……エビちゃん~?」

 レールが苦笑いでエビスに目を向けた。


 「なんなのよ!あの神!ていうか……私達おちょくられたんだわ。くぅ……なんだかくやっしい!」


 「傍から見たら私達っておバカだよね~。あはははは~!」

 悔しがっているエビスとは反対にレールは大爆笑をしていた。


 「あーもう……腹立つ。なんだったんだ。あの会話。ちょっと、レール、何かメモった?」


 「あれで何をメモればいいの~?ラーメンの事について~?馬鹿丸出しになっちゃうね~?ははは!」


 「……だよね……。」

 エビスは笑っているレールを見つめ、またこのパターンかと突っ込むとため息をついた。


 「でさ~、いつもの事だと思うんだけど~……。」

 レールが控えめにエビスに紙を差し出した。


 「ああ……もういいわ。これをそのまま載せて今回は終わりにしようか。」


 エビスはレールから紙を受け取り、まじまじと眺める。なんの絵かもわからない落書きがそこには描かれていた。デメテルが描いた謎の絵のみがエビスとレールの手元に残った。


 「はあー……。」

 「エビちゃん~帰ろっか~?落ち葉掃かないとね~?あ、カップ麺の確認もしておく~?とりあえず小さい男の人がいるか調べる~?」


 「はああー……。」

 レールの言葉にエビスは再びため息をついた。



 その後の天界通信『ようこそ!外国神!』の欄には……


 『オリンポス山からデメテル神緊急来日!なぜかラーメンに興味を示し、ラーメンの絵のようなものを描いていただきました!独創的な絵ですね!このセンスに人間の画家さんもびっくりするのではないでしょうか!』


 とデメテル神には触れず、デメテルが描いた絵を褒めたたえる文が書いてあったという。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ