しばしの別れ
第一段階を終えてほっとした僕は選定試験を受けられることの報告と、ネオスに行くためしばらく家を留守にする旨をアルに伝えるために一度家に帰った。
「おかえり!選定試験受けられるの?」
「うん、何とかね。アルは今日はどうだった?」
「とってものんびり過ごせて良い日だったよ!」
家に帰るとアルが出迎えてくれた。元々歳が近かったこともあり、もうアルともすっかりタメ語で話せる仲だ。とりあえず選定試験に合格したことは伝えた。後は少しばかり家を留守にすることを話さないとな。
「えっと、アル。それでさ、選定試験を受けるにあたってネオスに行かないといけないんだよね。」
「うん...」
「終わったら戻ってきてそれで上手くいけば今度は魔王軍の領地に出征することになる...」
「うん....」
「多分、全部上手くいったならその次に帰ってくるのは少なくとも2,3年後になると思うんだ。」
「.....寂しく、なるね。」
「アル...僕を助けてくれたこと、とっても感謝してる。だから、今度はその恩を魔王軍を討伐するっていう形で返させて欲しい。」
「我が儘だよね...」
「え?」
「サトルのさ、そういう受けた恩を倍にして返すみたいな所、それじゃあ、引き留めようが無いじゃん。」
「アル?それってどういう事?」
「本当はずっとサトルと一緒に居たい。けどサトルはずっと遠くに行っちゃう...」
「ねぇ、アルらしくないよ。」
「これが本当の私!サトルと一緒に居たい!サトルが大好きなの!」
「アル...」
正直アルの気持ちに全く気付いていない訳では無かった。どことなく僕を想っている事を感じさせる節があったが、僕の勘違いだろうと見過ごしていた。
アルの事はすごく好きだ。友達としても、女の子としても。でも今その感情に流されたら...魔王軍は?
「アル...気持ちは嬉しいよ。僕もアルの事一人の女の子として大好きだから。」
「...っ!じゃあ...」
「でも、今は駄目なんだ...今はアルと幸せになることよりも大事な事があるから...」
「サトルと私が幸せになることよりも大事なこと?」
「うん。今は...この世界、ディアドラの人々を助けるのが先だ。それが終わったら...二人っきりでゆっくり暮らそう。」
「サトル.....うん、分かった。私待ってるよ、サトルが魔王軍倒して戻ってくるの。...絶対に生きて帰ってきてね。」
「当たり前だろ、絶対死なないよ。...じゃあ、また。」
「うん、...行ってらっしゃい。」
僕はアルに必ず帰ることを告げ、首都ネオスへと向かった。
どうも皆様、作者です。
今回は選定試験前の聡とアルを描いてみました。
やっぱり非リア充にはラブシーンは書けませんでした。
GWも残り少ないですが、なるべく話を進めておきたいと思います。
それでは、また次回お会いしましょう。
以上、作者でした。