別離
ついこの前出たばかりなのに今帰るとなんだか懐かしく感じる故郷アドラ。
ここでの僕の目的は、アル...アルネアに別れを告げることだ。
僕がこの世界に来て右も左も分からない時に言葉や文化を教えてくれた恩人、そして選定試験前に愛を誓った恋人でもある。
「アリスちゃんとミルドレッドはこの辺で適当に時間潰してて、すぐに戻るから。」
二人にはそう告げて、僕はアルの家の扉を叩いた。
「アル?僕だよ...」
扉が開き、中からアルが顔を覗かせた。
「サトル...どうしたの?」
「ほら、選定試験が終わって勇者になれたら一旦戻るって言っただろ?それで。」
「そっか、.....本当に行っちゃうんだね。」
「そりゃあ勇者になったからね。」
「サトルが帰ってこない家は...寂しくなるなぁ。」
そうアルが残念そうに呟く。
「....どれくらい時間が掛かるか分からないけど、絶対に帰ってくるから。」
「任命式と言ってること違うよ。」
「あらら...見られてたのか。」
「当たり前でしょ?あれ投影魔法が使えれば誰でも見られる放送だったんだから。」
僕の本音の意気込み聞かれてたのか...確か野垂れ死ぬかもしれない、みたいなこと言ったんだっけ。
「確かにあの時はそう言ったよ、でも...やっぱりアルにはまた会いたいから。だから一生懸命戦うよ、またこの家に戻ってこられるように。それでアルと一緒に暮らせるように。」
「サトル......約束だよ?」
「あぁ、絶対戻ってくるから。だから、気長に待ってろよ。」
「分かった。信じるよ、サトルのその言葉。」
そう、僕は生きなきゃいけない。世界のため、国のため、...そして何よりもアルのために。
「それじゃあ僕...そろそろ行くから。」
「うん...ずっと待ってるから。」
手を振りながら遠ざかる家とアルの姿を見ていたら、何だか目から水が出てきた。絶対帰らなきゃな、アルの所に。
「ごめん、二人とも。待たせたね。」
「ちょこっとだけ待ちましたけど大丈夫です!」
「さぁサトル、....旅に出ようか」
「あぁ、長い旅になるな。」
こうして僕等三人の長い旅が始まったのである。
どうも皆様、作者です。
ここまでが第一章です、読んで頂き本当にありがとうございました。
章の話の整理のため、一日ほど更新を止めさせて頂くかもしれません。ご了承下さい。
それでは、今回はこの辺で失礼させて頂きます。
以上、作者でした。




