パクス・ディアドラ
今回から新章ですが、過度な進行はしません。
「平和だな~」
「平和ですね~」
「全く以って平和だ。」
今、僕たちはこれ以上ない『平和』を味わっている。
勇者になってはや一週間、これまでやった主な仕事と言えば、盗賊退治、町の人の悩みを聞く、等々。
勇者らしいことは何一つしていない。実に平和だ。
ちなみに今は何をしているのかと言うと、週に一度の記載が義務付けられている『勇者日誌』なるものの作成だ。小学生の夏休みに毎日その日の日記を書かされていたのが思い出される。もっとも僕はそんなに毎日は書く事がなかったので、多少事実を盛ったりもしたが...
それにしてもこの平和さ、魔王軍が存在していることすら感じさせない。世界からは他の国の選定試験を勝ち抜いた屈強な勇者たちも出現し、魔王軍との勢力差もほぼ互角と言ったところだろう。両者の勢力が均衡した相対的平和、まさに『パクス・ディアドラ』と言って良いだろう。
こんな平和な日が毎日続けば良いんだけどな...そういうわけにもいかないか。
「そういえば、魔王軍が遂にラノン国アムルゼンを占領したみたいですね。」
そうアリスちゃんが話を切り出した。
「ラノンって...何処だっけ?」
「ちょっと、サトルさん忘れちゃったんですか?魔王軍挙兵の時から最前線に兵を送り続けてた国ですよ。アムルゼンはその国の首都ですよ。」
「あ~...言われてみればあったな、そんな国。」
魔王軍と戦った主な国と言って有名なのはタナトスだ。もっとも、今じゃ魔王軍討伐の第一線からは退いてるが...そうか、ラノンも魔王軍挙兵の最初期から戦ってたっけか。
「それじゃあラノンが戦えなくなったとなると、他はどの国がまだ戦える状態なんだ?」
「そうですね...まともに相手にできるのは後はカラドン王国くらいじゃないですかね?未だに王政ですけど実力は確かですし。まぁ力を貸してくれるかどうかさえ曖昧な感じですけどね。」
カラドン王国といえば、ディアドラ唯一の王政が敷かれている国だ。情報統制もしっかりとしていて、無駄な情報は一切入ってこない。かといってどこぞの北のように国民が貧しい生活をし、元首が贅沢の限りを尽くしているということもなく、現在の国王...他国からは『質素王』と言われるほど節約に気を使い、政治の手腕もあるカラドニウスⅣ世統治の下実に平和な時代を送っている。
兵の忠誠心も高く、戦いになればかなりの戦力になることが期待されるが、如何せん国王が出兵も出し渋るけち臭い性格のため、自国の非常事態にならない限りは兵を出しては来ないだろう。
「そうなると頼みの綱はやっぱり僕たち勇者になるわけか...」
「そうですね、既に何組かの勇者一行は魔王軍と戦っていると聞きますし...」
「それじゃあ僕たちも頑張らないとな!よっしゃ、アリスちゃん、ミルドレッド、出発だ!」
「おーっ!...って、あれ?」
「あ...お~い、ミルドレッド?おい、起きろって....こりゃ駄目だ、完全に熟睡してる。」
どうやら僕たちが魔王軍討伐に動くのはもう少し先になりそうだ。
どうも皆様、作者です。
少しだけお休みを頂いて話の整理をさせて貰いました。
毎日更新は難しいかも知れませんが、最後まで書ききることは約束します。
それでは、今回はこの辺で失礼させて頂きます。
以上、作者でした。




