決着
そう、ミレイアの動きは速い。あまりにも速すぎる位なんだ。
そこをどう利用できるかが僕がミレイアに勝てるかどうかに繋がる。
「さぁ、そろそろ始めようか...ミレイア、決着を着けよう!」
「望むところだけど...君はどうやってここから巻き返すつもりなのかな?」
俺に残された方法はこれしか無い....!!
「いくぞ...『神速 瞬狂』!!」
ハイパークロッ●アップに勝つにはそれと同等以上の力が必要だ。この瞬狂はミレイアの速さと同等以上の力を発揮できる。しかし今の僕では力の制御が不充分な為、使えるのは1分が限界だ。
「何だ、僕の速さについて来れるじゃないか。初めからそれ使ってよ。」
「まぁ、奥の手って奴だよ。これでやっと同じ土俵に立てた。」
「勝負はそうでなくっちゃ...精々僕を楽しませてよね....!」
そこから1分間は僕のペースで戦いが進んだ。観客からしてみればヤ●チャ状態だろうが、僕は壮絶な死闘の末、勝利を手にする寸前までいった。
しかし、そこで瞬狂の限界が来てしまった。能力が切れた脚は立つ力を一時的に失い、身体を地面に擦り付けるに至った。
「ふぅ...少しは楽しめたけど....最後はあっけないね。それじゃあ、さよなら。」
ミレイアの拳が降り下ろされる瞬間、
「そうだな...最後はあっけないよな。それはお前も同じだろ?」
ベキベキベキベキ
「.....え?」
その瞬間、耳障りな音をたててミレイアの脚は砕けた。
観客席はあまりに突然の出来事に静寂に包まれた。
「ミレイア、君は確かに速い。だけど自分の限界を越えた力を使いすぎると、その身体は負荷に耐えきれず壊れてしまう。」
そう、ミレイアは無理をしていた。一見チートじみた力を見せていたミレイアの瞬間移動と言うべきその力は、彼の身体に甚大な負荷をかけていた。
ただでさえ身体への負担の大きいその能力は、僕が瞬狂を使ったことにより限界以上まで力を引き出すことになる。
それに身体は耐えられずに結果として彼の脚を破壊したのだ。
「限界を越えた力には代償が付き纏う。ミレイア、君の敗けだ。」
「.....クソッ、.....あぁ、僕の完敗だ。」
「勝負あり!東、ミレイア殿戦闘続行不能!よって西、サトル殿の勝利! これをもって勇者選定試験の全試合を終了する! この場でダレイオス国の勇者を宣言する!」
「第一代目ダレイオス国勇者は、アドラ出身のサトル殿に決定した!」
「やった、僕の夢が...やっと叶った...」
「サトル...遂にやったんだ、勇者になったんだ...!!」
「サトルさんすごいです!!おめでとうございます!!」
「やはり私を倒しただけの事はある、とんでもない奴だ...」
観客席の歓声が聴こえた。アル、アリスちゃん、ミルドレッド...皆が僕の夢の達成を喜んでいた。
「これで...とりあえずは一区切りって所か。長いようで短い半年間だったな...」
ここから僕の勇者人生がスタートしたのだ。
どうも皆様、作者です。
選定試験編は後1話ほどで終了です。
ここまで読んで下さりありがとうこざいました。
次の章ではサトルの勇者としての戦いを描いていきます。
それでは、今回はこの辺で失礼させて頂きます。
以上、作者でした。




