デメテル神緊急来日!2
エビスとレールは神々の使いである鶴を呼び、五、六羽の鶴達が引いている駕籠に乗り込むと高天原から現世に降り立った。
現世でも紅葉はきれいだった。エビスとレールが今来ている場所はモミジ公園と呼ばれている紅葉がきれいな公園だ。少し肌寒いが紅葉見をしに来ている人々が公園内の遊歩道を歩いていた。
「エビちゃん~、きれいだね~もみじ~!」
「うん。真っ赤に燃え上がるような紅葉、私も好き!……じゃなくて、デメテルさんはどこにいるの?」
「うん~……三件目のラーメン店に行ってからこの遊歩道を歩いているはずだけど~。」
レールの言葉にエビスはきょろきょろとデメテルらしき神を探した。
「……ん?」
エビスは眉にしわを寄せて目を凝らした。少し遠めの所で歩いている人々を避けながらスキップで踊っている女性を発見した。
「秋ッ!秋ッ!実りの秋~!モミジがきれい~!」
その女性はオペラ歌手のように声を伸ばして歌いながらこちらに向かってスキップしてきた。遊歩道を歩いている人々は彼女に気が付いていない。というか見えていない。
「間違いない!あれがデメテルだ!」
「うわあ~エビちゃん……まってよぉ~。」
エビスはレールを引っ張り走り出した。
「ら~ら~ら~……。あら?」
女性は近寄ってきたエビスとレールを見、口を閉ざした。
「あの、デメテルさんでしょうか?」
「ん?え?はい。そうですけど。」
仕事モードで問いかけたエビスに女性はほほ笑んで答えた。それを聞いたエビスは心でガッツポーズをとる。
女性は金髪のウェーブのかかった髪を腰辺りまで伸ばし、頭には葉で作った冠をしている。服装は全体的に白く、レースのドレスのようなものを着ていた。
「あらやだ。人に見えないし、神もいなかったから大声で秋の実りの歌を歌ってしまったわ。」
金髪ウェーブの女性、デメテルはホホホと上品に笑うと会釈をしてそのまま去ろうとした。
「ちょっと待ってください!」
それをすかさずエビスが止める。
「なんですこと?」
デメテルはほほ笑みながらエビスを振り返った。
「今、海外の神の記事を書いています。取材させてくださーい!」
エビスは営業スマイルでデメテルに近寄った。
「あら?取材?いいですことよ。」
「え?意外な反応!やった!レール、メモ!」
エビスはデメテルの返答を聞き、レールにガッツポーズをした。
「はいは~い。」
レールはにこやかにほほ笑むとメモ帳とペンを取り出した。
「で?何が聞きたいのかしら?」
「まずはどういう神だかの説明と何しに日本にいらっしゃったのかを……。」
「あー!」
エビスが最後まで言う前にデメテルが何かを思い出したように声を上げた。
「……うわっ!な、なに?び、びっくりした……。」
「そうそう、あなた達、日本のラーメンについてどこまでご存知?作り方とかもご存知?知っている?知らない?どっち?ねえ?どっち?」
デメテルは驚いているエビスとレールにがっつくように尋ねてきた。
「ら、ラーメン!?ええと、出汁とって麺入れて……えー……。」
エビスは困った顔で隣にいるレールを仰ぐ。レールは首を傾げたまま固まっていた。
「あらやだ。知らないの?店によって味が違ってスープを秘密にしていますことよ!企業秘密。それから麺!小麦粉があんな美しい輝きを放つものになるなんてわたくし、驚きを隠せませんわ!」
「……は、はあ……。」
デメテルの興奮しようにエビスとレールはぽかんとした顔でお互いを見合った。
……この神のツボがよくわからない……。
エビスとレールは目でお互いの気持ちを確認した。