圧倒的な力
さぁ、遂にこの時がやって来た。
僕がディアドラに転生してはや半年、ようやくこの時が訪れた。
向こうの世界では受験に敗れニート街道まっしぐらだった僕だが、この世界ではチート級の能力を手に入れた。
その夢の一区切り、『勇者になる』が実現するかもしれない。
「ここまで来たら...なるしかないだろ!」
心の中でそう叫び、コロシアムの中へと進んだ。
ふと観客席を見るとアリスちゃんやミルドレッドの姿があった。ミルドレッドは多少なおってるにしてもアリスちゃんは重症の筈だけど...大丈夫なのかな?
そして一番驚いたのはアルの姿があったことだ。アルの方を見ると、手を振ってくれた。
白の青年、ミレイアは静かに僕を見据えていた。
今までの相手とは明らかに違う異質なオーラを感じる。決勝戦だというのにとても落ち着いている、というより落ち着きすぎている。
意外なことに挨拶は彼の方からしてきた。
「宜しく、力を出し尽くそうね。」
「あぁ、お互いにな。」
10m程の距離をとって対峙する僕とミレイア、先に仕掛けたのは僕だった。
「先ずは先手必勝だ!『覇神 電光石火』!!」
そう唱え剣に雷を纏わせ、すばやく横に剣を払い雷を四方に拡散させていく。これで相手の機動力を削ぎ、動けなくなったところを袋叩きにする予定だった。
しかし、ミレイアは僕が電光石火を撃つ前に僕の背後に回り込んでいた。そして後ろから強烈な一発を殴り入れてきた。
ミレイアの一発は僕の後頭部を直撃し、一瞬意識がとびかけた。だがそこは何とか精神力で持ちこたえられた。身体全体を打ち付けるように地面に転がった僕に更に追い討ちをかけるように、全身の急所を的確に狙った突きが炸裂した。
空中に放たれた僕の身体を地面にめり込ませる勢いで、上から蹴りを見舞われ地面に激突。
普通の人間なら死んでもおかしくない所だが、ミレイアも僕の実力が分かっているのか、お構いなしに次から次へと連撃を繰り出していく。
やっと彼が殴る手を止めたのは、最初に僕の後頭部を殴ってから数十分が経った時だった。
観客席からは悲鳴も聴こえるが、それ以上にアリスちゃんやミルドレッド、それにアルの声援が僕の心に響いた。
「サトルさん!しっかりして下さい!」
「私を倒した男だろ、こんな所で倒れる奴じゃないだろう!?」
「サトル!起きて!勇者になって、魔王を倒して私と一緒に暮らしてくれるんでしょ!?ディアドラの皆を幸せにするんでしょ!!」
そうだ、僕は勇者になるんだ。
勇者になってディアドラの皆を幸せに、笑顔にしたい。
だったら、こんな所で負けられない。
考えろ、ミレイアの欠点を。アリスちゃんから聞いた話、そこから導き出せる最高の一着を!!
「......そうか、そういう事か。....やっと分かったよ。」
今まではミレイアにやられっぱなしだったが、
ここからは僕のターンだ!!
どうも皆様、作者です。
選定試験編も終わりが近づいて参りました。
残り少しの第一章ですが、全力で書いていきます。
それでは、今回はこの辺で失礼させて頂きます。
以上、作者でした。




